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引退3
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紅雷は雪音が本部に来る少し前にボスに呼び出されていた。
「虎が引退するそうだ。」
「・・・それほんと?」
「こんな嘘ついてどうするんだ。」
紅雷は驚きを見せたあと、ソファに座り込みこう言った。
「紅雷のやってた仕事の割り振りはどうなるの?ずっと固定の任務もあるし、幹部の穴も俺が入った穴より大きくなる。」
「冷静だな、ずいぶんと。自分の育ての親がいなくなるのに。」
「・・・確かにそうかもしれないけど、俺もいつまでも子供じゃない。この組織に対して責任がある。」
「成長してんだなぁ・・・。幹部は必然的に雪が入ることになるが、さすがのあいつにも荷が重いだろうな。仕事の一部も雪とお前がやることになるな。」
「それはいつから?」
「今年いっぱいって話だ。幹部を埋めるより任務を埋めたいから、雪音が昇格するのはさらに先だな。」
「雪音には話すの?」
「そうだな、お前的にもその方がいいだろう。」
「うん。よろしくね。」
雪音がボスから話を聞かされ、多少動揺していることは予想がついていたが、紅雷の想定以上だったようだ。
「日本酒、そんな一気に飲んだら明日に残るよ。」
「うん、わかってる。」
だいぶ酔っているようだが、それでも止まらないのは動揺した心をごまかすためだろう。
「俺シャワー浴びてくるから、出てきたら終わりにしてね。」
「うん。」
雪音のから返事を聞いて、紅雷は立ち上がるとバスルームへ向かった。
紅雷の後ろ姿を見送ると、雪音は盃に新たに日本酒を注ぐ。雪音はかなり酒に強い。しっかり酔うには日本酒や蒸留酒のストレートをハイペースで流し込むしかないのだ。帰ってきてから止まることなく飲み続け、流石にかなり酔いが回っていたがそれでもやめられずにいた。
黙々と、不安を押し込めるように飲んでいると間も無く、紅雷がバスルームから戻ってきた。
「もう終わり。今水持ってくるから待ってて。」
紅雷はグラスと瓶を雪音から取り上げるとそれをキッチンへ持っていき、代わりにペットボトルのミネラルウォーターを雪音に渡した。
「ありがとう。」
雪音は素直に水を飲む。500mlのペットボトルを半分ほど空ける。
「立てる?ベッド行くよ?」
紅雷は雪音の顔を覗き込む。若干赤らんで目も潤んでいる。何がとは言わないが、やばいな、と紅雷は思うがそれを出さずに雪音の膝裏と背中に腕を回し抱き上げた。雪音は紅雷の首に両腕を回した。
「どうしたの、いつもなら自分で歩くっていうくせに。」
「無理。」
雪音の不器用な感情表現や甘え方は紅雷の理性を殺すのに十分な威力を持っている。紅雷は寝室にたどり着き雪音をベッドにおろすと、そのまま雪音の唇に自分のを重ねた。雪音も条件反射でそれを受け入れる。
「大丈夫。俺が雪音の席を作っておくから。大丈夫。」
雪音を落ち着かせるように何度も、大丈夫、と言い続けた。
「虎が引退するそうだ。」
「・・・それほんと?」
「こんな嘘ついてどうするんだ。」
紅雷は驚きを見せたあと、ソファに座り込みこう言った。
「紅雷のやってた仕事の割り振りはどうなるの?ずっと固定の任務もあるし、幹部の穴も俺が入った穴より大きくなる。」
「冷静だな、ずいぶんと。自分の育ての親がいなくなるのに。」
「・・・確かにそうかもしれないけど、俺もいつまでも子供じゃない。この組織に対して責任がある。」
「成長してんだなぁ・・・。幹部は必然的に雪が入ることになるが、さすがのあいつにも荷が重いだろうな。仕事の一部も雪とお前がやることになるな。」
「それはいつから?」
「今年いっぱいって話だ。幹部を埋めるより任務を埋めたいから、雪音が昇格するのはさらに先だな。」
「雪音には話すの?」
「そうだな、お前的にもその方がいいだろう。」
「うん。よろしくね。」
雪音がボスから話を聞かされ、多少動揺していることは予想がついていたが、紅雷の想定以上だったようだ。
「日本酒、そんな一気に飲んだら明日に残るよ。」
「うん、わかってる。」
だいぶ酔っているようだが、それでも止まらないのは動揺した心をごまかすためだろう。
「俺シャワー浴びてくるから、出てきたら終わりにしてね。」
「うん。」
雪音のから返事を聞いて、紅雷は立ち上がるとバスルームへ向かった。
紅雷の後ろ姿を見送ると、雪音は盃に新たに日本酒を注ぐ。雪音はかなり酒に強い。しっかり酔うには日本酒や蒸留酒のストレートをハイペースで流し込むしかないのだ。帰ってきてから止まることなく飲み続け、流石にかなり酔いが回っていたがそれでもやめられずにいた。
黙々と、不安を押し込めるように飲んでいると間も無く、紅雷がバスルームから戻ってきた。
「もう終わり。今水持ってくるから待ってて。」
紅雷はグラスと瓶を雪音から取り上げるとそれをキッチンへ持っていき、代わりにペットボトルのミネラルウォーターを雪音に渡した。
「ありがとう。」
雪音は素直に水を飲む。500mlのペットボトルを半分ほど空ける。
「立てる?ベッド行くよ?」
紅雷は雪音の顔を覗き込む。若干赤らんで目も潤んでいる。何がとは言わないが、やばいな、と紅雷は思うがそれを出さずに雪音の膝裏と背中に腕を回し抱き上げた。雪音は紅雷の首に両腕を回した。
「どうしたの、いつもなら自分で歩くっていうくせに。」
「無理。」
雪音の不器用な感情表現や甘え方は紅雷の理性を殺すのに十分な威力を持っている。紅雷は寝室にたどり着き雪音をベッドにおろすと、そのまま雪音の唇に自分のを重ねた。雪音も条件反射でそれを受け入れる。
「大丈夫。俺が雪音の席を作っておくから。大丈夫。」
雪音を落ち着かせるように何度も、大丈夫、と言い続けた。
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