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94・暇を持て余す①
しおりを挟むその日はそのまま、ラルは俺から離れず夕食を摂り、風呂に入って、睦み合いながら就寝した。
つまり、それまでの一週間と概ね変わらず過ごしたということだ。
翌日はラル自身が予想したとおり、ラルは前日よりも早い時間にラサスに連れ去られてしまった。
余程仕事が溜まっているのだろう、仕方がないと快く見送って、俺はオーシュとディーウィの二人に相談の上、結界は部屋にかけるのではなく、基本的には自分自身にかけることに決めた。
部屋にかけてしまっては、移動すると効果がなくなってしまうからだ。
俺はこのリヒディル公爵邸でしなければならないことが何もない。
ラルは俺にこの家で、ただ、安全に過ごしてくれればいいと告げた。
本来なら公爵夫人ともなると、それ相応の仕事が発生する。だがラルは、身重であることを理由にそれらを全て俺には回ってこないように処理しているようで、本当に他にもすることが全くなかった。
夜会や茶会へのお披露目は、子供が生まれてからの方がいいだろうとのこと。届いた招待状へ返信は唯一と言っていい俺の仕事だったが、そこまで時間がかかるものではなく、少しばかり集中すればすぐにも終わってしまう。そうしてまたすっぽりと時間が空くことがしばしばだった。
そのように暇を持て余した状態でいかに安全のためとはいえ、部屋に閉じこもっているだけというわけにはいかず、移動しても問題ないように、結界は場所ではなく、俺自身にかけることになったのである。
効果範囲を少々広めに設定しておけば、部屋にかけているのとほぼ変わらない効果が得られるはずで、それだったら、ラルを部屋から閉め出すだなんてことをしなくてもよくなった。
場所にかけた結界よりも、解くのが簡単な部分もいい。俺の意思一つで着脱可能なのだから。
オーシュとディーウィを休ませることこそまだ難しいが、それでも俺自身にだけでも結界が張ってあると、二人の気持ちとしては随分と変わってくるようで、心持ち安堵の気配を滲ませてくる。
無理を強いている自覚があった。
とは言え、今は仕方がないともまた思う。二人以外はいまだ、信用に足る状況ではなく、人員は容易には増やせない。
特に、毒物混入が発生している以上、最低でも一人以上は、全く信用できない使用人が紛れ込んでいるのである。どうしてこの状況で、二人を休ませることが出来るというのか。
そもそも俺の言うことになど、そこまで忠実な態度を取ったことのない二人だ。俺が休めと命じたところで当然の顔をして聞くことなどせず、そういった意味でも、なかなか休ませることが出来なかった。
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