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第1章
1-103・告白。さきへ君と⑪(ルスフォル視点)
しおりを挟むそんなことは資料になかった。そのはずだ。
俺が知っているティーシャの情報は、隣国リセデオの公爵家リモヌツの養子で、次期公爵であること、大帝国ナウラティスの王族を母に持つこと。たったそれだけ。加えて非常に優秀なのだとも聞いていた。王妃とするのに不足のない人物なのだとも。
そんなティーシャが、心を壊していた?
「自発的には何もせず、ぼうっと何処とも知れない所を見て、ピクリとも動かない。ただ、指示されたことだけを熟す人形のよう。事前に君が手に出来ていた資料でも、8年前に引き取られたとあっただろう? あの子がここから去って、12の時に飛び出した家へと4年ぶりに戻った時、そこにはもうあの子を引き取った義理の両親はいなくなっていてね。……亡くなっていたんだ。それから、あの子の面倒はあの子の義理の叔父が見ていたんだけど、放り出すわけにもいかず、かと言って明らかに持て余している状態だった。ティーシャを見つけて、見るに見かねたお曽祖父様がリモヌツ公爵に伝えたんだ。リモヌツ公爵が探していた子供とあの子の条件が合致したからね。そしてリモヌツ公爵があの子を引き取った。人形のような廃人同然のあの子を、それでもいいと。それが8年前だ」
覚えている。そう、確かにティーシャの資料ではそうなっていた。
確認するように言われて、隅々まで目を通したから間違いない。
引き取られたのは8年前なのだと。
だが、そこに何処から引き取られたのかの記載はなかったように思う。てっきり、母親の元から父親の元へと引き取られたのだとばっかり思っていた。まさか全く違う所からだっただなんて。
何より廃人同然? 自発的に動かない……? その、原因が、まさか……。
頭の中が真っ白になる。
だが、驚く俺にラーヴィ様は容赦なく更に話しを続けていった。
「髪と目の色は、引き取り先が公爵家、つまり高位貴族だったから戻したんだ。平民じゃなくなるんだから、あの髪色と目の色でも問題ないということになってね。魔力も同じ。あの子を引き取ったリモヌツ公爵は随分献身的にあの子の面倒を見たようだった。今のあの子があるのは、公爵のおかげと言っていい。リモヌツ公爵はゆっくりと、あの子の心の傷を自身からの愛情によって埋めていったんだ。まだ、会ったことはなかったよね。そろそろここへも着く頃だから覚悟しておくといい。少し癖の強い人物だから。何よりあの子を溺愛している。ああ、もちろん、公爵だって君の事情を、理解はしているとは思うけどね。だとしても公爵がどういう反応を君に見せるのか。そこまでは流石に僕にはわからない」
心の傷。
俺がつけた傷。
心に傷を負ったティーシャを慈しんだ義理の父。
そんな人物に、俺がいったいどう映るというのか。否、そもそもその義理の父は、俺のことを知っているのか。……知っているのだろう。このラーヴィ様の様子を見るに間違いない。
なら、どう考えても俺はよくは思われていないのだろうことだけは確かだった。
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