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第1章
1-132・間近。それに向て⑪
しおりを挟むいったい俺はどれほどルスフォルと向き合っていなかったのだろう。まるでその象徴のよう。
責められているような気分になるのは、俺自身に後ろめたさがあるからなのだろう。
ルスフォルが座るように促すためだろう、視線でソファを示したので、小さく頷いて敢えて了承を得たりせずに腰掛ける。
取り立てて無礼とまではいかないが、少しばかり気安いかもしれないやり取りだった。
そしてまた、10年前まではこんなことでいちいち許可がどうのだとか考えることもなかったな、なんて埒もないことを考えた。
そうやってやけに以前のことを思い出しては今と比べてしまうのは、これから話す内容において、10年前のことを除外することが出来ないことを、すでに分かっているからなのだろう。
そしてそれに抵抗を感じているから。だから必要以上に意識する。
目の前に座ったままのルスフォルも、あるいは俺と同じようなことを思っているままなのか。どこか気まずそうにしているように見えた。
お互いに一言目さえ出て来ない。
横たわるのは沈黙。
勿論それは心地よいものでなどなく、妙な緊張を孕んでいて。
体が強張りそうだった。
ともすればもう二度と口を開くことさえできなくなりそうで。当然、それが気の所為であることぐらいわかっている。わかっていてそれぐらいの抵抗感と緊張に支配されているのだった。
どれぐらい、そんな気まずい沈黙が続いた後だっただろうか。
多分、時間にするなら十数分ほど。充分に長い時間が経ってから、先に口を開いたのはルスフォルの方だった。
「っ、この間っ……数日前。聞いたんだ」
いきなりの言葉がそれ。いったい何を聞いたというのだろう。
流石にそれだけでは何も予想出来ない。
今の今まで逸らされ続けていた視線が、俺に向けられる。
ちらと。だけど一瞬。
すぐに、少しだけ俯いた。
視線の先に何があるのだろう。もしかしたら何もないのかもしれない。
そんなことを思いながら、静かにルスフォルの次の言葉を待った。
「……俺は誤解していた」
何を。
思っても、敢えて訪ね返すことはしなかった。
何も言わない俺をどう思ったのだろうか。ルスフォルは次には覚悟を決めたかのように今度こそしっかりと俺へと視線を合わせてくる。
強い眼差しにぞくりとする。
どうしてだろう、それを怖いと思う俺に気付いているのかいないのか、ルスフォルは構う様子を見せず、更に口を開いていった。
「王太子を……フィーアを、産んだのは君自身だったんだね」
その言葉は、聞いた瞬間、俺の思考を停止させるに充分なものだった。
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