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3・偽りの学園生活
3-1・押し切られた結果
しおりを挟むなぜ、こんなことになったのか。
ティアリィは遠い目をしそうになりながら学生服を着て、在校生に混じってピオラの入学式に参加していた。
時は少しさかのぼる。
ここ、ファルエスタに到着した直後、この国の国王夫妻からなされた提案を、勿論ティアリィは一度断った。
「いやいやいや、無理がありますよ、自分はもうじき30ですよ? 今更学生に混じるだなんて。ユーフォルプァ王太子殿下と言えばもうじき16歳でしょう? 流石に16歳のふりは無理があります」
いかに変装していても無謀というものだ。
ティアリィはごくごく当たり前の話をしたつもりだった。なのに国王夫妻は一瞬、顔を見合わせ、揃って不思議そうに首を傾げ、
「お言葉ですが陛下。陛下は現状、充分それぐらいに見えますよ? 勿論、落ち着きや雰囲気は年相応でらっしゃいますけれど、貴族の早熟な子供、と言ってしまえば通じる程度です。魔力が多くてらっしゃるからなのでしょうけれど、なにせお顔そのものが、僕と近い年齢だなんて信じられないぐらい若く見えるのです。不思議なもので年齢を存じ上げた上でお会いすると、特にご年齢に違和感など覚えないのですが、同時に先入観なしでお顔だけ見て学生だと言われれば迷いなく頷いてしまいます」
そんなことを言い重ねた。
ルディファラ王こそ若々しい見た目をしているくせに、いったいどういう意味なのか。
確かに魔力量が多いと、肉体の老化はひどく緩やかになる。いっそほとんど不老に近い。なので、ティアリィの見た目が、年よりも若く見えるだろうということぐらい、ティアリィ自身自覚していた。
だが流石に学生に見えるほどだとまでは思ってもおらず。魔力を抑えているせいだろうかと一瞬思って、すぐに、いや、関係ないはずだと思い直した。
もう少し、今かけている変化の術に手を加えればよいだろうか。出来なくはない。今は敢えて顔の造作などは変化させていないが、しようと思えばできるのだ。
年齢が変わって見えるように調整するぐらいわけはなかった。
「それにせっかくの護衛です。心配もおありでしょうし、ピオニラティ皇女殿下ともより近い方がいいでしょう。ついでにうちの息子のことも側近くでご判断頂ければと」
更に言い募られて、ティアリィはしばし考える。
確かに、寮や学校外で待機せざるを得ない普通の護衛よりも、同じ学生ならたとえ学年が違っていても余程近くにいられるだろう。
だが、元々、防御という点においては、ティアリィはピオラを心配していない。
一番魅力的だと感じられたのは、ユーフォルプァ王太子殿下の側近くで、その人となりを見ることが出来るという点だ。何せピオラの結婚相手になるかもしれない相手だ。どういう人間なのかは知っておきたい。それには同じ学生として過ごすというのは都合がいいと言えば都合よくも思え。
今度は断りを重ねることなく悩み始めたティアリィに、ルディファラ王は笑みを深めた。
「悩まれるぐらいなら、実行なさるのがよいと思いますよ。こちらとしても、出来る限りのサポートは致しますし。ね?」
あくまでもにこやかに。同時に自分の提案を通そうとする意志の強さはなるほど王に相応しい姿で。
だから、というわけではない。
ただ、娘婿予定の人物の判断、という部分に心が傾き切ってしまって。
結局ティアリィは押し切られ、今に至る。
つまりは、学生として編入することになったのだった。
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