結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

文字の大きさ
9 / 206
1・きっかけと要因

1-7・6年前から今にかけての、

しおりを挟む

 予想外のことが起こったのはその後だ。
 ミスティはいつもと同じようにティアリィに魔力を注いだ。否、浮き立つ気持ちのまま、いつも以上に執拗に。ティアリィを放せなかった時間と同じだけ、彼に魔力を注ぎ続け、それは5年前の、初めてティアリィとそういう関係を持った時以上の熱量だった。
 だが。

「ティアリィ?」

 気付いたのは行為が終わってすぐのことだった。
 ティアリィはミスティを拒んだことがない。いつも受け入れて。そう出来なかった・・・・・・のは、5年近く前のあの時だけ。
 それ以外でティアリィがミスティの魔力を、受け入れて抱え込まなかったことなど本当に一度としてなかったのだ。なのに今は、ティアリィの腹にミスティの魔力は凝っていなかった。
 いつかのように、馴染まなかったり、注げていないわけではない。だが、其処に残っていないのだ。
 ティアリィは初め、直後ということもあり蕩けきっていて、現状がすぐに把握できずにいるようだった。だが、ミスティが促したからかすぐに気付いて、彼自身でもひどい戸惑いを見せた。
 何故か、本当に分からないという風にミスティを縋るように見つめてくる。
 こんな弱さも。言うならば今までは見られなかったもので、ミスティは頼られていることを逆に嬉しくさえ思った。だからまぁいいかと思い直す。
 ティアリィはミスティを拒んだわけではない。ただ、子供を望まない他の誰か・・と同じように、注がれた魔力を散らしてしまっているだけ。ミスティを、受け入れていないわけではなかった。
 だから、今は・・子供を望まないと、ただそれだけの話なのだろうと。
 ミスティは、まさかティアリィがそれを気に病んでいるだなんて思ってもみなかったのだ。むしろ何も気づかず浮かれてさえいた。
 何せティアリィが今、ミスティに、恋心を抱いていることは確かだったのだから。
 ティアリィがミスティを求めている。その事実だけでミスティにはもう、充分だったのだ。
 そう思いながらもいつまで経っても慣れず、求めていながら誘うよう、逃げ続けるティアリィに応じるように追いかけ、捕まえては体をつなげる度、つい、それまで以上の執拗さで魔力を注ぎ込んでしまってはいたのだが、子供自体も、出来ればいいけれど別にどちらでもいいとも考えていた。
 全てはティアリィしだい。
 油断していた。だからこそミスティは6年後に。ティアリィに逃げられたのである。国外にまで。
 ある意味ではそれもまた、ミスティの。侵したミスのようなものだった。



 勿論、同じよう、ティアリィ自身も戸惑うばかりだった。
 何分ティアリィには自覚がない。おそらく、深層心理だとかそういったティアリィ自身の認識の外・・・・にあるものが働いていたのだろう。
 ティアリィは別に子供を望んでいなかったわけではなく、しかし逆に望んでもいるわけでもなかった。別にどちらでもよかった、と言えばいいだろうか。それ以前に、それまでは大切に腹に凝らせ続けられていたティアリィの魔力を、どうしてか抱えられなくなっていたのは事実だった。魔力をとどめられなければ、子供など望むべくもない。
 ミスティの魔力は確かに受け止められるのに。ティアリィにしっかりと馴染みはするのに。
 おそらく。ティアリィが意図して子供をと望めば。否、そこまでではなくとも、魔力をとどめておきたいと願えば。それだけで済むような話だったことだろう。
 だが、自身の気持ちを自覚したティアリィはそれが出来なかった。
 なにせ何年経とうとも初めて自覚した自らの恋心に振り回されて、ミスティとまともに向き合えなくなっている部分があるままだったぐらいだ。
 ミスティが少しでもそういった意図を持ってティアリィに触れると、それだけでも恥ずかしくて仕方なくて、逃げたしたくなるほどだというのに、意図してミスティの魔力を自分の中に留めるだなんて。そんなこと出来るはずがなかった。
 情けない話なのだが、そんなことを想像するだけで、なんだか転げまわりたい気持ちになってしまうのだ。落ち着けるわけもなければ魔力操作もおぼつかなく、直後に引き取ることとなった、産まれて一年以内でまだまだ親からの魔力供給が必要なコルティに魔力を注ぐのでさえ、どうにかこうにか一緒に行うのが精いっぱいで。
 アーディやミーナにそうしたように、ミスティに注がれた魔力を体内に溜め変換し、自身の魔力と練り合わせ、自らの胸から吸わせるということもできなかった。
 そうして与えられたのはティアリィ自身の魔力だけ。ミスティはミスティで調整して同時に直接コルティに魔力を流し込まなければならない事態に陥っていた。
 ティアリィはそれがひどく申し訳なく情けなく居た堪れなくてたまらず、余計にミスティの魔力を、意図的に留められないという悪循環。
 つまりティアリィが6年後に。ああいう逃げ方をした理由が、そんなところにもあったという話である。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...