そしてまた愛と成る

愛早さくら

文字の大きさ
82 / 136
第1章

1-80・限外。よって誹る⑨

しおりを挟む

「ヴィーフェ様。少し、お時間を頂けますか? 今でなくとも構いません、ですが可能な限り早く」

 俺は支えられたまま、ヴィーフェ様へと申し出た。
 そのまま自分でしっかりと立ち直す。いつまでも支えられたままではいられない。
 俺はこの後も政務があるし、それはヴィーフェ様も同じだ。
 いくらここ数ヶ月ではじめと比べれば見違えるように余裕が生まれてきているとはいえ、忙しいことに変わりはない。おまけに数日後に差し迫る婚姻式の準備もある。いずれにせよ、お互いにあまり長く時間は取れない。
 だけど、指摘されたことは、到底そのままになど出来るようなことではなかった。
 俺自身、まだ混乱している。
 ヴィーフェ様は俺を見て、少し考えているようだった。

「……多分、明日の昼食時。お昼の休憩を兼ねて、なら」

 今日、今はもう午後となっている。この後もやはり忙しいのだろう。このまま話し込むわけにはいかない状況だ。
 俺は頷いた。こちらも、おそらくはそれぐらいしか時間が取れない。

「僕だけ? それとも、ラーヴィも一緒の方がいい?」

 続けて確かめられ、しばし考える。
 ややあって首肯した。

「出来れば、ご一緒頂ければ助かります」

 相談相手は多い方がいいかもしれない。
 それにヴィーフェ様がこうして気付いておられることを、ラーヴィ様が気付いていないとは思えなかった。
 ならおそらく、ラーヴィ様のご意見も概ねヴィーフェ様と同じことだろう。

「わかった。じゃあ、明日の昼食時に。君の執務室へ二人で行くよ」

 戻ってきた応えに少しだけほっと息を吐いた。
 俺は指摘された内容に対する混乱もあり、少しばかり騒ぎすぎている心を努めて落ち着けて微笑む。

「私も明日までに、可能な限り、自分を今一度見つめ直してみます。ですので」

 俺の言葉にヴィーフェ様も同意する。

「そうだね。そうする方がいいかもしれない」

 こと、問題が心であるだけに難解だ。
 あくまでも俺の個人的な感情の話。だが、そうであるだけに重要で。無視しない方がいいだろうと、ヴィーフェ様も判断したが故の指摘。
 そのあと、仕事に向かうヴィーフェ様と別れて、俺は俺で執務に邁進しながら、だけど思うのはルスフォルのことだけだった。
 どうしても思わずにはいられない。
 きっと今夜もルスフォルは、俺の元へと訪れることだろう。
 今までと同じ。
 そして俺は拒まず、否、自分から引き寄せさえしてルスフォルを受け入れる。そしてまた、お腹の中に、たくさんの魔力を注がれて、そして。
 改めて自分の体内を意識する。
 大切に抱え込んだルスフォルの魔力。しかし、どれだけ意識したところで、その魔力が俺のそれと少しも馴染まず、混ざらないのは変わらない。
 だけど同時にそれを愛しく、ひどく大切だと思う。その心にも嘘はなかった。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

この手に抱くぬくもりは

R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。 子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中―― 彼にとって、初めての居場所だった。 過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる

さち喜
BL
優等生・聖利(ひじり)と校則破りの常習犯・來(らい)は、ともに優秀なアルファ。 ライバルとして競い合ってきたふたりは、高等部寮でルームメイトに。 來を意識してしまう聖利は、あるとき自分の身体に妙な変化を感じる。 すると、來が獣のように押し倒してきて……。 「その顔、煽ってんだろ? 俺を」 アルファからオメガに転化してしまった聖利と、過保護に執着する來の焦れ恋物語。 ※性描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※2021年に他サイトで連載した作品です。ラストに番外編を加筆予定です。 ☆登場人物☆ 楠見野聖利(くすみのひじり) 高校一年、175センチ、黒髪の美少年アルファ。 中等部から学年トップの秀才。 來に好意があるが、叶わぬ気持ちだと諦めている。 ある日、バース性が転化しアルファからオメガになってしまう。 海瀬來(かいせらい) 高校一年、185センチ、端正な顔立ちのアルファ。 聖利のライバルで、身体能力は聖利より上。 海瀬グループの御曹司。さらに成績優秀なため、多少素行が悪くても教師も生徒も手出しできない。 聖利のオメガ転化を前にして自身を抑えきれず……。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

後天性オメガは未亡人アルファの光

おもちDX
BL
ベータのミルファは侯爵家の未亡人に婚姻を申し出、駄目元だったのに受けてもらえた。オメガの奥さんがやってくる!と期待していたのに、いざやってきたのはアルファの逞しい男性、ルシアーノだった!? 大きな秘密を抱えるルシアーノと惹かれ合い、すれ違う。ミルファの体にも変化が訪れ、二次性が変わってしまった。ままならない体を抱え、どうしてもルシアーノのことを忘れられないミルファは、消えた彼を追いかける――! 後天性オメガをテーマにしたじれもだオメガバース。独自の設定です。 アルファ×ベータ(後天性オメガ)

処理中です...