69 / 136
第1章
1-67・転変。および希求⑨
しおりを挟むさて、俺の疲弊の原因は、王妃としての仕事ばかりではない。
と、言うよりは実際の所、大部分は夜にあった。
つまりルスフォルから夜毎、長時間求められ続けることである。
ルスフォルは余程の何かがない限り、必ずと言っていいほど俺の元へと訪れた。
そしていつまでたっても物慣れないぎこちない手つきで、だけど非常に情熱的に、あるいはこれまでの10年分の不足を取り戻そうとでもしているかのように、長く、飽かず俺を求め続けるのだった。
俺が毎夜痛みを感じ、傷を作ってしまう理由なんてわかっている。一つはルスフォル自身を受け入れる前のいわゆる慣らしのようなものが足りていないからだ。
これはどうもルスフォルには頼れなさそうだったので自分でも試みてみたのだけれど……俺が持っているのは知識的なもののみで、実践的なことについてはわからず、経験も、10年前までのルスフォルとのもののみ。当時は全てをルスフォルに任せていたのに加え、なにぶん時間が経ちすぎていることもあり、おぼろげとなっている部分も多く。そもそも行為の時には、気持ちいいってことぐらいしかわからなくされていたので自分がいったいどうなっていたのかの自覚さえなくて。そんな状態で自分で、など、やはりどうしても難しかった。
かと言って他の誰かの手も借りられず、出来る範囲でその部分を自分で解してみたりもしているのだけれど、結局充分に出来たことが一度もなかった。
なにぶん、あまりに忙しすぎて、時間が足りないというのもある。
もう一つの理由は、俺自身が体を強張らせてしまうからだろう。
行為の際に、俺はどうしても緊張してしまって、体の強張りが溶けたことがなかった。
それではいくらその部分を解していたとしても、傷つかないはずがない。
おかげで今のルスフォルは、強張った状態が普通だとさえ認識している可能性まであった。
これは俺自身意識しているわけではなく、力を抜かなければと心掛けても出来なくて、むしろ意識すれば意識するほどひどくなる一方なのである。
ルスフォルが嫌なわけではない。
嫌っているわけでもないし、受け入れたいとさえ思っている。
でも何処かできっと、以前の記憶を失う前のルスフォルとは、別人だと認識してしまっているのかもしれないとは思った。
同じだけど違う。髪の色も目の色も、俺に触れる手の体温だって全部何も変わらないのに。だけど、触れる仕草も、手順も、何一つとして同じものがなかった。
だからなのかもしれない。正直な所、自分でもわからない。
嫌なわけではないはずなのに、どうしてか体が拒絶してしまうのを、俺は止められないままなのだった。
5
あなたにおすすめの小説
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
この手に抱くぬくもりは
R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。
子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中――
彼にとって、初めての居場所だった。
過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる
さち喜
BL
優等生・聖利(ひじり)と校則破りの常習犯・來(らい)は、ともに優秀なアルファ。
ライバルとして競い合ってきたふたりは、高等部寮でルームメイトに。
來を意識してしまう聖利は、あるとき自分の身体に妙な変化を感じる。
すると、來が獣のように押し倒してきて……。
「その顔、煽ってんだろ? 俺を」
アルファからオメガに転化してしまった聖利と、過保護に執着する來の焦れ恋物語。
※性描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※2021年に他サイトで連載した作品です。ラストに番外編を加筆予定です。
☆登場人物☆
楠見野聖利(くすみのひじり)
高校一年、175センチ、黒髪の美少年アルファ。
中等部から学年トップの秀才。
來に好意があるが、叶わぬ気持ちだと諦めている。
ある日、バース性が転化しアルファからオメガになってしまう。
海瀬來(かいせらい)
高校一年、185センチ、端正な顔立ちのアルファ。
聖利のライバルで、身体能力は聖利より上。
海瀬グループの御曹司。さらに成績優秀なため、多少素行が悪くても教師も生徒も手出しできない。
聖利のオメガ転化を前にして自身を抑えきれず……。
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
後天性オメガは未亡人アルファの光
おもちDX
BL
ベータのミルファは侯爵家の未亡人に婚姻を申し出、駄目元だったのに受けてもらえた。オメガの奥さんがやってくる!と期待していたのに、いざやってきたのはアルファの逞しい男性、ルシアーノだった!?
大きな秘密を抱えるルシアーノと惹かれ合い、すれ違う。ミルファの体にも変化が訪れ、二次性が変わってしまった。ままならない体を抱え、どうしてもルシアーノのことを忘れられないミルファは、消えた彼を追いかける――!
後天性オメガをテーマにしたじれもだオメガバース。独自の設定です。
アルファ×ベータ(後天性オメガ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる