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128・初めての夜会⑥
しおりを挟む普段からまるで尽くすかのような様子なのだが、それは夜に肌を触れ合わせる前後はより顕著で、俺の方が受け身である分、負担が大きいという部分はあるにせよ、ラルは寝室に入ると途端、服を脱がすことから、浴室で体を洗うこと、また、その後の処理も含め、ほとんど全てを従った。
移動さえ可能な限り抱え上げられて行われる始末で、床に俺の足をつけたくないと言わんばかり。流石にと抵抗すると、しぶしぶではあれど譲ってはくれるのだけれども。
もっとも、行為の後は俺は大抵前後不覚になっているのでラルの成すがままである。
朝まで大抵そんな調子で、俺の身支度をしっかり整えた後、名残惜しそうに仕事に向かっていく。
場合によってはそのまま寝ていてもいいと言われることさえあった。
つまりは夜が、少しばかり激しすぎた時などの話だ。
俺はその全てにやはり慣れないままだった。
どんな態度を取ればいいのかわからず戸惑うばかりなのだが、そんな俺の戸惑いさえ、ラルは目を細め、眩しそうに見てくるのである。
「俺はさ、正直に言うと今みたいにディーウィが側についていてくれていることにも慣れていないんだ。なのに」
ラルは更にその上を行くのである。
「それは僕に言われても……それはまぁ、確かに。ラル様が駄々甘なのは確かですけど」
「あそこまで行くと過保護じゃないか? 俺、昨夜も一歩も歩いてない……」
「そうとも言えますね。というか、そういう夜のお話は僕もあまり聞きたくないです」
どうやら、暇つぶしのような俺の無意味な思考と話に付き合ってくれるらしいディーウィに甘えて、俺はどんどん話を続けていく。
「お前意外に誰に話せるって言うんだよ。たまにはいいだろ」
「主人のベッドの上でのこととか、僕、知りたくないんですけど。もっとも、把握しておくべきっていうのはわからないでもないですけどね。フィリス様のそれ、違うじゃないですか。僕、これでもフィリス様のことは弟とかそういう存在としても見てるんですよ? それを、ラル様に……なんだか複雑な気分になります」
俺は今、ラルの子供を身ごもっているし、何ならほとんど毎晩、肌を交わし合っているのだが、ディーウィはいったい今更、何を言っているのだろうか。
思わず呆れた気持ちで従者を見てしまう。
弟のよう、などというのも初耳である。
身内のそういった部分に触れたくないのはわからないものではなかった。俺だって例えば父と王妃が、などということは考えたくない。
コリデュアの王城に勤めているおしゃべりな使用人たちの噂話で聞こえてきた話が本当なら、それもこれまでたった一度だけなのだそうだが。
ちなみに母に関しては直接目にしたので想像も何もない。見たいものではなかったのは確かだった。
同時に、話が逸れているな、そうも思った。
しかし、不快な想像ではあるが、暇つぶしにはなるな、とも。
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