結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

文字の大きさ
14 / 206
1・きっかけと要因

1-12・旅程を考える

しおりを挟む

 ピオラをファルエスタに送り出すに当たって、どのようなルートで向かうかは当然ながら重要な課題となった。
 初め予定されていたのは国境付近までポータルで転移して、その後大きな街道に沿ってデアミノイス王国とルティル王国、キゾワリ聖国を経由するルートだ。
 だが、そうなると最初のデアミノイスで魔の森を少しばかり横切る場所があり、かといって魔の森を完全に避けようと思うと経由する国が多くなる。
 魔の森はその名の通り、魔物や魔獣が生息する森を指す。大陸中に点在していて、移動する時は可能な限り避けるのが定石だ。
 しかし、外交上の理由と移動時間を考えても、経由する国は出来るだけ少ない方が良かった。
 ファルエスタは四方を山に囲まれていて、その上、隣接するどの国にもポータルが設置されていなかった。
 近いポータルは3か所。ルティル王国の南に位置する二国と我がナウラティスとキゾワリ聖国等との間に広がるマシェレア共和国だ。
 街道を考えると、マフェレア共和国の首都までポータルで飛んで、そこから街道に沿ってキゾワリ聖国を経由するルートが良いのではないかと思われた。
 それでも、外交等も含めだいたい一月ひとつきの行程となる。
 今回行った際に、ファルエスタにポータルを設置してしまう予定になっているので、行ってさえしまえば今後の行き来は容易になると予想された。
 なお、それとは別にティアリィは単独での転移を得意としているので、一度行った場所、あるいは座標が明確である所なら、瞬きの間に移動できた。難点と言えるのはあくまで転移はティアリィ本人のみの話である部分と必要になる魔力量が大量であること。人一人ぐらいなら一緒に転移することも出来るが、逆に言うとそれが限界だった。
 国で随一の魔力量を誇るティアリィでさえ、それである。他の者が容易に出来ることではないのは当たり前と言えば当たり前の話だった。
 勿論、ピオラにも同行する騎士たちにも出来ず、敢えて言うならミスティとアーディなら可能だ。ミーナも短距離なら出来るらしい。
 ピオラに同行するつもりのティアリィのみが毎日帰ってくる予定であるというのは、そういう事情があった。どこかでコルティを連れ出さなければと思ったのも同じ。
 うんうんと地図を前に迷うティアリィを見て、同席していたピオラはまるで人ごとのような顔でおっとりと口を開く。

「お母様、それほどお悩みになられなくとも。わたくしならある程度は平気ですわぁ」

 ピオラが得意なのは防御魔法だ。少しぐらいなら魔の森に入っても問題とはならないだろう。
 ティアリィもそれはわかっている。だが。

「そういう問題じゃないよ、ピオラ。実際に動くとなれば、経由する先方の都合もあるのだから」

 ピオラは王族だ。養子とは言え、ナウラティス皇帝の第一皇女。まさか素通りするわけにもいかない。
 事前の通達は当然必要であったし、護衛の予定もしっかりと組まなければならない。
 何より長い旅程が出来るだけ平穏であってほしいと思うのは単純に子供を思う親心である。

「でも、お父様にもお伝えしない・・・・・・のでしょう?」

 ティアリィは頷いた。

「だからこそだよ」

 詳細な旅程をミスティに報告する予定がなかった。ティアリィのみの裁量で方々に許可が出せるような案件であったからだ。むしろティアリィの請け負っている仕事の管轄内であると言える。
 だからこそ、一部の隙もあってはならない。
 いくら自分が付いていって直接守れると言っても、自分はちょこちょこ帰国する予定であるし、全行程をずっと付きっ切りというわけにもいかず、出来るだけ安全に旅に臨んでほしかった。

「うん。やっぱりマシェレアまで飛ぶことにしよう」

 ポータルでマシェレアに飛んで、其処からキゾワリを経由するルートに決める。どうしても山を越えなければならないのだが、其処も遠回りしてでもできるだけ楽な道を選択することにする。やはりかかるだろう行程はどう少なく見積もっても一月ひとつき。余裕を見て、もう少し大目に見ておいた方がいいだろうか。ピオラもティアリィ自身も初めての長旅だ。
 護衛には旅慣れたものも含めておこうと思った。
 気の済むようになさって下さったらよろしいですわ、と最終的に否を言わなくなったピオラの、何処か呆れたような眼差しには気づかなかったこととして。ティアリィは旅程を詰めていったのだった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...