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3・偽りの学園生活
3-48・見えない思惑
しおりを挟むジアレフ司教が何かを言ったのか、リアラクタ嬢は目に見えて、少しばかりおとなしくなった。
ユーファ殿下に付き纏い、舌戦のようなやり取りをすることは変わらなかったし、その際にティールを睨みつけるのだってそのまま。だが、度々あった呼び出しがぴたりとなくなったのである。
それだけで皆、何かを察した。
さもありなん。なにせジアレフ司教はティールの事情を知っているのだ。何も言わないわけがない。
ただし、それらをリアラクタ嬢に伝えている様子までは見受けられなかった。何せリアラクタ嬢のティールを敵意をむき出しにして睨み付けるという態度自体は変わらなかったので。
ティールは少しばかり複雑な気分だったのだけれど、何かを言うようなことはなかった。リアラクタ嬢は、所詮は他国の王女。少々態度が王女らしくなかったとして、ティールは何かを伝えられるような立場にはないのである。
そもそも、立場ある身なのだから少しぐらいは自分を偽るすべを身につけた方がいいと思うよ、なんて忠告、きっといくらティールが口にしたって、彼女は反発するばかりなのだろうことが目に見えている。ジアレフ司教もどうせならそこまで諭した方がいいと思うのだけれど、というのは心の中でだけ呟くしかない。
自分の心にひどく正直であるということそのものは、むしろ好ましいと言えなくもなかったし。
事情を知らないはずのユーファ殿下さえ、リアラクタ嬢の変化を感じ取って、困ったように笑っていた。
「少しは良くなったようだけど……まぁ、少しだけであっても、変化があっただけ良しとするべきなのかな?」
などと言われても、ティールだって困ったように頷くぐらいしか出来ない。
そんな風に、学園ではリアラクタ嬢が少しばかりおとなしくなった半面、ティールは今度は王宮に行く度、ジアレフ司教に話しかけられるようになったのである。
「ティール様。少しお時間、宜しいでしょうか?」
などと控えめに呼びかけられては、あまり無下にも出来ず、
「少しだけなら」
と頷いて、彼に時間を取ったとしても、そこで交わすのは取り留めのない世間話のようなものぐらいで、ティールは結局、キゾワリの思惑を掴みかねるばかりだった。ただ。
「ティール様もご存じの通り、我が国はキゾワリ聖教を国教としておりまして、ぜひティール様にもご理解を頂きたいのです」
などと、世間話の合間に理解しづらい彼の聖教の説明を受けることが度々あり、これは勧誘のようなものなのだろうかと、ティールは首を傾げ、ますますよくわからないなと、すっきりしない気分のまま、日々が過ぎていくのだった。
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