【完結】おいでませ!黄昏喫茶へ~ココは狭間の喫茶店~

愛早さくら

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第弐話

2-7・部屋を出る

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「ふーん。つまり、レンゲは帰ってきてすぐで、ついさっき時計を見た時は18時だったと」

 確かめるように言われ、俺は頷いた。
 何度確かめても時計は22時半を少し過ぎた時間を指している。
 俺の四時間半はいったいどこに行ったのか。
 たった今の不自然な時間の経過を、俺は誤魔化すことなくキョウさんに全て話した。
 それを聞いたうえでキョウさんが、先程のように確かめてきたのである。

「うーん」

 キョウさんは腕組みをして何かを考えていた。
 何処を見ているのか、視線は合わない。
 何を、考えているのだろう。
 それにしても気味が悪い感覚だ。体感と、実際の時間の経過がこれほどまでにずれるだなんて。
 しばらく考え込んでから、キョウさんがようやく俺へと向き直った。
 そしておもむろに口を開く。

「レンゲさぁ……しばらく喫茶店に泊まろうか」
「え?」

 思ってもみなかった提案に、俺は戸惑う。

「いや、流石に私もそんなことがあったって言うなら、そのままここにいなよって言えないよ。かとって、すぐには変わりなんて用意できないし。喫茶店なら、ま、此処よりましかなって思うしさ」

 キョウさんの言うとおり、確かにこのままこの部屋にいることには抵抗があった。
 だが、だからと言って、喫茶店。
 思い浮かべるが、泊まれるような場所とは思えない。

「喫茶店……でも、あそこは」

 流石に狭すぎやしないだろうか。
 具体的に思い浮かべる。
 五脚ほどの椅子が並んだカウンター。二人掛けのテーブルセットが二つと、四人掛けが一つ。それだけ。
 2階だって、事務机が1セットとソファとローテーブルの応接スペースしかなかったはずだ。
 寝る場所さえない。
 2階のソファだろうか。寝れなくはないとは思うが。
 眉根を寄せる俺に、キョウさんは一瞬きょとんと眼を瞬かせて、すぐに何かに気付いたかのように頷いた。

「あ、そっか! レンゲ、まだそこまでは見えてないかー。うーん、じゃあどうしようかなぁー。いや、でもいけるかな? うん。確かめるしかないかなー。」
「見えてない? 確かめる?」

 何のことだろうか。
 もしやまだ俺には見えていない何かがあるのか。あの、通い慣れた喫茶店でさえも。

「うん、そう。いやぁ、私もうっかりしてたね! レンゲ、ドアベル・・・・も最近聞こえるようになったとこだもんね。じゃあやっぱりまだ見えてないかも」

 本当にあのドアベル・・・・のように、俺には見えていない何かがあったらしい。
 そんな場所で、これから過ごせと?はっきり言って気が進まなかった。
 とは言え、キョウさんが言うように、このままこの部屋で過ごすのもまた、いいようには思えない。
 だからというのもあるだろう。

「レンゲ、荷物ってすぐにまとめれる? 出来そうならとりあえず確かめに行ってみよっか。こんな時間だけど、しょうがないし。私も一緒に行くからさ」

 促され、俺は躊躇いながらキョウさんが言うがまま、手早く荷物をまとめ始め、ひとまずは部屋を出ることになっていたのだった。
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