歩夢さん

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戦い方2

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 雪音にとって、何も仕掛けずに現場に出るのはとても久しぶりのことだった。頭痛と倦怠感は引き続いているが、現場に踏み入れた瞬間から徐々に緊張感が生まれているのを肌で感じる。

 今日の目標は輸出入業者でかつての組織の取引先の殲滅だ。東京湾に隣接した倉庫群を擁する会社である。表向きは輸出入業だが、運んでいるものは一部市場向けのもの、あとは違法薬物、武器、そのほかブラックな品々である。組織との取引で、この輸出入が円滑に動くように摘発しようとする他業者や人物を消し去ってきた。今更その時の組織の情報を海外に売ろうとしているらしい。払われた金額が大きかった以上、当時は組織も有力な情報を渡したが、それを他に流出されるとなれば黙っていることもできない。そして、流出しようものなら必ずバレるように仕掛けられているのである。

 午後7時。最高取締役が用心棒2人を連れて会社から出て、敷地内の自身の車に向かう。雪音はその車の影から様子を伺っていた。時間帯的にもまだ派手に動くことができない。

 最近雪音は不満があった。ボスから直々に渡される役付きとしての任務。全て都心部で片付ける必要があるものである。一時期海外で動いていた雪音にとっては日本での任務はとても窮屈に感じる上、よりによって人口の多い都心部での任務は繊細さを求められるため、雪音は大の苦手としていた。

 車のドアに用心棒が手をかけた瞬間、雪音は後ろについていた用心棒の頭部を右手に握った拳銃のグリップで殴り下ろす。もう片方の用心棒が目標を車に押し込もうとするが、その後ろから回し蹴りを喰らわせた。一人目は気絶しているが、二人目はすぐに起き上がる。しかし、その間に雪音は目標である最高取締役を引き摺り出し、銃口を突きつけていた。

 用心棒はアジア系の外国人のようだ。

「あと何人いる?」

 目の前に立つ用心棒に問いかける。

「たくさんダ。シャチョーを解放しロ。」

 日本語は通じるようだ。

「無理。」

 雪音は目標を放り捨てるとナイフを右手に取り出し目の前の用心棒に切り掛かった。

「…他に、何人いる?」

 後ろで座り込む目標に尋ねた。

「ひっ…!…か、金は払う!と、と、取引もしない!頼む!!見逃してくれ!!!」

「質問に答えろ。」

「頼む!」

 雪音は目標の目の前にしゃがみ込み、その顔を覗き込んだ。

「選択肢はもうないから。」

 雪音はサイレンサーのついた銃口を目標に向ける。引き金を引くことに躊躇いがなくなったのはいつからだろう。そんなことを思い、引き金を引いた。
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