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第一章
ぼくのかじおそわり(1)
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鍛冶屋に入ると、金属を打つ音がそこら中に響き渡っていた。
以前行ったところは個人の鍛冶屋だったので音はあまり大きくなかったのだが、ここは人数が多く、また同時にガンガンと叩いているためか、耳が痛くなるほどの音がする。
うっかりスマホで筆談しようかとか思ってしまうが、ぐっとこらえてスマホは出さない。
そもそもニーナがスマホに表示された文字を見て、「見たことのない文字です」と言っていたので、こちらの世界には存在しない文字なのかもしれない。
音があまりに大きいので、職人たちは皆、身振り手振りで会話をしている。
一応教わっては来たものの、物覚えに自信はない。中学の頃から、暗記科目は苦手なのだ。
ふと、近くにいたドワーフが手振りで何かを話しかけてきた。
動作が早すぎてわからなかったので、指を1本立て、拝むような仕草を見せる。
ちなみにこれは、「もう一度お願いします」という意味だ。
すると、ドワーフは苦笑を見せ、ユウキの背後を指さして、グッと親指を立てた。
わかりやすくて助かるなぁ、と思いながら、グッと親指を立てて返す。
ちなみに意味は、指さした方向へ、行こうという意味だ。
ドワーフは、ランス・レッシングと名乗った。
「お前、ここは初めてか」
「あ、はい」
思わず返事を返すと、ランスは「ふむ」と呟く。
「鍛冶自体はやったことはあるのか?」
「一応、インゴッドくらいは作れるようになったと思います」
まだ未熟ですが、と付け加える。ついでにまだ1日しか実際にやったことがないことも告げる。
「1日くらいだと、まだ鍛冶場は早いな。もう少しインゴッド作りで慣れたほうがいい」
「そうなんですか?」
「あぁ。せめてひとりでインゴッド作りを1個くらい完成させないとなぁ」
インゴッド。すでに作ったことがあるのだが、あれはOKの部類なのだろうか。一応あの鍛冶職人はOKを出してくれてはいたが。
「あ、それならすでに1個完成させてOKもらってます」
「あ?……どこの鍛冶屋だ?」
「北方街の……えっと名前は何て言ったかな」
手伝いをした様子を話せ、とさらに詳しく聞かれたので答えると、ランスはうーむと眉間に皺を寄せる。
「北方街というから……まさかとは思ったが、ルイドか」
「知っているんですか?」
「そうかあいつか……」
ユウキの定を意味する呟きに、うーむと考え込むランス。答えはないが、この態度から見てどうやら知っているということのようだ。ルイドは実は有名人なのだろうか。
「……それで、あいつからいくらもらった?」
「お金としては何ももらってないですが」
ユウキは言いながら<黒裂>を見せる。
「これの修理費用と、あとは奴隷をひとりもらいました」
「……奴隷だと?」
またしてもふぅむと考え込むランスに、実は安かったらしいとか言わなくていいんだろうか、などと考えてしまうユウキは、良くも悪くもやはりお人好しのようだ。
しばらく考え込んだランスは、「よし」と呟くと、「なら俺が鍛冶を教えてやる」と呟いた。
「いいんですか?」
「あぁ、ルイドが認めたというのなら大丈夫だろ」
「アレは、認められたと言っていいんでしょうか」
「……変なところで謙虚だな。あいつはダメなインゴッドに良しとは言わん」
なるほど。確かに1つはユウキだけで作り、それにOKをもらっているのだから、それを認められたと表現するのは間違いではないだろう。
順番的には短剣から教えるのが普通だと言われ、まずは短剣から挑戦することになった。
最初は最もシンプルな短剣、ダガーだ。
「こいつは、投げて使う連中もいるからな。軽く、そして扱い易く作るのがコツだ」
という言葉は、この音では聞こえないので、外で説明を受けている。
まだ手言――身振り手振りで会話することをそう言うらしい――を上手くこなせないということで、簡単な手言だけを徹底して教わった。
ひとつは、手の甲を相手に向け、人差し指を立てる仕草。意味は「やってみろ」。
もうひとつは、手の甲を自分に向け、人差し指と小指を立てる仕草。意味は「注目」。
実際にインゴッドから作るのを見るのは初めてだが、と思ったらある程度の形は型を用意するのが普通らしい。溶かしたインゴッドを型に流し、出来たものを打って完成させる。それが基本なのだそうだ。
インゴッドを溶かす過程は静かなもので、時折何かを落としたか打ち付けたかして音がなる程度なので、今いる場所で手言は使わないらしいが、打つ場所に行ったら間違いなく声など通らないだろうとのことだ。
「慣れたヤツは、型も使わずにある程度作っちまうがな」
「……というと?」
「インゴッドを手の中で形を変えるんだ」
ユウキの顔を見ながら、ランスは苦笑しながら「後で見せてやる」と言った。
とりあえずダガーの形になったものが出来上がった。
ユウキの目から見て、すでにダガーとして機能しそうに見えるのだが、これはまだダガーではないらしい。実際に少し見せてもらうために受け取り、ステータスを開く。
<ダガー(未完成)>
[ステータス]
系列:短剣
攻撃:2
属性:無
武器レベル:0
質:劣悪
耐久:10/10
[説明]
ダガーとしては未完成の作りかけ。
使えないことはないが、少なくとも戦闘で使うのは自殺行為というものだろう。
さすがに説明欄も辛辣な意見だ。
耐久も10と低いし、質も劣悪とまで言われている。
「これをいくつか作って鍛冶場に持って行って、叩いて完成させるんだ」
1個づつじゃないといけない、ということはないらしい。
とりあえずインゴッド1個で5個ほど作れるらしいので、10本ほど作らせてもらうことにし、インゴッドを溶かしつつ考える。
種族スキルが大成功率を高めるものだったはずだ。どこまで効果があるのかはわからないが、少し上げてみようと決め、ステータスを開くと、1だけ創作の心得を上げてみる。
創作の心得 Lv.2
ドワーフ専用スキル。
製作系スキル使用時に自動発動。
大成功率を0.5%上昇させる。
0.1づつ上がるのかと思ったら、一気に0.4%も上がったことに少しだけ驚いた。
この上がり幅ならば、無駄になることもないだろう、と10まで上げてみることにする。
創作の心得 Lv.2▲(1500)
創作の心得 Lv.3▲(1500)
創作の心得 Lv.4▲(3000)
創作の心得 Lv.5▲(3000)
創作の心得 Lv.6▲(5000)
創作の心得 Lv.7▲(5000)
創作の心得 Lv.8▲(7500)
創作の心得 Lv.9▲(7500)
創作の心得 Lv.10▲(10000)
さて、肝心の大成功率はどのくらいだろう。
創作の心得 Lv.10
ドワーフ専用スキル。
製作系スキル使用時に自動発動。
大成功率を6%上昇させる。
6%。微妙な気もするが、鍛冶の基礎の方の成功率も同じくらいだったはずだと考えるとこんなものなんだろうか。
念のため基礎の方を見る。
生産/鍛冶の基礎 Lv.10
金属を使った鍛冶技術全般の基礎。
鍛冶技能に対しての成功修正に+6%。
やっぱり6%だし、こんなものなんだろうとユウキが納得した頃には、すでに未完成のダガーのうち、5本が完成していた。
以前行ったところは個人の鍛冶屋だったので音はあまり大きくなかったのだが、ここは人数が多く、また同時にガンガンと叩いているためか、耳が痛くなるほどの音がする。
うっかりスマホで筆談しようかとか思ってしまうが、ぐっとこらえてスマホは出さない。
そもそもニーナがスマホに表示された文字を見て、「見たことのない文字です」と言っていたので、こちらの世界には存在しない文字なのかもしれない。
音があまりに大きいので、職人たちは皆、身振り手振りで会話をしている。
一応教わっては来たものの、物覚えに自信はない。中学の頃から、暗記科目は苦手なのだ。
ふと、近くにいたドワーフが手振りで何かを話しかけてきた。
動作が早すぎてわからなかったので、指を1本立て、拝むような仕草を見せる。
ちなみにこれは、「もう一度お願いします」という意味だ。
すると、ドワーフは苦笑を見せ、ユウキの背後を指さして、グッと親指を立てた。
わかりやすくて助かるなぁ、と思いながら、グッと親指を立てて返す。
ちなみに意味は、指さした方向へ、行こうという意味だ。
ドワーフは、ランス・レッシングと名乗った。
「お前、ここは初めてか」
「あ、はい」
思わず返事を返すと、ランスは「ふむ」と呟く。
「鍛冶自体はやったことはあるのか?」
「一応、インゴッドくらいは作れるようになったと思います」
まだ未熟ですが、と付け加える。ついでにまだ1日しか実際にやったことがないことも告げる。
「1日くらいだと、まだ鍛冶場は早いな。もう少しインゴッド作りで慣れたほうがいい」
「そうなんですか?」
「あぁ。せめてひとりでインゴッド作りを1個くらい完成させないとなぁ」
インゴッド。すでに作ったことがあるのだが、あれはOKの部類なのだろうか。一応あの鍛冶職人はOKを出してくれてはいたが。
「あ、それならすでに1個完成させてOKもらってます」
「あ?……どこの鍛冶屋だ?」
「北方街の……えっと名前は何て言ったかな」
手伝いをした様子を話せ、とさらに詳しく聞かれたので答えると、ランスはうーむと眉間に皺を寄せる。
「北方街というから……まさかとは思ったが、ルイドか」
「知っているんですか?」
「そうかあいつか……」
ユウキの定を意味する呟きに、うーむと考え込むランス。答えはないが、この態度から見てどうやら知っているということのようだ。ルイドは実は有名人なのだろうか。
「……それで、あいつからいくらもらった?」
「お金としては何ももらってないですが」
ユウキは言いながら<黒裂>を見せる。
「これの修理費用と、あとは奴隷をひとりもらいました」
「……奴隷だと?」
またしてもふぅむと考え込むランスに、実は安かったらしいとか言わなくていいんだろうか、などと考えてしまうユウキは、良くも悪くもやはりお人好しのようだ。
しばらく考え込んだランスは、「よし」と呟くと、「なら俺が鍛冶を教えてやる」と呟いた。
「いいんですか?」
「あぁ、ルイドが認めたというのなら大丈夫だろ」
「アレは、認められたと言っていいんでしょうか」
「……変なところで謙虚だな。あいつはダメなインゴッドに良しとは言わん」
なるほど。確かに1つはユウキだけで作り、それにOKをもらっているのだから、それを認められたと表現するのは間違いではないだろう。
順番的には短剣から教えるのが普通だと言われ、まずは短剣から挑戦することになった。
最初は最もシンプルな短剣、ダガーだ。
「こいつは、投げて使う連中もいるからな。軽く、そして扱い易く作るのがコツだ」
という言葉は、この音では聞こえないので、外で説明を受けている。
まだ手言――身振り手振りで会話することをそう言うらしい――を上手くこなせないということで、簡単な手言だけを徹底して教わった。
ひとつは、手の甲を相手に向け、人差し指を立てる仕草。意味は「やってみろ」。
もうひとつは、手の甲を自分に向け、人差し指と小指を立てる仕草。意味は「注目」。
実際にインゴッドから作るのを見るのは初めてだが、と思ったらある程度の形は型を用意するのが普通らしい。溶かしたインゴッドを型に流し、出来たものを打って完成させる。それが基本なのだそうだ。
インゴッドを溶かす過程は静かなもので、時折何かを落としたか打ち付けたかして音がなる程度なので、今いる場所で手言は使わないらしいが、打つ場所に行ったら間違いなく声など通らないだろうとのことだ。
「慣れたヤツは、型も使わずにある程度作っちまうがな」
「……というと?」
「インゴッドを手の中で形を変えるんだ」
ユウキの顔を見ながら、ランスは苦笑しながら「後で見せてやる」と言った。
とりあえずダガーの形になったものが出来上がった。
ユウキの目から見て、すでにダガーとして機能しそうに見えるのだが、これはまだダガーではないらしい。実際に少し見せてもらうために受け取り、ステータスを開く。
<ダガー(未完成)>
[ステータス]
系列:短剣
攻撃:2
属性:無
武器レベル:0
質:劣悪
耐久:10/10
[説明]
ダガーとしては未完成の作りかけ。
使えないことはないが、少なくとも戦闘で使うのは自殺行為というものだろう。
さすがに説明欄も辛辣な意見だ。
耐久も10と低いし、質も劣悪とまで言われている。
「これをいくつか作って鍛冶場に持って行って、叩いて完成させるんだ」
1個づつじゃないといけない、ということはないらしい。
とりあえずインゴッド1個で5個ほど作れるらしいので、10本ほど作らせてもらうことにし、インゴッドを溶かしつつ考える。
種族スキルが大成功率を高めるものだったはずだ。どこまで効果があるのかはわからないが、少し上げてみようと決め、ステータスを開くと、1だけ創作の心得を上げてみる。
創作の心得 Lv.2
ドワーフ専用スキル。
製作系スキル使用時に自動発動。
大成功率を0.5%上昇させる。
0.1づつ上がるのかと思ったら、一気に0.4%も上がったことに少しだけ驚いた。
この上がり幅ならば、無駄になることもないだろう、と10まで上げてみることにする。
創作の心得 Lv.2▲(1500)
創作の心得 Lv.3▲(1500)
創作の心得 Lv.4▲(3000)
創作の心得 Lv.5▲(3000)
創作の心得 Lv.6▲(5000)
創作の心得 Lv.7▲(5000)
創作の心得 Lv.8▲(7500)
創作の心得 Lv.9▲(7500)
創作の心得 Lv.10▲(10000)
さて、肝心の大成功率はどのくらいだろう。
創作の心得 Lv.10
ドワーフ専用スキル。
製作系スキル使用時に自動発動。
大成功率を6%上昇させる。
6%。微妙な気もするが、鍛冶の基礎の方の成功率も同じくらいだったはずだと考えるとこんなものなんだろうか。
念のため基礎の方を見る。
生産/鍛冶の基礎 Lv.10
金属を使った鍛冶技術全般の基礎。
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