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私の責務
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「これより来年の成功を願うご祈祷をさせていただきます。」
予定通り14時にOTMの副社長が本堂に入り、ご祈祷となる。
一般ではありえない額を納めたが、ご利益やお詞は大御神のお気持ち次第だ。
私は会長と階段の間に座り会長に向けて礼をする。
会長の座る位置からは大御神のお顔は見えないだろう。
私は階段の手前両脇の机に供物と鏡をそれぞれ乗せ、その前に正座し大御神に一礼する。
「高天原に~」
祝詞を読み、諸々の儀式を執り行うと、次にあるのは神のお詞だ。
正座のまま後ろを振り向き会長に、
「これより大御神がお詞を下さいます。礼をお願い致します。」
と告げる。
会長が礼をしたのを認めながら私は机と机の間を通り階段を上がる。
階段の最後の段と開帳した扉の間には畳の間と同じ薄布が掛かっている。
それの前にひざまづきお詞を待つ。
とても小さな声で目の前にいる私にさえ聞き取りにくくお詞をを発する。
「会社はもう立ち行かなくなる。北の方、国外へ逃れるが吉。」
「承りました。」
立ち上がって礼をしてその階段を降りる。
「『会社は立ち行かなくなる。北の方、国外へ逃れるが吉。』…お直りください。」
頭を下げたまま固まる会長を他所に礼をすると最後の祝詞を読み始めた。
「立ち行かなくなる…?おい、どういう事だ!」
会長は立ち上がり私の肩を掴んで振り向かせる。
「お座り下さい。」
「いくら払ったと思ってんだ!」
「お座り下さい。」
「てめぇ、ただ伝言するしかしてねぇ癖になにスカした顔してんだよ!」
パンッ、
乾いた音がする。
体勢が崩され後ろに手をついた形で目を開けると、階段の上にいるはずの大御神の後ろ姿。
「去ね。ここで犯した過ち、忘れるな。」
聴いたことがない低い声で、その手には会長の腕が掴まれていて、目の前の会長は歯を食いしばっている。
「し、失礼いたしました。」
私は急いで立ち上がり、大御神の目を手で覆う。
「大御神、見てはなりません。あとは我々が始末します。上へ戻りましょう。」
大御神は素直にその手を離し、後ろを振り向いた。
その代わり私の腕を強く掴んで階段を登らせる。
一瞬後ろを振り向くと掴まれた腕をさすり、私を睨みつける会長が立っていた。
この後帰っても、きっと日常には戻れないだろう。
それだけの事を犯してしまったのだから。
「申し訳ございませんでした。」
腕を掴まれたまま、畳の間の一段高くなったところのソファーに私を座らせる。
その隣に大御神はお座りになった所で謝罪した。
御手を汚させてしまったのだ。
清めなければと思い、立ち上がろうとするもその強い力で引き止められてしまう。
「大御神、御手を…。」
「いい。」
こうなったらテコでも動かないだろう。
時々怒ると私の腕を掴んで離さないのだが、それが落ち着くからか私に対して怒っているからかはよくわからない。
私としては隣に座るのが当たり前だったあの頃を思い出して苦しくなるから、すぐにでも解き放ってほしいのだけど…。
予定通り14時にOTMの副社長が本堂に入り、ご祈祷となる。
一般ではありえない額を納めたが、ご利益やお詞は大御神のお気持ち次第だ。
私は会長と階段の間に座り会長に向けて礼をする。
会長の座る位置からは大御神のお顔は見えないだろう。
私は階段の手前両脇の机に供物と鏡をそれぞれ乗せ、その前に正座し大御神に一礼する。
「高天原に~」
祝詞を読み、諸々の儀式を執り行うと、次にあるのは神のお詞だ。
正座のまま後ろを振り向き会長に、
「これより大御神がお詞を下さいます。礼をお願い致します。」
と告げる。
会長が礼をしたのを認めながら私は机と机の間を通り階段を上がる。
階段の最後の段と開帳した扉の間には畳の間と同じ薄布が掛かっている。
それの前にひざまづきお詞を待つ。
とても小さな声で目の前にいる私にさえ聞き取りにくくお詞をを発する。
「会社はもう立ち行かなくなる。北の方、国外へ逃れるが吉。」
「承りました。」
立ち上がって礼をしてその階段を降りる。
「『会社は立ち行かなくなる。北の方、国外へ逃れるが吉。』…お直りください。」
頭を下げたまま固まる会長を他所に礼をすると最後の祝詞を読み始めた。
「立ち行かなくなる…?おい、どういう事だ!」
会長は立ち上がり私の肩を掴んで振り向かせる。
「お座り下さい。」
「いくら払ったと思ってんだ!」
「お座り下さい。」
「てめぇ、ただ伝言するしかしてねぇ癖になにスカした顔してんだよ!」
パンッ、
乾いた音がする。
体勢が崩され後ろに手をついた形で目を開けると、階段の上にいるはずの大御神の後ろ姿。
「去ね。ここで犯した過ち、忘れるな。」
聴いたことがない低い声で、その手には会長の腕が掴まれていて、目の前の会長は歯を食いしばっている。
「し、失礼いたしました。」
私は急いで立ち上がり、大御神の目を手で覆う。
「大御神、見てはなりません。あとは我々が始末します。上へ戻りましょう。」
大御神は素直にその手を離し、後ろを振り向いた。
その代わり私の腕を強く掴んで階段を登らせる。
一瞬後ろを振り向くと掴まれた腕をさすり、私を睨みつける会長が立っていた。
この後帰っても、きっと日常には戻れないだろう。
それだけの事を犯してしまったのだから。
「申し訳ございませんでした。」
腕を掴まれたまま、畳の間の一段高くなったところのソファーに私を座らせる。
その隣に大御神はお座りになった所で謝罪した。
御手を汚させてしまったのだ。
清めなければと思い、立ち上がろうとするもその強い力で引き止められてしまう。
「大御神、御手を…。」
「いい。」
こうなったらテコでも動かないだろう。
時々怒ると私の腕を掴んで離さないのだが、それが落ち着くからか私に対して怒っているからかはよくわからない。
私としては隣に座るのが当たり前だったあの頃を思い出して苦しくなるから、すぐにでも解き放ってほしいのだけど…。
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