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1・きっかけと要因
1-13・随員の選出と根回し
しおりを挟む連れて行く護衛騎士はティアリィ以外に3人。それとは別に侍女も2人選出した。馬車での旅程であまりに大人数で向かうわけにはいかず、最低限となってしまっている。もっともそれとは別に、それぞれの地域ごとに幾人かの護衛は付くのだが。あからさまに侍女の数が足りないが、残りは現地で雇い入れることになった。
向こうに着いたらあちらでも数人寄越してくれる手はずにもなっている。それは先方からの申し出で、勿論何らかの意図が働いたゆえのことであろうが、ティアリィはそれに甘えることにしたのだ。勿論、自身が赴くがゆえに、見極めも自分で出来るとも判断して。
2人の侍女はメリニジャとカシェリと言い、ピオラを引き取った初めの初めから、ピオラ専任として付いてくれている侍女だった。メリニジャは子育ても終わった年かさの女性で、ティアリィの両親にこそ年が近い。王宮勤めも長く、よく慣れた人物ではあるのだが、厳しいというよりは柔らかな雰囲気で、ピオラを子供のように、否、孫のようにかわいがってくれていて、よく仕えてもくれていた。カシェリはそれよりは若く、ティアリィよりいくつか上の年齢の女性で、こちらはメリニジャとは反対に、過ぎるほど厳格な人物だった。
ピオラの教育係も兼ねている彼女は、しかし彼女なりに長く、ピオラに心を砕いてくれていたのだろう、今回の帰れるかもわからない勤務地変更も、話を持っていくと躊躇うことなく頷いて、むしろ一行の中では一番張り切ってさえいる有様だった。
護衛は、アニエシー子爵家出身の、魔術にも長け旅慣れてもいるハヌソファと言う30代後半の男と、トリンシンとキジェラという同郷出身で平民出の、しかしその割には魔力量も多く、魔術にも武にも精通している若い男の二人組を選んだ。トリンシンは過ぎるほど真面目な男で、態度も人格も硬質で堅苦しい。対してキジェラは柔らかい雰囲気の柔和な男だった。とは言え3人とも騎士に相応しく体格が良く、見目麗しい。
王族の護衛騎士となると、多くは近衛騎士団出身で、他国をもてなすこともある近衛騎士団にはある程度の見た目も必要となった為だ。
彼ら5人の選出には勿論、ピオラの意向も含まれていて、特に侍女は初めに彼女に聞いた時に出来ればと真っ先に名前の上がった二人がそのまま採用となった。
これ以降の細かい打ち合わせは彼らとすることになる。
勿論、ティアリィが護衛として付いていくことも彼らに伝え済みだ。ミスティには伏せていることも併せて。彼らはよく躾けられた騎士と侍女だったので、ティアリィの意向には素直に従ってくれた。
ちなみにミスティ本人も、気にはなっているようだったのだが、ティアリィが一言、
「任せておいてください。それとも、俺は信用できませんか?」
そう告げただけで、詳しく聞いてくることもなく。
「君のことは信頼しているよ」
などと何の憂いもない顔で微笑んでいた。ミスティにしてみれば、まさかティアリィが一緒に行くつもりだなんて思ってもおらず、気になることがあればその時にティアリィに聞けばいいとでも考えていたのだろう。それが今回は仇になるとも知らず。
随員が決まったなら、次にティアリィは根回しに奔走した。ミスティには伏せたまま出国することも含めて、長期間留守にすることを伝えておかなければならない相手が数多く存在したからだ。例えばミスティの年の離れた弟妹を連れて、離宮に引きこもって悠々と隠居生活を楽しんでいるミスティの両親を含む前皇帝一家や、ティアリィの実家、あるいは妹の嫁ぎ先など。魔術師塔とは、ポータルを設置する関係もあるので、特に綿密に打ち合わせが必要だった。
いずれも皆、ティアリィが頼んだが故、ミスティにはティアリィの出国を伏せたままでいてくれている。
時に呆れたような目でも見られたが、ティアリィは気にしない。一番の難関とも言える、ミスティに追わせないよう釘を刺す役目は、アーディとグローディが二人で請け負ってくれるという。
もっとも、行程の詳細も伝えずに出国する予定なので、国を出てさえしまえれば負えなくなるとは思うのだが。それに対する細工もするつもりだし、防犯という面においては、知らせないのはミスティに対してだけなので問題にならない。我が国の宰相をはじめ、途中で通過する国、先方などには全部、話が通っているのだから。
ともあれ、準備は着々と進んでいき、ついには出国する日を迎えた。それは同時に、国を跨いだ盛大な夫婦げんかの始まりとも言えるものなのだった。
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