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4・初めての国内視察

4-67・誰かの話①(???視点)

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 僕はんでいた。
 否、もうすでに、全てを諦めてしまっていたと言っていい。
 神聖キゾワリ聖国。そこの国主たる聖王の第一子、男子として生を受けたはずなのに、僕には何の価値もありはしなかった。
 否、本当に僕は聖王の子供と言えるのか、それにさえ自信がない。
 だが、僕が産まれる時に僕を取り上げ、肉体を構築したのは聖王ご自身だったとも聞いているので、僕はきっとまだよい方なのだろう。
 数多くいる妹や弟たちの多くは、聖王ご自身に、取り上げられてすらいないのだから。ただ、核となった魔力が、聖王の者であるというだけで。
 僕の母は一応は当時、聖王の正妃であったのだと聞く。
 国内の有力貴族の跡取りであったのだと。
 しかし、大変に美しい容姿をしていた母は当時は次期聖王という立場であった父に見初められ、光栄なことだと嫁いできたのだと聞いていた。
 そして僕を身ごもってすぐ、母の実家の尽力もあり、父は聖王の座に就いたのだとか。
 だが、よかったのはそこまで。
 父が聖王となった。それが悪夢の始まりだったと母は嘆いた。
 母は男性だ。
 元より男性を、恋愛対象として見ていたわけですらないのだと聞く。
 それでなくとも跡取りとして育てられている。
 自尊心という物も、きっと高かったことだろう。
 だが、相手はこの国で一番尊いとされている聖王である父。
 膝を着き、身を任せるのもキゾワ聖神の思し召しだと心の中で何度もそう唱え体を開いた。
 連夜に及ぶ、堪えがたいほどの屈辱に耐えた。
 そしてようやく僕を授かった。
 それというのも父はあまり魔力が多くなく、子供にするための魔力を充分だと思えるほど得るだけでも少しばかり時間がかかったのだそうだ。
 母は父から注がれる魔力が足りなくて、魔力欠乏にも苦しんだのだという。
 そんな折に聖王へと即位した父は、母に魔力を宛がったらしい。
 すなわち、自分以外の男性を。
 母は抵抗した。嫌だと拒絶した。子供を育てる為の魔力は、父の物だけがいいのだと、だけど。
 だけど父は嫌がり抗う母を押さえつけ、殴りつけ、屈強な男たちに組み伏せさせたのだそうだ。

「子供には魔力がいる。より沢山の魔力が。それは当然のことだろう?」

 そう笑って、見知らぬ男たちに群がられる母を見、あまつさえそれに参加した。
 今から考えると、何も全くおかしなことではない。
 何故ならそんなことはこの場所で、毎日日常的に行われていることだからだ。

「でも、その時の相手はまだちゃんとした騎士とかだったし、僕を組み伏せる時も申し訳なさそうにしてたり、謝ってきてたりしてたから、まだましだったな」

 いつかポツリ、母が言った言葉だ。
 確かに今から考えると、状況は随分と悪くなかったようだと僕は思う。
 今ではその時の騎士など、一人として残っていないのだと聞く。
 人を組み伏せる時に謝れる・・・者など、誰一人として。

「ここは地獄だ。なんでこんなことになったんだろう。ああ、お前が生まれる時、聖王に似ればいいと願った。僕ではなく、聖王に似ればよいと。それだけがあの時の僕が、お前にしてやれる全てだった。陛下はひどく落胆なさっていらしたが……なぁ、よかっただろう?」

 母の声はひどく空虚で。僕は何も返せなかった。
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