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第1章
1-91・限外。よって誹る⑳
しおりを挟む俺は戸惑う。
「え……だって、俺は、王妃、で」
問われた意味が解らない。
閨を。ルスフォルと共にするのは俺の義務だ。
王妃の仕事の一つだと、そう認識していたのだけれど。
「うん、確かに、そういう側面はあるね。でも、拒んではいけない、なんて決まりはないよ。それとも誰かが君に何か言った?」
何か……ルスフォルとの閨について、誰かが?
「……女官長が」
あれは初めての夜の翌朝のことだ。
俺とルスフォルがちゃんと閨で体を交わすことが出来たのだと、俺の腹にとどまったままのルスフォルの魔力から察した女官長は一瞬、目を丸くして驚いて。そして。
『よぉございました。どうぞそのまま陛下をお支え下さいませ』
そう言ったのだ。
そっくりそのまま口に出した俺の言葉を聞いたお二人は、少し困ったような顔をした。
「それは……また、なんと言えばいいのか。本当の所の言葉の真意は、その女官長だという女性に聞いてみなければわからないけれど、多分、流石に、君に対して一切拒むな、だとかそんなつもりで言ったんではなかったと思うよ」
ラーヴィ様の言葉に少し驚く。
確かに単純に言葉だけとっても、そこまでの意図はなかったかもしれない。俺がただ、思いこんだだけなのではと疑い出すと、そんな気もしてきた。
「え、でも……」
女官長が、俺とルスフォルが閨を共にできている、それ自体を喜ばしく思っているようだったのは確かだ。
「まぁ、後継者の問題もあるし、君たち二人が仲良く過ごすこと自体は悪いことではないからね」
それぞれに立場もある。そこに宿る感情は、必ずしも言葉通りであるわけではない。
「その女性の言葉は抜きで考えて、そもそもその人以外は皆、むしろ君を窘めていただろう?」
俺は頷いた。俺に仕えてくれている侍女も侍従も護衛も。何なら通信機の向こうの義父だって、控えめに、でも確かに夜を、控えた方がいいのではないかと俺に告げていた。
覚えがある。
人の言葉に従ったというのなら、そちらを優先してもよかったはずだ。なにせ俺とルスフォルの閨については、あまり快く思っていない風な人の方が多かったのだから。このお二人だって、多分そう。でも。
「ルスフォルとのことを……誰かに、何か言ってほしくなかった」
みんな、そんな俺の感情を優先してくれたに過ぎない。俺の頑なさを、きっとわかった上で許容してくれていた。
「それはなぜ? 多分だけど、君が陛下を夜を過ごし続けたのと同じ理由だよ」
ラーヴィ様の言葉を考える。ラーヴィ様は、義務感ではないだろうと、そう指摘したのだ。
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