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3・偽りの学園生活
3-61・不快な報告書①(ミスティ視点)
しおりを挟むところでティール、否、ティアリィが休日に、彼の王国の王太子とデートのようなものをした、などという情報は、当たり前にミスティの耳にも入る。そもそも、護衛にも侍女にも報告義務というものが存在し、日誌のような状態で、その日その日の行動や誰が誰とどのようなやり取りをしていたのかなど、詳細にではなくとも、ある程度は記録されているのが現実だった。
ピオラにもコルティにも立場がある。そうである以上、防犯面や外交面からしても、それらは避けられるようなものではなく、王族として育っている以上、彼らはそれらを当然と受け止めていた。
特に国外にいる間はなおさらだ。
そしてそんな報告は直接ではなくとも最終的には皇帝の元まで届く。ティアリィに対する記載は全て例外なくティールとなっていたけれど、そんなこと関係がない。
なお、この辺りは勿論ティアリィも織り込み済みで、否、自分たちの行動履歴の管理をしていたのは他でもないティアリィ自身だった。そもそも、彼の王太子殿下の好意にさえ欠片も気付いていないティアリィは、休日にたまたま街でユーファ殿下と出会い、行きがかり上、買い物を共にしたこと自体何ら問題のある物だと認識していなかった。
問題は、ないと言えばない。普段から学園でも基本的には共に過ごしている。場所が街に変わっただけ。そもそも別に二人っきりというわけでもなく、護衛達も傍に控えていれば、同じ店内にはピオラやコルティもいたのである。問題はそういった事実ではなく、ユーファ殿下側の行動理由にあった。
ミスティはわざわざ紙にしてもたらされたそれらの情報に目を通して、深く深く溜め息を吐いた。
今時、魔道具でさえなく、紙。
大方、今の現状を何処か面白がっている節のある、悪戯っ子たちの仕業だろう。
多分、これは自分に似ているからなのだろうと思うと嫌になる。
おそらく、ただ単純に面白そうだと思ってこんなことをしている。そこには悪意だとか害意だとかが含まれていないことがわかっているだけに性質が悪かった。
そうだ、この報告は紙にしておこう、紙で見る方がわかりやすいよね。だとかなんだとか、そんな程度の思い付きなのだ。それでミスティが不快な思いをするだろうことを知っていながら、全く気にしていない。そもそも、別な形式であったとしても、いずれにせよ報告は確認するつもりでいたし、紙だろうが何だろうが、媒体なんて関係がないと言えば関係がなかった。
どんな形で報告されたって、ミスティは不快になるのだから。
それを、嫌がらせのようにわざわざ紙で。そしてそれを見たミスティがこうしてこの報告書を引きちぎりたい思いに駆られているのを見て、相変わらずだ、なんて言って笑う。
別にあの子たちに、ミスティを不快にさせたいだとか、困らせたいだとかいう思いは全くないのだ。むしろそんなことには興味がない。ただ、困ったりするのを見るのは面白いだろうな、とは思っている。
あの子たちは悪人ではない。だが、善人では全くなかった。
たまにミスティはわからなくなる。そこに悪意も害意もないのだとしたら、悪意や害意とはいったい何なのか、と。
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