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第1章
1-92・限外。よって誹る㉑
しおりを挟む確かにそうだ。
王妃の義務だから。でもそれは毎晩の行為を拒まない理由にはならない。誰も俺にそんなこと強要していない。むしろ止めさえされていた。
じゃあなぜなのか。
そんなの、決まってる。
「俺が……そう、したかった、から……」
俺が望んだからだ。
俺が、ルスフォルに求められたかったから。
求められることに安心していた。その上で痛くて苦しくて辛い、そんな苦行のようなものであることさえ、同時に求めていた。変わろうとするルスフォルを、俺の方から拒むぐらいに。
「何故、そうしたかったのかは、わかる?」
そんなの。そんなの、決まってる。
何故、そうしたいのか。何故、求められたいのか。
安心したかった。自分に罰を与えたかった。ルスフォルから、罰を与えて欲しかった。それも理由だ。でも、もっと本当の本当の理由。もっと単純でシンプルな答え。そんなの、一つしかない。
そんなの。
「俺が……ルスフォルのことを、好きだか、ら」
好きだから、触れ合いたかった。好きだから、求められたかった。でも、好きだから受け入れられなくて、好きだから、罪悪感に堪えられなくて、好きなのに、俺は罰を求めていた。本当はそんなもの、罰でも何でもない、ふたを開けてみれば単純な話。俺はただ、ルスフォルを感じたかったのだ。それは痛みでも苦しみでも何でもよかった。ただ、彼がここに居る。それを、感じられれば良かった。
他は言ってしまえばおまけである。
全部本当で、でも全部、それだけではない。
矛盾してる。そう思う。自覚もある。でも。
なんてひどい行為。ルスフォルのことを、俺は俺の為に利用した。ルスフォルから求められているのをいいことに俺は彼に何を。こんな体なんて、いったい何だというのだろう。
さっと血の気が引いていく。
好き。
それは本当のことなのに。
ルスフォルが求めてくれていた、それはきっと間違いない。でなくばあんなにも毎晩、長時間、触れ続けてくれはしないだろう。彼からの求めなくば俺のこれは成立しない。同時に、俺の都合で彼を使用していたのも間違いようもない事実だった。
「うん、そうだね。わかってるじゃないか。簡単な話だろう? それなのに受け入れられないのは、やっぱり結局は気持ちが追いついていないからなんだろうね。立場があるだとか忙しいってのも考え物だ」
単純で簡単な話だ。でも、感情というものはどれ一つ取ったとしても単純でも簡単でもない。
「ねぇ、ティーシャ。ちょっとだけ落ち着いてみよう。立ち止まったっていいんだ。今はまだもう少し僕達がいる。いる間ぐらいは、頼ってくれていいよ。だから、少しだけ、考えてみようね。ううん、改めて陛下と向き合った方がいい。今は、流石に少し忙しすぎるから、婚姻式が終わってから」
婚姻式が、終わったら。
俺は頷いた。
改めてルスフォルと向き合ってみる。夜に、あんなふうに体を重ねるばかりではなくて。
それが必要なことぐらい。
俺にも、もうわかっていた。
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