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第1章
1-88・限外。よって誹る⑰
しおりを挟むだからこそラーヴィ様があまり得意ではないのは本当。
必要がなければ口を開かず、必要な時も、基本的に黙って側にいてくれるだけのヴィーフェ様はむしろ気が休まった。
でもそんなことまで見透かされているなんて恥ずかしくて堪らない。
態度にも顔にも出していなかったつもりなのに。
でもそれは、ラーヴィ様のお言葉を借りるなら、よく見ているからこそわかったということなのだろう。
理解されること、それは単純に嬉しかった。でも。
「あはは。まだ言葉を飲んじゃうんだね。うーん、ちょっとずつでいいから言葉にしていこうね。ほら、今、何を思った?」
促す声は柔らかい。強要という風ではなく、あくまでも訊ねて下さっているだけ。吐き出した方がいい。わかっている僕は、知らずヴィーフェ様にしがみついていたようで。
「ティーシャ。大丈夫だよ」
ヴィーフェ様がそう励まして下さった。
一つ頷いて、おずおずと口を開いていく。
「えっと、あの……嬉し、くて。でも、なんか……」
嫌、なわけではない。そうではなくて、でも。なんと言えばいいのだろう。これは。
「……怖い?」
「あ」
そうだ、怖い、んだ。
ようやく自覚する。そうだ、俺は自分の内面を人に知られるのが怖いのだ。
どうしてそう思うのか。それは、多分……。
「俺が……全部、さらしてもいいって思ったのは、ルーシーだけでした」
俺は、おそらく恵まれていた。
両親は俺を、ちゃんと我が子として育ててくれた。可愛がられていた、自覚がある。甘やかされていたわけではなく、叱られたことだってあって、でも両親からの愛を疑ったことなんてなかった。自分が養子だったのだと知るまでは。
裏切られた、そう思ったのだ。どうしてって。
でも。
家を出て、そのまま。まさか会えなくなってしまうなんて。
拙い言葉で、不器用に話していく。
一見何ら関係なくさえ思える身の上話に、お二人は静かに耳を傾けて下さった。
時折はさまれる質問に答えたりはするけれど、概ね俺は好きに話していく。
「俺は……俺が、自分の気持ちに従って、衝動的に飛び出したりしたからだって、思ったんです。自分の感情を、表に出したってなにもいいことはないし、あんなにずっとそばにいてくれるって言ったルーシーもいなくなって……」
ルーシーはルスフォルだ。厳密に言うならばいなくなったわけではなく、ただ単に記憶を失くしただけ。
だけど、俺の知る彼が俺の側からいなくなったこと自体、間違いない。
俺がどんなに辛くて苦しくてもルーシーは傍にいなかった。わかっている。仕方がないことだった。わかっているのだ。
わかっては、いても。
5
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