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紅雷の昇格
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「雪音に嘘のデータ送ったの?」
紅雷はボスの執務室で応接ソファに座っていた。
「そうなるな。」
紅雷の正面に座る中年の男はそう答えた。
「雪音が怪我をした。あんたのせいだ。」
紅雷は雪音と話す時よりいくらか低い声で、目の前の男を睨みつける。口調こそ変わらないが、明らかに雰囲気に凄みがあるが、対する男、この組織のボスなる男がひるむことはない。
「報酬は弾む。」
「それが狙いなんでしょ。」
幹部、この組織の中枢を担う人間の総称だ。ボスを含め6人いる幹部のうち、2人は現場から、特に毎月の売上上位3名からと決められている。うち1人は現場最古参で数年2位である虎と呼ばれる男だ。この虎からかつて1位の座を奪い、現在まで最高額を更新し続けているのが紅雷。半年前までは3位にいた男がもう一人の枠を埋めていたが引退し、以来3位が流動的で幹部にさせるには厳しい状況が続いている。
そうなれば必然的に紅雷が幹部になるはずだが、紅雷自身が拒絶。そこで4ヶ月前に幹部側から新しい基準が出された。上位3名ではなく、売上額が2000万を超える者を幹部にする、というもの。紅雷は雪音の仕事をカットさせ、この額を超えないように管理した。しかし今月、もう半分を過ぎるというところで急遽大型の仕事を突っ込まれ、仕事のカットもできない状況で2000万を超えることになったのだ。
「本来はお前がやるべきだ。しかしやりたくないと言うなら雪音しかいない。今月は3位だろうな。新しい基準がなくても幹部として認められる。」
「あんたらの中に雪音を入れたくない。」
「ならお前がやれ。いい加減覚悟決めたらどうだ。」
紅雷が幹部を嫌う理由はいくつかある。任務以外の拘束時間延長、他の人間の監視、任務の偵察、依頼主との直接交渉、組織内の制裁・・・。紅雷の性格には向かないものばかりだ。
「こっちとしては、ユキが欲しいんだがな。」
ボスはため息をついた。性格的に不向きだとわかっている紅雷より、通常の仕事に加え役付きの任務もそつなくこなす雪音の方が扱いやすい。紅雷より期待できるわけだ。
「ほんとに他にいないの。」
「ああ。」
「わかった。やるよ、やればいいんでしょ。」
紅雷はソファの背もたれにドンっと寄りかかった。明らかに機嫌が悪い。紅雷としては不本意極まりない決断となった。
紅雷はボスの執務室で応接ソファに座っていた。
「そうなるな。」
紅雷の正面に座る中年の男はそう答えた。
「雪音が怪我をした。あんたのせいだ。」
紅雷は雪音と話す時よりいくらか低い声で、目の前の男を睨みつける。口調こそ変わらないが、明らかに雰囲気に凄みがあるが、対する男、この組織のボスなる男がひるむことはない。
「報酬は弾む。」
「それが狙いなんでしょ。」
幹部、この組織の中枢を担う人間の総称だ。ボスを含め6人いる幹部のうち、2人は現場から、特に毎月の売上上位3名からと決められている。うち1人は現場最古参で数年2位である虎と呼ばれる男だ。この虎からかつて1位の座を奪い、現在まで最高額を更新し続けているのが紅雷。半年前までは3位にいた男がもう一人の枠を埋めていたが引退し、以来3位が流動的で幹部にさせるには厳しい状況が続いている。
そうなれば必然的に紅雷が幹部になるはずだが、紅雷自身が拒絶。そこで4ヶ月前に幹部側から新しい基準が出された。上位3名ではなく、売上額が2000万を超える者を幹部にする、というもの。紅雷は雪音の仕事をカットさせ、この額を超えないように管理した。しかし今月、もう半分を過ぎるというところで急遽大型の仕事を突っ込まれ、仕事のカットもできない状況で2000万を超えることになったのだ。
「本来はお前がやるべきだ。しかしやりたくないと言うなら雪音しかいない。今月は3位だろうな。新しい基準がなくても幹部として認められる。」
「あんたらの中に雪音を入れたくない。」
「ならお前がやれ。いい加減覚悟決めたらどうだ。」
紅雷が幹部を嫌う理由はいくつかある。任務以外の拘束時間延長、他の人間の監視、任務の偵察、依頼主との直接交渉、組織内の制裁・・・。紅雷の性格には向かないものばかりだ。
「こっちとしては、ユキが欲しいんだがな。」
ボスはため息をついた。性格的に不向きだとわかっている紅雷より、通常の仕事に加え役付きの任務もそつなくこなす雪音の方が扱いやすい。紅雷より期待できるわけだ。
「ほんとに他にいないの。」
「ああ。」
「わかった。やるよ、やればいいんでしょ。」
紅雷はソファの背もたれにドンっと寄りかかった。明らかに機嫌が悪い。紅雷としては不本意極まりない決断となった。
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