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第1章
1-100・告白。さきへ君と⑧(ルスフォル視点)
しおりを挟む引き続き俺の様子をさりげなく、だけど注意深く窺いながらラーヴィ様がゆっくりと口を開いていく。
「まずは前提の話をしなければならない。君は多分、わかっていないだろうから」
そして言われたことはそんなことで、いったい何の話なのか全く分からず、俺は僅かに首を傾げた。
「前提? いったい何のことです?」
ティーシャの話のはず。ティーシャのことで、俺が知らない何かがあるということなのだろうか。否、俺が知っているティーシャのことなど、そもそもそれほど多くはないのだけれども。
どうしてかドキリとする。あまり聞きたくない、そう思った。でもきっと聞かなければいけないのだ。
「10年前。君が記憶を失った時、君の側には当時、君の愛妾だった、君の子供である王太子殿下を生んだ母親がいた。それは理解しているんだよね?」
ティーシャの話だと思ったのに、ラーヴィ様が口にしたのは、忘れもしないあの少年のこと。
子供を生んだのがあの少年なのだと、後から聞いて驚いた。
だって彼は本当に幼かったから。
そんな彼がいったい何だというのか。不審に思いながらも俺は頷く。
「ええ、そう聞いています。少年が居ました。ティーシャと、よく似ていた」
おまけに愛称まで同じティーシャだったのだという。だけど年齢も髪の色も目の色も違う。だからどれほど似ていても別人のはずで。だけど俺はどうしてだろう、あの少年とティーシャを重ねてみてしまっている部分がある。
もしやそれが見透かされているのだろうか。ティーシャに別人の影を重ねている。それをラーヴィ様は指摘したいのか。そんな風にも考えた俺は、だけど次のラーヴィ様の発言に目を見開いて驚くことになった。なにせ、ラーヴィ様は一つ、首を縦に振って、そして。
「うん、そうだね。似ていただろうね。だってそれはティーシャ本人だったんだから」
そんな風、到底信じられないようなことを口に出したのだから。
本人? 一体どういうことなのか。
一瞬、頭が真っ白になる。
俄かには信じられなくて、俺はきゅっと眉根を寄せ、質問を重ねていた。
「どういう、ことですか? あの時の少年とは、髪の色も目の色も違う。何より年齢が合わない。ティーシャは今26歳でしょう? あの少年はどう見ても、上目に見積もったところで中学生ぐらい……14になっているようにも見えなかった」
否、10を少し超えたぐらいにさえ見えた。それほどまでに幼く、子供だった。
あんな子供が、更に子供を生んでいるだなんて、初めに聞いた時には信じられなかったほど。
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