ぼくのかんがえたさいきょうそうび

佐伯 緋文

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第一章

ぼくのちしきのーと(1)

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 ユウキたちは少しだけ苦労しながらも歩き続けた。
 幸いにして、3日の行程の中で人型のモンスターに会ったのはあのマジュタリだけだった。
 聞かないようにしていたのであろうマリーも、2日目にしてなぜマジュタリにトドメを刺さなかったのか気になったようで、恐る恐るという感じで問いかけてきたので、苦笑しながら二人で説明し、次に人型のモンスターが出て来たら頑張ってみよう、という話になったものの、結局出なかったので肩透かしな気分の3人である。ちなみに人型以外のモンスターは問題なく倒すことができた。

 その3日で出会ったモンスターたちのことを書くならば、多彩の一言に尽きる。

 ユウキはうっかり出したスマホでそれらを写真に収め、それと一緒にスマホのメモ機能にそれらをまとめて勉強する。前の世界では勉強なんか嫌いだったのにな、などと苦笑するユウキだが、同じメモの機能の中にはスマホゲームで似たようなことをしているので、別に今回に限ったことではない。
 とりあえずマリーに不審がられないよう、異世界から来たのは結局話すことになった。
 スマホを見せてしまったのもあるが、どのみちこの世界の知識がないことはバレバレなので仕方なかったのだ。

 出会ったモンスターたちは、3日で実に19種もの種類がいた。

 系統分けをするならば、まず一番数の多かったスライム……もといネーバ系。
 その中でも数の多い順に言うと、ブルーネーバ、ホワイトネーバ、グリーンネーバ、ピンキッシュネーバ、インディゴネーバの数が多い。ここまでそれぞれ注意点は特になく、襲われても核を壊せばいいだけなのでほとんど無害と言っていい。実際ユウキも1体倒したが、それほど強いという印象はない。
 だが、注意が必要なものもいないわけではない。
 病原毒を持つレッドネーバ、麻痺毒を持つオレンジネーバ、常に帯電している体質のエレキネーバ――イエローネーバやシャイニングネーバとも呼ばれる――、あとは黒い体の中に何を持っているかわからない、ヌガーネーバ――これも色でブラックネーバと呼ばれることもあるらしい――などだ。
 それから、ストーンネーバ。雨の日は体が柔らかく、天気の日は体が硬いネーバだが、硬い時は動かないので石だと思って油断していたら、雨で突然動き出したということもあるらしい。

 ネーバ系以外にもモンスターはいる。
 ネイチャー系、つまり自然系モンスター。
 例えばロックスネークをはじめとするスネーク類。サイドヘッドという二首を持つ蛇や、フェザースネークという羽――と言っても飛べるわけではなく、威嚇するとき開くだけのものだが――を持つ種類もいる。
 あとはイタチ類。プレインウィーゼルという、体が茶色で体毛が草のような緑のものや、サンドウィーゼルという全体的に茶色いものがいるが、イタチ類は人間を見ると好奇心で付いて歩くが、襲いかかってくることはないらしいので放置することにした。ちなみにエサをやってみると、可愛らしい仕草で匂いを確かめ、咥えてどこかへ持って行った。
 鳥類も多い。
 襲いかかって来ることはないらしいが、上空で大きな鳥が飛んでいるので、ユウキにとっては少し恐怖だ。写真がどれを見ても同じにしか見えないが、ニーナには種類がわかるらしい。
 一番最初に撮った大きな鳥は、ビーフステイク・リーフ・バード。下からではわからないが羽が赤や緑で派手なのが特徴的で、羽を伸ばした体長は2メートルほどもあるらしい。次に撮った少し小さい鳥は、チックバード。小さい体だがとても俊敏で、アクロバティックな飛び方をするらしい。色は緑から黄色の中間色で個体差があるそうだ。3番目に撮った写真は、骨のような体をしたボーンバード。まぁ羽はしっかり膜があるのが見えるので、飛ぶのに支障はなさそうではあるが、少し骨のようで気持ち悪い。
 あとは、遠目ではあるがリトルベアとアルマーにも遭遇した。
 リトルベアはホントに小さな熊、アルマーは思った通り、アルマジロだった。

 ニーナの説明は、時折マリーでも知らないことが多かったらしく、「そうなのですか」「お勉強になります」などと時々感心していた。
 どうやら、ニーナは知識面に関してはとても優秀な人材らしい。



 街が見え、ようやくほっと一息吐いた。
 一応ニーナの家から毛布を持ってきたとはいえ、地面で寝るのとベッドで寝るのとでは差がありすぎるのだ。
 幸いユウキは疲れて寝付きが良くなったものの、あくまで疲れ果てて眠っているだけなのでそこまで体力的に余裕だったわけではない。食料は干し肉や干し野菜をそれなりの量持って来たので、ニーナがスープを作ってくれたり、そのまま干し肉を齧ったりしたので問題はない。ちなみに水はニーナが魔法で出していたようだ。
 魔法って便利、とちょっと思ったユウキだったが、魔法で水を出した後のニーナが疲れたような顔をしていたのを見て考えを改めた。

 ユウキはまだ知らないが、MPは、この世界では体力に依存する。

 魔法を使うのには精神力と体力の両方が必要ということになるのだが、魔法を覚えていないユウキにはこの辺の理屈はまだわかっていなかった。まぁニーナの顔で少しわかったつもりにはなっているようだが。

 街に辿り着く前に、とツールを起動して地図で位置検索。

 実はニーナの家でもやっていたのはコレで、現実世界で今どの辺、というのをチェックしているのだ。ニーナの家は小学校から見て、ユウキの家とは反対方向だったので、恐らくユウキの家のある辺りは、西方街だということになるだろう。しばらく行けないので、少し残念というかなんというか。
 ついでにGenealogyチャット仲間への返信もしたが、数日ほったらかしたのが効いているのか、返事は未だない。タイムラインは見れるので、ブロックされたわけではないようだが。



 街に付いてすぐに鍛冶屋へ直行することにした。
 受付にギルドカードをお願いすると、一枚の紙を渡された。記入欄はそれほど多くはない。

鍛冶ギルドカード申請登録用紙

【名前】為我井 勇樹
【出身】西方街北東の平原

 出身の欄を見て、ユウキは書き込んでからニーナに「これってこれでいいの?」と聞くと、「大丈夫です」と返事が返ったので、先に進める。

【種族】ドワーフ

 少し考えたが、ホビットは種族ではない、と前に聞いたのを思い出しつつ書き込むと、ニーナが「それで大丈夫です」と太鼓判を押してくれた。心強い。

【登録用途】
・身分証
・技術乞い

 これは身分証だろうと思ったら、「こちらにも丸を」と突っ込まれ、両方に○を付ける。

【冒険者ギルド】
・すでに登録済み
・登録していないが、登録予定
・登録していないし、登録の予定はない

 一応後で登録しよう、と真ん中に○を付ける。

【冒険者ギルドカード】
・未登録
・ランク[   ]

 未登録に○を付け、次へ。

【紹介者】
・有-Guild No[     ]
・無

……紹介者?と思いながら向くと、ニーナがいつの間にかカードを取り出して見せていた。何か特典でもあるんだろうか、などと考えるのは現代人だから仕方ない。
 迷わず有に○をし、ナンバーを書き写す。05534952、と。

 

 受付に紙を提出した後、待つこと1時間ほど。
 出来上がったギルドカードをようやく受け取り、ユウキたちは鍛冶屋を後にした。
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