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第1章
1-129・間近。それに向て⑧
しおりを挟むだけど今になって考えてしまう。
俺はそれを何処かで、寂しいと思っていたのかもしれないと、そう。
あの時は満たされていると感じていた。
近くにルスフォルがいて、子供もいて。それ以外なんて何もいらなかった。
別に公の立場なんて求めていなかったし、責任を伴う、そういう権力と言えばいいのか、そんなものにも興味はなかった。
だけどもし、ただ一つ気になっていたとしたら、それは俺が公には、ルスフォルの妻という立場ではあれなかったことぐらいだろうか。
婚姻式自体は、実は一度上げたことがあるのだ。此処とは別の国、もっと辺境の田舎の片隅で。
その時にいた村の教会で、数人の知り合いに見守られて生涯を誓った。
そういえばあの時にも、偶然一緒にいた伯父が立ち会ってくれて。と、言うか、婚姻式を進めたのは伯父だったように記憶している。
とにかくだからルスフォルがこの国に連れ戻されるまで、俺とルスフォルは誰はばかることなく夫婦として過ごしていた。
周りも当然そのように扱ってくれていたと思う。
でもここでは違っていた。
ここでの俺は、ただのルスフォルのおまけだった。
そんなこと、ちっとも気にしていないつもりでいたのに、今更思い出すだなんて、本当は気にしていた証拠のようなものなのだろう。
そうして今は、今更。正しくルスフォルの伴侶として認められている。それも国王であるルスフォルの正妃。この国の王妃として、だ。
その証拠のような豪勢な婚姻式。祝福する国民たち。
誰にも反対されることのない公の立場。
それがどうしてこんなにも空しく思えるのだろうか。
わからなかった。
何処にも何にも足りないものなんてなかった。
反対する者だっていない。
だけど多分、だから、これは。……――俺の気持ちが、追いついてきていない証。
息苦しい。そう思う。
何も変わらないはずだ。
これからも、何も。
そもそも俺はこの国に一歩足を踏み入れた時から、扱いとしてはこの国の王妃として遇されていて、仕事もそのように任されてきている。
それはこれからも変わらない。
ただ、婚姻式の時期が少しばかり遅くなっただけ。
多分、明日からだって、昨日までとほとんど変わらず、日々は過ぎていくだろう。わかっている。
わかっているのに、どうして。
たかが婚姻式、されど婚姻式。
それはただの儀式で、だから本当は婚姻式そのものが問題なわけではなくて。
だから、だから、本当は、ただ。
この後。ルスフォルと話し合わなければ、そちらをこそ意識しているのかもしれなかったし、やはり10年前のことを気にしているのかもしれず。
それは俺には結局、よくわからないままなのだった。
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