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北国編
141.けれど、知らない声
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雪乃は腫れたまぶたを引き上げ、そちらを凝視した。息が詰まり、全身が脈打ち揺れるようだ。
動物だろうか? 人間だろうか? 人間なら、気付かないで――!
雪乃は小さくうずくまると、指を組んで祈った。
「ユキノちゃーんっ! どこ行ったのー?」
びくりと、雪乃の体が震える。
自分の名前を呼ぶ声。けれど、知らない声だ。
「出ておいでー。おとーさんだよー」
雪乃の頭に、『?』マークが浮かぶ。雪乃の父親とは、声も口調も違う。
そっと草の間から覗いてみると、なぜかおとーさんとやらは、茂みの中を必死に掻き分けて覗きこんでいる。
全身を覆う草色のローブを着て、山高帽を被っていた。その後ろ姿は、雪乃の好きなキャラクターに似ていた。
もしかすると、コスプレだろうか? おっさんだけど。
そんなことを考えている間も、おとーさんは茂みを掻き分けて探し続けていた。
「ユキノちゃーん。そろそろ帰ろうよー? 美味しいご飯が待ってるよー」
雪乃は気付く。どうやら彼が探しているのは雪乃ではなく、雪乃と同じ名前の、猫か犬のようだと。
安心すると同時に、やっぱり一人なんだと悲しくなって、小さく座り込んで泣いた。
「ん? 誰かいるの?」
雪乃は慌てて隠れようとするが、その前に、彼に見つかってしまった。
「ねー、君、ユキノちゃん見なかった? 深緑色の、俺と似たような服着ててね、このくらいの背なんだけど?」
と、手で一メートルほどの高さを示す。
そんな大きな猫はいない。
犬ならいるが、彼と同じような服ということは、おそらく人間なのだろう。ということは、彼の子供で合っているらしい。
どうして人間の子供を捜すのに、茂みの中を掻き分けているのか、少し疑問ではあるが。
雪乃はぶんぶんと首を左右に振る。
「そう」
残念そうに言った男は、大きく息を吐き出す。それから、雪乃をじっと見つめた。
居心地の悪い視線に雪乃は目をそらす。
「ねえ、暇なの?」
雪乃は答えに窮した。
暇といえば暇なのかもしれないが、本当はこんな場所にいる時間ではない。
戸惑う雪乃に構わず、男は話を進める。
「とりあえずさー、そんな所に座り込んで泣いている暇があったら、君もユキノちゃんを探してよ? 一人でこんな所に放り出されて、寂しがっていると思うんだよね。俺がいなくて、泣いてるかもよ? 『おとーさーん』って」
深刻な台詞のはずなのに、なぜか彼の表情は、デレデレと弛んでいた。
「もうねー、可愛いんだよー。いつもはしっかりした子なのに、とつぜん甘えてきたりしてさー。俺、子供なんて鬱陶しいだけで、どこが良いのかさっぱり分からなかったんだけど、ユキノちゃんは別だね。本当に可愛くてさー」
惚気が口から滝のように流れ出てくる。
こんなに娘を大切に思う親が実在するのだと、雪乃は驚愕する。あんなものは、創作の中にしか存在しないものだと思っていた。
雪乃の胸がきゅっと縮こまり、思わず唇を噛みしめる。
なんだろう? と不思議に思った雪乃は、自分の感情と向き合う。そこには、自分と同じ名前のユキノちゃんを、羨ましく思っている自分がいた。
そして、この人がお父さんだったら、『幸せ』の意味を知ることができただろうかと、ふと思った。
「ねー、聞いてる? うちのユキノちゃんの話。せっかく話してあげてるのにー」
「あ、はい。聞いています。迷子なんですよね? いついなくなったんですか? もう神社から出たんじゃないですか?」
迷子を捜すためには、いつ、どこではぐれたのかが重要になる。
そう考えて聞いたのだが、なぜか彼は、雪乃に背を向けて三角座りをした。
背中や頭にきのこが生えているように見えるが、気のせいだろう。さすがに幻覚が見えるようになったなんて、認めたくはない。
雪乃は頭を振って、もう一度、彼を見た。
しかし彼の周りだけ、日が翳り、湿度が異常に高い。
「この辺り一帯は、くまなく探したんだよー。ユキノちゃんが隠れていそうな森の中はもちろん、町でも探したのにさー」
先ほどのテンションはどこに行ったのか。抑揚さえ失った、暗い声がぼそぼそと歩いてきた。途中で行き倒れそうだ。
そういえば最近、緑ずくめの不審者が子供を捜していると、学校で注意されたなーと、雪乃は思い出す。
「もう五日も探し歩いてるんだけどさー、どこに行っちゃったんだろう?」
「五日?!」
衝撃的な事実に、雪乃は思わず大声で問い返してしまった。
たしか、一切の飲み食いをせずに生きられる時間は、三日。水があれば……ではなく、小さな子供が行方不明になって、五日も経過しているとなると、何か事故か事件に巻き込まれている可能性が高いのではないだろうか?
最悪な想像さえしてしまい、雪乃は血の気が引いた。
「警察には行きましたか?」
「ケーサツ? なにそれ?」
「え?」
雪乃は固まった。
警察を知らない人が、いるのだろうか? いや、いるから五日も一人で探し続けているのだろう。
改めて彼を見た雪乃は、気付いて「おお」と、手を打ちあわす。
あまりに流暢な日本語を話すから気付かなかったが、彼は日本人ではないようだ。
もしかすると、観光で日本に来て、娘さんとはぐれてしまったのかもしれない。
「えっと、ポリスです」
「ぽりす?」
ほへんっと、彼は首を傾げた。
英語も通じないようだ。発音が悪かっただけかもしれないが。
うーんと悩んだ雪乃は、普通の日本語は通じているのだからと、警察について説明した。
迷子の子供がいるのなら、警察に届ければ探してくれること。すでに警察に保護されている可能性が高いこと。
これで少しは安心してくれるかと思ったのだが、彼の顔を見た雪乃は、首を捻る。
なぜかがく然とした様子で、目と口を開いたまま固まっていた。そして解凍された途端に、
「そのケーサツって、どこにあるの?!」
と、動揺しまくって騒ぎ出した。
「お、落ち着いてください!」
「落ち着いてなんていられないよ! ユキノちゃんが捕獲されちゃうなんて。早く助けに行かないと! 俺のユキノちゃんが、あんなことや、こんなことをされたら……」
絶望に頭を抱えて崩れ落ちる、謎の男。
これほど愛されるユキノちゃんが羨ましいような、実際にこれが父親だったら大変だろうなーっと同情の気持ちが湧いてくるやら、雪乃は複雑な気持ちで、四つん這いになっている男を見下ろした。
動物だろうか? 人間だろうか? 人間なら、気付かないで――!
雪乃は小さくうずくまると、指を組んで祈った。
「ユキノちゃーんっ! どこ行ったのー?」
びくりと、雪乃の体が震える。
自分の名前を呼ぶ声。けれど、知らない声だ。
「出ておいでー。おとーさんだよー」
雪乃の頭に、『?』マークが浮かぶ。雪乃の父親とは、声も口調も違う。
そっと草の間から覗いてみると、なぜかおとーさんとやらは、茂みの中を必死に掻き分けて覗きこんでいる。
全身を覆う草色のローブを着て、山高帽を被っていた。その後ろ姿は、雪乃の好きなキャラクターに似ていた。
もしかすると、コスプレだろうか? おっさんだけど。
そんなことを考えている間も、おとーさんは茂みを掻き分けて探し続けていた。
「ユキノちゃーん。そろそろ帰ろうよー? 美味しいご飯が待ってるよー」
雪乃は気付く。どうやら彼が探しているのは雪乃ではなく、雪乃と同じ名前の、猫か犬のようだと。
安心すると同時に、やっぱり一人なんだと悲しくなって、小さく座り込んで泣いた。
「ん? 誰かいるの?」
雪乃は慌てて隠れようとするが、その前に、彼に見つかってしまった。
「ねー、君、ユキノちゃん見なかった? 深緑色の、俺と似たような服着ててね、このくらいの背なんだけど?」
と、手で一メートルほどの高さを示す。
そんな大きな猫はいない。
犬ならいるが、彼と同じような服ということは、おそらく人間なのだろう。ということは、彼の子供で合っているらしい。
どうして人間の子供を捜すのに、茂みの中を掻き分けているのか、少し疑問ではあるが。
雪乃はぶんぶんと首を左右に振る。
「そう」
残念そうに言った男は、大きく息を吐き出す。それから、雪乃をじっと見つめた。
居心地の悪い視線に雪乃は目をそらす。
「ねえ、暇なの?」
雪乃は答えに窮した。
暇といえば暇なのかもしれないが、本当はこんな場所にいる時間ではない。
戸惑う雪乃に構わず、男は話を進める。
「とりあえずさー、そんな所に座り込んで泣いている暇があったら、君もユキノちゃんを探してよ? 一人でこんな所に放り出されて、寂しがっていると思うんだよね。俺がいなくて、泣いてるかもよ? 『おとーさーん』って」
深刻な台詞のはずなのに、なぜか彼の表情は、デレデレと弛んでいた。
「もうねー、可愛いんだよー。いつもはしっかりした子なのに、とつぜん甘えてきたりしてさー。俺、子供なんて鬱陶しいだけで、どこが良いのかさっぱり分からなかったんだけど、ユキノちゃんは別だね。本当に可愛くてさー」
惚気が口から滝のように流れ出てくる。
こんなに娘を大切に思う親が実在するのだと、雪乃は驚愕する。あんなものは、創作の中にしか存在しないものだと思っていた。
雪乃の胸がきゅっと縮こまり、思わず唇を噛みしめる。
なんだろう? と不思議に思った雪乃は、自分の感情と向き合う。そこには、自分と同じ名前のユキノちゃんを、羨ましく思っている自分がいた。
そして、この人がお父さんだったら、『幸せ』の意味を知ることができただろうかと、ふと思った。
「ねー、聞いてる? うちのユキノちゃんの話。せっかく話してあげてるのにー」
「あ、はい。聞いています。迷子なんですよね? いついなくなったんですか? もう神社から出たんじゃないですか?」
迷子を捜すためには、いつ、どこではぐれたのかが重要になる。
そう考えて聞いたのだが、なぜか彼は、雪乃に背を向けて三角座りをした。
背中や頭にきのこが生えているように見えるが、気のせいだろう。さすがに幻覚が見えるようになったなんて、認めたくはない。
雪乃は頭を振って、もう一度、彼を見た。
しかし彼の周りだけ、日が翳り、湿度が異常に高い。
「この辺り一帯は、くまなく探したんだよー。ユキノちゃんが隠れていそうな森の中はもちろん、町でも探したのにさー」
先ほどのテンションはどこに行ったのか。抑揚さえ失った、暗い声がぼそぼそと歩いてきた。途中で行き倒れそうだ。
そういえば最近、緑ずくめの不審者が子供を捜していると、学校で注意されたなーと、雪乃は思い出す。
「もう五日も探し歩いてるんだけどさー、どこに行っちゃったんだろう?」
「五日?!」
衝撃的な事実に、雪乃は思わず大声で問い返してしまった。
たしか、一切の飲み食いをせずに生きられる時間は、三日。水があれば……ではなく、小さな子供が行方不明になって、五日も経過しているとなると、何か事故か事件に巻き込まれている可能性が高いのではないだろうか?
最悪な想像さえしてしまい、雪乃は血の気が引いた。
「警察には行きましたか?」
「ケーサツ? なにそれ?」
「え?」
雪乃は固まった。
警察を知らない人が、いるのだろうか? いや、いるから五日も一人で探し続けているのだろう。
改めて彼を見た雪乃は、気付いて「おお」と、手を打ちあわす。
あまりに流暢な日本語を話すから気付かなかったが、彼は日本人ではないようだ。
もしかすると、観光で日本に来て、娘さんとはぐれてしまったのかもしれない。
「えっと、ポリスです」
「ぽりす?」
ほへんっと、彼は首を傾げた。
英語も通じないようだ。発音が悪かっただけかもしれないが。
うーんと悩んだ雪乃は、普通の日本語は通じているのだからと、警察について説明した。
迷子の子供がいるのなら、警察に届ければ探してくれること。すでに警察に保護されている可能性が高いこと。
これで少しは安心してくれるかと思ったのだが、彼の顔を見た雪乃は、首を捻る。
なぜかがく然とした様子で、目と口を開いたまま固まっていた。そして解凍された途端に、
「そのケーサツって、どこにあるの?!」
と、動揺しまくって騒ぎ出した。
「お、落ち着いてください!」
「落ち着いてなんていられないよ! ユキノちゃんが捕獲されちゃうなんて。早く助けに行かないと! 俺のユキノちゃんが、あんなことや、こんなことをされたら……」
絶望に頭を抱えて崩れ落ちる、謎の男。
これほど愛されるユキノちゃんが羨ましいような、実際にこれが父親だったら大変だろうなーっと同情の気持ちが湧いてくるやら、雪乃は複雑な気持ちで、四つん這いになっている男を見下ろした。
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