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手紙
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1月31日。女神が訪れた。私はあの日、手紙を出した。体調について尋ねるものだったが、返事は来なかった。
「ご機嫌よう、大御神のもとへ案内して頂戴?」
「仰せのままに。」
私は本殿を通り抜ける手前で立ち止まり振り返った。女神は私が口を開く前に宣った。
「手紙。意味がわからないわ。ただの巫女が、直接ならまだしも手紙なんかで私の言葉を聞こうって甘いんじゃないの?」
「時間がないのです。」
そう、十代で子を成してきた理由がある。3代で確実に交代するためだ。どちらの家も特別長寿というわけではない。どちらかと言えば平均よりやや早く亡くなる人が多い家系だ。今の大御神は13歳で大御神となったが、本来は16歳である。なぜ若くしてなる必要があったかというと、先代の大御神が古希、70歳を迎えられたから。古希は大御神の寿命として扱われているという記録があり、現代もそれに倣っている。女神の家系もほぼ同じ決まりのはずだ。
この交代を両方の年齢の条件を満たして行うには、大御神、その子、その孫が平均18歳で子をなさねばならない。大御神は今年17歳。時間がない。
「ねぇ。そもそも私が悪いの?私だけのせいなの?」
女神の言い分ももっともだ。が、拳を握りしめるくらいの感情は湧いてしまった。
「わかりません。それを確かめるためにお手紙を差し上げました。」
「そっちが調べてからが筋なんじゃないの?」
女神は私の顔を覗き込む。私は目を合わせて声を低めた。
「女神様、大御神に問題があるとおっしゃるのでしょうか。」
「なっ、言ってないわよ。…ねぇ、時間ないならこんなところで足止めしないでいただける?」
「申し訳ございません。ご案内いたします。」
部屋に通ずる扉の前で入室の許可を求め、無言の返事ののち扉を開ける。
「大御神、お待たせして申し訳ございません。」
部屋に入ってすぐ、正座をして頭を下げた。
大御神はいつもの優しさで、いいよ、と言う。
女神は無言で湯あみに行ってしまった。私はその間に布団を用意する。布団にはあらかじめ焚いておいた香の香りがする。催淫、とまでは行かないが情事の際に用いられている香を有夜様が渡してきたのだった。
「朔、怒ってるの?」
唐突なその質問に一瞬身体が強張った。
「申し訳ございません。すぐ落ち着きますので。」
大御神は見える能力が特に秀でているが、もともと五感が人より優れている。気が立っているのも感じ取ってしまう。私のことは見えないというからこういう鋭さは誰に対してもあるのだろう。
「無理しないでね。具合が悪ければ、」
「お気遣い感謝申し上げます。問題ありません。」
布団の用意を終え、大御神の方へ振り返り礼をした。
これ以上、この人の優しさに甘えているわけにはいかない。
「ご機嫌よう、大御神のもとへ案内して頂戴?」
「仰せのままに。」
私は本殿を通り抜ける手前で立ち止まり振り返った。女神は私が口を開く前に宣った。
「手紙。意味がわからないわ。ただの巫女が、直接ならまだしも手紙なんかで私の言葉を聞こうって甘いんじゃないの?」
「時間がないのです。」
そう、十代で子を成してきた理由がある。3代で確実に交代するためだ。どちらの家も特別長寿というわけではない。どちらかと言えば平均よりやや早く亡くなる人が多い家系だ。今の大御神は13歳で大御神となったが、本来は16歳である。なぜ若くしてなる必要があったかというと、先代の大御神が古希、70歳を迎えられたから。古希は大御神の寿命として扱われているという記録があり、現代もそれに倣っている。女神の家系もほぼ同じ決まりのはずだ。
この交代を両方の年齢の条件を満たして行うには、大御神、その子、その孫が平均18歳で子をなさねばならない。大御神は今年17歳。時間がない。
「ねぇ。そもそも私が悪いの?私だけのせいなの?」
女神の言い分ももっともだ。が、拳を握りしめるくらいの感情は湧いてしまった。
「わかりません。それを確かめるためにお手紙を差し上げました。」
「そっちが調べてからが筋なんじゃないの?」
女神は私の顔を覗き込む。私は目を合わせて声を低めた。
「女神様、大御神に問題があるとおっしゃるのでしょうか。」
「なっ、言ってないわよ。…ねぇ、時間ないならこんなところで足止めしないでいただける?」
「申し訳ございません。ご案内いたします。」
部屋に通ずる扉の前で入室の許可を求め、無言の返事ののち扉を開ける。
「大御神、お待たせして申し訳ございません。」
部屋に入ってすぐ、正座をして頭を下げた。
大御神はいつもの優しさで、いいよ、と言う。
女神は無言で湯あみに行ってしまった。私はその間に布団を用意する。布団にはあらかじめ焚いておいた香の香りがする。催淫、とまでは行かないが情事の際に用いられている香を有夜様が渡してきたのだった。
「朔、怒ってるの?」
唐突なその質問に一瞬身体が強張った。
「申し訳ございません。すぐ落ち着きますので。」
大御神は見える能力が特に秀でているが、もともと五感が人より優れている。気が立っているのも感じ取ってしまう。私のことは見えないというからこういう鋭さは誰に対してもあるのだろう。
「無理しないでね。具合が悪ければ、」
「お気遣い感謝申し上げます。問題ありません。」
布団の用意を終え、大御神の方へ振り返り礼をした。
これ以上、この人の優しさに甘えているわけにはいかない。
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