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3・偽りの学園生活
3-23・自覚のない鈍さ
しおりを挟むその後もいつも通り、ティールはユーファ殿下とほとんどの行動を共にした。
昼食時、もはやお決まりになりつつあるタイミングでリアラクタ嬢が現れ、何も変わらない様子でユーが殿下の隣に立つティールを一際きつく睨みつけた後、これもまたいつも通り、昼食をともにと誘い、しかしやはりユーファ殿下に頑として断られていて。ティールはむしろ気の毒に思いながらそれを見ている。
これはすでに日常と化しそうなほど、ほとんど毎日のやり取りで、ユーファ殿下は一度としてリアラクタ嬢からの誘いに乗ったことはなく、だが、リアラクタ嬢はめげずに何度もユーファ殿下に声をかけた。
恐ろしくなるほどの嫌味の応酬も変わらない。
どう控えめに見てもユーファ殿下がリアラクタ嬢をよくは思っていなさそうなのは明らかなのに、リアラクタ嬢は諦めなかった。
一途と言えば一途だし、ここまでくれば凄いと、ティールなどは感心してしまう。
いくら睨みつけられたところで、年若い少女の視線など、ティールが気にするはずもなく、むしろ申し訳なく思うばかりだった。
前日のアレも含めて、むしろ彼女は優秀なのではないかとさえティールは考えている。
とは言え、ティールとしても、ユーファ殿下が彼女の誘いに応じるのは、いいこととは思えない。
なにせユーファ殿下はピオラの婚約者候補なのだ。
明確にその妨げとなりそうなリアラクタ嬢の存在が、歓迎できないものであることは確かだった。
ただ。
「ティール? どうかした?」
リアラクタ嬢を追い払い、朝食の席に着きながら、つい、そんなことを考えてしまっていたティールの様子を訝しく思ったのだろうユーファ殿下が、柔らかく、気づかわしげにティールへと声をかけてきた。
ティールは一瞬迷って、だが偽らずに口を開く。
「いえ、毎日断れているのに、今日もユーファ殿下を誘いにいらしていて。なんだか気の毒だなと」
ユーファ殿下によるリアラクタ嬢の扱いは、決していいものとは言えないものだった。
勿論、屹然と誘いに乗らないその態度自体は、ティールの印象悪くするようなものではない。逆に信頼に足ると映るほど。
そうだとしても、毎日毎日断られるリアラクタ嬢が、見ていてなんだか可哀そうに思えてきてしまって。
こんなこと、ティールが言っていいことではないのだけれど。
「ティール……君は優しいね。でも、彼女の誘いを受けるわけにはいかないからね。仕方がないんだよ。私を……冷たい男だと、思うかい?」
しんなりと眉尻を下げて、ユーファ殿下は宥めるようにティールに告げた。
いつも快活な彼らしくない声音だ。その上、何処か怯えを混ぜて、ティールの意見を窺ってくる。
ティールはユーファ殿下がそんな声を出す理由が全く分からず、きょとと首を傾げて、
「いえ、お立場を考えると妥当な対応だと思われますが。むしろ立派にお話になってらっしゃるかと」
ユーファ殿下の印象が悪くなっているだとかいうことは決してないのだ。
だからこそ彼女のことを気の毒に思ってしまっているわけで。
「そうかい? ならよいのだけれど」
ティールの言葉に、ユーファ殿下はほっと安堵したように微笑んだ。
そんな彼の反応は、やはりティールには理解できないものだった。
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