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第1章
1-77・限外。よって誹る⑥
しおりを挟む「ぁっ……」
そっと服越しに、子供になどいまだなっていないその部分を撫でられる。同時に、ヴィーフェ様の手が辺り前のような自然な様子で、俺からそっとルスフォルの魔力を抜き取っていく。
びくと体が震えた。
体の芯が凍り付くような拒絶感。なのに。
どうしてだろう。少しだけ体が楽になっている?
俺は今日も相変わらず体調があまり良くなかった。勿論、傷などがあるわけではない、それはすでに治している。でも、無視しずらいような倦怠感がずっと体中に纏わりついていて。俺はずっとそれは疲労からくるものだと認識していた。だけど。
ヴィーフェ様により抜き取られたルスフォルの魔力は、意外にもヴィーフェ様にはひとかけらさえ馴染む様子もなくすぐに空気中に霧散して溶けてすぐにわからなくなった。消えたと言っていい。
「うん。やっぱりね。今ので君、少し楽になったでしょ? 僕の見立て通りだ」
俺はまだ、わけがわからないまま、呆然とヴィーフェ様を見ている。
「まだわからないの? 気付きたくないのかな……君ね、ルスフォル陛下の魔力を、全く受け入れられてないんだよ。いかに好意から体の中に大切に抱え込むって言ったって限度がある。今も君の中にあるそれ、増える一方で減る気配がないの、おかしいと思わなかったの? 他人の魔力ってね、体内に入ってきたらある程度は馴染むものなんだよ。治癒魔術とかがいい例でしょ。あれって結局治癒魔術を施している人間の魔力を注がれて、自身の体内を操作されてるってことで、そうやって注がれた魔力は、でも別個のものとして留めておいたりなんてしない。やがては徐々に、あるいは急速に自分自身の魔力に馴染んで混ざっていく。それは性交渉により注がれた魔力だって同じだ。だけど君は今も抱えたままのそれを、ほんのひと欠片だって自分に馴染ませられていないよね。それはどうしてだと思ってたの? まさかそれさえも認識していなかったの?」
言い募られて思考が揺れた。
だって俺は今、ヴィーフェ様が言った通り、全く認識していなかった。改めて自分の体内を感じる。自覚すれば自覚するほど、ヴィーフェ様の告げた通りだと把握する。それと同時に愕然とした。だってそれは。そこに宿る意味は。
「その顔だとやっと気付いたのかな? そうだよ君、ルスフォル陛下のこと、全く何も受け入れられてないんだよ。少なくとも存在……この場合は魔力だけど、それを渾身で拒絶している。自分の体内にあることは認めているくせに、それが自分と少しだって混じることを良しとしていない。そんなの、ルスフォル陛下を拒絶しているっていう以外に、どんな理由があり得るって言うの?」
その状態で子供なんて作ったらどうなるのか。
そこまで言われてざっと血の気が引いた。
足元がぐらり、揺れて。そして俺は。
「ティーシャくん」
こんな俺の反応を予想していたとでも言うのだろうか、先程近づいてきてそのまま、大変に近い位置にとどまっていたヴィーフェ様が、危なげなく揺らいだ俺の体を支えてくれる。
俺はそうされることでようやく、その場にうずくまらなくても済んでいるような有り様だった。
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