そしてまた愛と成る

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
102 / 136
第1章

1-100・告白。さきへ君と⑧(ルスフォル視点)

しおりを挟む

 引き続き俺の様子をさりげなく、だけど注意深く窺いながらラーヴィ様がゆっくりと口を開いていく。

「まずは前提の話をしなければならない。君は多分、わかっていないだろうから」

 そして言われたことはそんなことで、いったい何の話なのか全く分からず、俺は僅かに首を傾げた。

「前提? いったい何のことです?」

 ティーシャの話のはず。ティーシャのことで、俺が知らない何かがあるということなのだろうか。否、俺が知っているティーシャのことなど、そもそもそれほど多くはないのだけれども。
 どうしてかドキリとする。あまり聞きたくない、そう思った。でもきっと聞かなければいけないのだ。

「10年前。君が記憶を失った時、君の側には当時、君の愛妾だった、君の子供である王太子殿下を生んだ母親がいた。それは理解しているんだよね?」

 ティーシャの話だと思ったのに、ラーヴィ様が口にしたのは、忘れもしないあの少年のこと。
 子供を生んだのがあの少年なのだと、後から聞いて驚いた。
 だって彼は本当に幼かったから。
 そんな彼がいったい何だというのか。不審に思いながらも俺は頷く。

「ええ、そう聞いています。少年が居ました。ティーシャと、よく似ていた」

 おまけに愛称まで同じティーシャだったのだという。だけど年齢も髪の色も目の色も違う。だからどれほど似ていても別人のはずで。だけど俺はどうしてだろう、あの少年とティーシャを重ねてみてしまっている部分がある。
 もしやそれが見透かされているのだろうか。ティーシャに別人の影を重ねている。それをラーヴィ様は指摘したいのか。そんな風にも考えた俺は、だけど次のラーヴィ様の発言に目を見開いて驚くことになった。なにせ、ラーヴィ様は一つ、首を縦に振って、そして。

「うん、そうだね。似ていただろうね。だってそれはティーシャ本人だったんだから」

 そんな風、到底信じられないようなことを口に出したのだから。
 本人? 一体どういうことなのか。
 一瞬、頭が真っ白になる。
 俄かには信じられなくて、俺はきゅっと眉根を寄せ、質問を重ねていた。

「どういう、ことですか? あの時の少年とは、髪の色も目の色も違う。何より年齢が合わない。ティーシャは今26歳でしょう? あの少年はどう見ても、上目に見積もったところで中学生ぐらい……14になっているようにも見えなかった」

 否、10を少し超えたぐらいにさえ見えた。それほどまでに幼く、子供だった。
 あんな子供が、更に子供を生んでいるだなんて、初めに聞いた時には信じられなかったほど。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,564pt お気に入り:3,568

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,578pt お気に入り:3,111

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:944pt お気に入り:3,275

王宮の陰、あばら家の秘め事

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:42

上司と彼女

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

処理中です...