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エピローグ・そして甘やかされるばかりの日々へ②

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「フィリス」

 呼ばれて振り返る。
 今日の執務が終わったのか、そこにいたのはラルだった。

「ラル。仕事終わったの? お疲れ様」

 時間を確認すると、終業予測時間よりも少し早い。
 まだ陽は高く、だけどそろそろ夕暮れも近い時間。
 ちなみに俺達がいたのは中庭のガボゼで、晴れた日にはよくここで過ごしている。
 ここなら中庭の大部分を見渡すことが出来て、庭で遊ぶ子供を見るのに適しているからだった。
 それ以外によくいるのはやはり、子供たちが生まれる前から大部分の時間を過ごした、あのサンルームのある居間のような一室で。
 むしろそこかここのどちらかにいると言って過言ではなかった。
 見える位置にはオーシュとディーウィも控えている。
 他にも、ここ数年で信頼できるようになってきた侍女たちが何人か。
 彼女たちは、流石に俺一人で子供達をずっと見続けるのは難しいので、主に子供たちの世話を手伝ってくれているのである。
 なお、俺が子供たちの面倒を見続けられない理由なんて一つ。先程示したもう一つの理由と同じ。

「んー、今日は少し早く終わってね……と、言うより面白くない案件が幾つかあったから明日に回すことにしたんだ。だから朝は少し早めに仕事に向かうよ。ごめんね?」

 言いながらやんわりと俺を抱き込んだラルが、俺の膝の上から幼子を抱き上げて近くにいた侍女に手渡す。

「あ……」

 いつものことながら、つい名残惜しそうに目で追う俺の顔を捕らえたラルは、まるでよそ見など許さないと言わんばかりに、自身で俺の視界を覆って、ちゅっと、音を立てて俺へとくちづけた。

「ん、んんっ……」

 はじめは触れるだけ。かと思えばすぐにぬるんと舌が差し挟まれ、どんどんくちづけは官能的になっていく。
 しばらくしてようやく解放された時には、俺はすっかり息が上がってしまっていた。
 呼吸を整えながら辺りを窺うと、おそらくはラルが来た辺りでいろいろなことを悟ったのだろう、一番上の息子はとっくに傍を離れて、真ん中の子供と遊んでいる。
 近くには一番小さい幼子を抱いた侍女がいて、彼らの場所は、俺たちの今いるガボゼからは少しばかり距離があった。
 とは言え十分に視界に入る範囲だ。
 俺は少しばかり気分を害したとばかりに眉を寄せた。

「ラル、いつも言っているだろう、子供たちの前でこう言うのはよせって」
「どうして? 両親の仲がいいことは、子供にとっても嬉しいことのはずだよ」

 咎める俺にラルはわからないと言わんばかり。
 こと、この件に関して、俺とラルの意見があったことはない。
 ある意味ではいつものことだった。
 つまりこのラルの態度こそが理由である。
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