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引退2
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本部をあとにし、雪音は帰路に着いた。帰り際にボスから聞いた虎の引退の話に衝撃を受けており、玄関の鍵を閉めて何度目かのため息をついた。
スーツを脱ぎ、シャワーを浴び、冷蔵庫から日本酒の一升瓶を取り出し、リビングのソファに座った。ここまで全くの無意識で動いているほど、雪音の頭は虎の引退で支配されていた。
雪音も頭では理解していた。虎が引退を考える年齢であることも、依存しないようにしなければいけないことも。
「はぁ・・・。」
また、ため息をつく。
虎が引退するということは、最古参でかつての現場のトップが抜けるということ、そして20年以上不動だった幹部に穴が空くということだ。雪音は最大に信頼を寄せていた親にも代わる相談役を失い、その上で幹部という重責も与えられる。雪音には負担が大きすぎた。
「ただいま。」
玄関で物音と声がする。紅雷が帰宅したのだ。紅雷は帰ったその足で雪音の元へ。
「おかえり。」
「ずいぶん飲んでるね。・・・雪音も聞いたの?あの話。」
「・・・。」
雪音はグラスに口をつけたまま紅雷をぼんやりと見る。
「酔ってるの、珍しいね。」
紅雷は少し嬉しそうに雪音の頭を撫でた。
「・・・紅雷は、大丈夫?虎いなくなっても。」
いつもよりややゆっくりと、雪音はそう聞いた。
「どうだろう。でも止められないから、俺には受け入れるしかできない。」
紅雷は雪音の頭から顔へ自分の手を移動させた。
「私は、不安で仕方ない。」
紅雷は雪音を正面から抱きしめた。雪音が不安を口にするなどほとんどない。それほど、雪音にとってはダメージが大きかった。
スーツを脱ぎ、シャワーを浴び、冷蔵庫から日本酒の一升瓶を取り出し、リビングのソファに座った。ここまで全くの無意識で動いているほど、雪音の頭は虎の引退で支配されていた。
雪音も頭では理解していた。虎が引退を考える年齢であることも、依存しないようにしなければいけないことも。
「はぁ・・・。」
また、ため息をつく。
虎が引退するということは、最古参でかつての現場のトップが抜けるということ、そして20年以上不動だった幹部に穴が空くということだ。雪音は最大に信頼を寄せていた親にも代わる相談役を失い、その上で幹部という重責も与えられる。雪音には負担が大きすぎた。
「ただいま。」
玄関で物音と声がする。紅雷が帰宅したのだ。紅雷は帰ったその足で雪音の元へ。
「おかえり。」
「ずいぶん飲んでるね。・・・雪音も聞いたの?あの話。」
「・・・。」
雪音はグラスに口をつけたまま紅雷をぼんやりと見る。
「酔ってるの、珍しいね。」
紅雷は少し嬉しそうに雪音の頭を撫でた。
「・・・紅雷は、大丈夫?虎いなくなっても。」
いつもよりややゆっくりと、雪音はそう聞いた。
「どうだろう。でも止められないから、俺には受け入れるしかできない。」
紅雷は雪音の頭から顔へ自分の手を移動させた。
「私は、不安で仕方ない。」
紅雷は雪音を正面から抱きしめた。雪音が不安を口にするなどほとんどない。それほど、雪音にとってはダメージが大きかった。
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