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第1章
*1-82・限外。よって誹る⑪
しおりを挟むわからない。
どうしてなのだろう。
触れられるのは、大丈夫。
くちづけも平気だ。
抱きしめられるのだって嬉しい。
なのに、体内を探られると、それだけで駄目だった。
どうしても体が強張ってしまう。
どうして? わからない。
自分でも混乱しながら、だけどできるだけ拒絶しないよう、体を震わせて堪える。
気持ち悪いし、痛い。吐き気がしそうだ。
どうしてなのだろうか。
ルスフォルなのに。彼なのに。
同時にそんな風、頑なな俺自身の体の反応に、俺はどこか安堵していて。拒んでいる、それは良いことではないはずだ。
俺は彼の伴侶で、彼はルスフォルで、俺はルスフォルを求めていて、でも受け入れたくない、まるでそう思っているかのよう。
「ぅっ、ぐっ……ん、んんっ……」
最近とみに、以前よりも躊躇いがちになったルスフォルの指をぎちぎちと締め付けながら、俺はむしろ自分から彼を引き寄せ、縋りついていた。
毎夜のことだ。
このまま彼は躊躇いながら、だけど俺には抗えず、結局は俺が導くままに、俺の中へと身を沈めていく。
そもそも俺が体を強張らせて、ただひたすら痛みと違和感と気持ち悪さに堪えている間も彼の興奮は衰えることはなく、熱く硬い下肢は萎えず。
俺はそれが嬉しくて。求められている、そう感じられて、満たされて。
なのに心はそうでも体は違う。そして俺は拒む体を許容して、むしろそうであるべきだとさえ安堵して、そんな自分を自覚してはわけがわからなくて、俺は結局他でもない俺自身のために、ルスフォルの興奮を利用していた。
まるでルスフォルを利用して自分を痛めつけているかのような行為。こんなの、言いわけがない。わかっている。
「うっ……ぐぅっ、ぁっ! ティー、シャっ……」
ルスフォルが息を荒げ、微かに喘ぎながら、俺の頑なな体内へと、下肢を押し込んでくる。
痛くて、苦しくて、でも放せなくて。
「うっ、ぅうっ、ぁ、ぅ……」
呻きながら体を縮める俺を包み込むルスフォルの腕の中は温かい。
ああ、俺はこの腕の中が好きだったんだ。ずっとずっと求めていた。
抱きしめて欲しくて、包み込んでほしくて、傍にいて欲しかった。ルーシー。
滲む涙が耐えられない。何の涙か、わからない。
痛みか、苦しみか、それとも。
ばくばくと鼓動が高鳴って、つきつきと胸が痛んだ。
「ティーシャ」
声まで同じだ。ルーシー。
やがて躊躇いがちだった動きが激しくなって、
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、ぁあっ、ぅっ、ぁ……」
悲鳴と呻きの間のような声を上げて揺さぶられながら、俺はやっぱりわからなかった。
ルーシー、ルーシー、ルーシー、ルスフォル。
好きなんだ。
まだこんなにも好き。
体温が、気持ちいい。
触れて欲しい、そう思う。
くちづけだって嬉しい。
求められると安心する。
なのにどうして俺は受け入れられないんだろう。わからない。
「ぁっ……」
そのうち、ドクン、体内に吐き出された熱と魔力を確かに感じながら俺は、やはり魔力を、自分のそれとは馴染ませられず。
愛しい。その気持ちに嘘はないのに。
注がれたルスフォルの魔力を俺は手放したくないと思っている。それどころか、早くこれを子供にしたいって。なのになんで。
わからない。
その夜も俺はいつも通りルスフォルに揺さぶられながら、いつもよりずっと泣きたい気持ちで、でも、ルスフォルを受け入れられないくせに、自らも求めずにはいられないままだった。
痛くて苦しい夜が明ける。
その夜ばかりは体よりも。どうしようもなく、胸が痛かった。
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