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第1章
1-102・告白。さきへ君と⑩(ルスフォル視点)
しおりを挟むそうして考えていくと、もしや本当に。
そこでようやく俺は、ラーヴィ様の言葉を信じ始めた。
あの少年とティーシャが同じ?
思い出す。
美しい少年だった。ティーシャと同じように。
少なくとも、違ったのは目と髪の色、そして年齢だけ。
はじめ、俺に慈しみに満ちた眼差しを注いでいた。だけど。
すぐに絶望に染まった瞳。
『ルーシー……?』
震えた声。
ざっと血の気が引いていく。
ああ、そうだ、俺は、はじめ、あの少年に。
「あっ……ぁ、ぁあ……」
呻きのような声が漏れた。
あの少年は当時、俺の愛妾だった。つまり実質的には妻だ。伴侶として過ごしていたと聞いている。
だけど、あの初めの時以降、気付けば少年はいなくなってしまっていて。
気にはなっていた。
時折、思い出すこともあった。
だが、俺は果たして本当に、あの少年のことを、考えたことがあっただろうか。
自分の夫から、まるで知らない人物を見るかのような目で見られ、否定され、絶望に顔を染めた少年のことを。
あの時。
俺は間違いなくあの少年を否定したのだ。
それを、俺は本当に今まで、考えてもみなかった!
全く、本当に、これっぽっちも!
むしろエティアが言うがままに、俺から逃がしてよかったとさえ認識していたのである。
こんな場所に留め置いたのでは、あまりに忍びなかっただろうと。
あの少年の気持ちを、勝手に決めつけて。
「ようやく理解出来たかな? だから、それが前提でね」
俺の様子から、俺がようやくあの少年とティーシャを同一人物だと認識できたことが分かったのだろう、少しばかり俺の思考が定まるのを待っていたらしいラーヴィ様が、再度口を開き始めた。
前提。
まだ更に続きがある。
これ以上の、いったい何が。
ティーシャのことのはずだ。俺が否定した少年。あの子のことで、何が。
「君や、亡くなったエティア王妃、この王宮に勤める者がどう感じていたかは知らないけれど、あの子は真実、君を愛していたと思うよ。それこそ、ここを離れて心を壊してしまうぐらいには」
そしてラーヴィ様の口から、聞き捨てならない言葉が聞こえてくる。
「心を……壊す?」
ぽつり、俺はラーヴィ様の言葉を繰り返した。
心を、壊す?
それは一体どういうことなのか。
そして思い知る。俺は本当にティーシャの、否、あの少年のことを何も知らないのだと。
「うん、そうだよ。お曽祖父様があの子を見つけた時、あの子は廃人のようになっていた」
それらの言葉はまるで、俺の罪を、突きつけられているかのようだった。
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