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ラジン国編
170.雪乃の葉先が
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「でもまた体に異常が出たらいけないから、ユキノちゃんはもうお休みしようね」
「はーい」
素直に返事をした雪乃は、眠っていたぴー助を促がして、寝室に向かう。
ノムルが用意しておいてくれた特大の植木鉢に上ると、根を張って眠りに就いた。
そして翌日。
「ユキノちゃん?!」
「……。おはよーございます」
雪乃の葉先が、わずかに萎れていた。
「寝不足? 今から暗くして眠らせるか?! ごめんよ、ユキノちゃんの眠りを妨げた不届き者は、後できっちりお仕置きしとくからね?」
「いえ、しなくていいです」
ノムルはぷちパニックに陥ったのだった。
そんなノムルをなんとか宥めすかし、身支度を終わらせると、いよいよ調合室へと向かう。
今日はお酒も使うので、ぴー助はお留守番だ。
「ぴー?!」
怒っていたが、しっかり説得して、部屋に待機させた。
帰ってきたときに暴れていなければ良いのだがと心配になる雪乃だが、これも訓練の一つと心を鬼にする。
旅を続ける以上、飛竜をつれて行けない場所も出てくるだろう。少しずつ、一匹で留守番することにも、慣らしていかなければならない。
「では、始めます。準備はいいですねー?」
「はーい」
長閑な雰囲気で、薬作りは始まる。調合台の上には、事前に頼んでおいた器具が揃っていた。
「まずはデンゴラコンを、五ミリ幅の輪切りにします」
「りょうかーい」
ノムルよりも大きなデンゴラコンを、マグロ包丁のような大きな包丁がスライスしていく。
「わー」
「わー」
「わー」
なぜか自主的に出てきたマンドラゴラたちが、包丁の両端にぶら下がって、シーソーのように揺れていた。
直径が五十センチはありそうなデンゴラコンだ。薄くスライスするのは難しそうな作業であるが、マンドラゴラたちは綺麗にスライスしていく。
「あはははー。働き者だねー」
「わー」
「でもさあ」
「わー」
「魔法で一瞬なんだけど?」
「わー?」
すぱぱぱんっと、デンゴラコンは一瞬で、綺麗にスライスされた。
マンドラゴラたちは、呆然と立ち尽くす。
気を取り直した一匹が、近くのマンドラゴラにそっと寄り添い、葉をもさもさと左右に振る。それを受けたマンドラゴラは、がくりと萎れた。
「……。どこで仕入れてくるのでしょう?」
そっと視線を逸らした雪乃は、次の工程へと移る。
「煮沸消毒した銀の樽に詰めまーす」
「りょーかーい」
シュボンッと、銀の樽が一瞬、真っ赤に変色した。
煮沸消毒とは、高熱により雑菌を殺すことを目的としている。お湯で煮立たせなくても、高熱を加えることが出来れば問題はない。
大人が悠々と入れそうな大きさの樽である。普通に茹でることは難しいだろう。
だがしかし。
「何かが間違っている気が……。まあ、良しとしましょう」
どこか遠くの世界に意識が飛びそうになった雪乃だが、全てを受け入れることにした。
きちんと銀の樽が冷めていることを確認してから、スライスしたデンゴラコンを底に敷いていく。樽の底が見えなくなったら、適当に千切ったムッセリー草やその他の薬草もまぶし、再びデンゴラコンを並べる。
「わー」
「わー」
「わー」
樽の中に入ったマンドラゴラたちが、綺麗に並べてくれた。
こんなお漬物があったなーと考えながら、雪乃は薬草を千切ってはマンドラゴラたちの上に降らす。
「わー」
「わー」
「わー」
一本のデンゴラコンを詰め終わると、樽の七分ほどまでになっていた。
そこにトモ酒を注ぎ込む。トモ酒は、コンメから作られた味醂のような香りと色を持つ古代酒に、星の種やコクの実などを漬けて作る酒だ。
作ろうと考えていたのだが、流通していると聞いて取寄せてもらった。
最後に油紙で五重に蓋をする。
「これを森の中に埋めて、九日間、放置します」
「りょーかーい」
「わー」
「わー」
「わー」
「マンドラゴラたちは、人間に見られると面倒なので、戻ってくださいね」
「わー?」
「わー」
「わー」
次々と雪乃の枝の間にもぐりこみ、吸収されていった。
魔法を使って浮かした樽を持って、雪乃とノムルはギルドの裏にある、森林へと向かう。
途中で行き交う人が、輝く瞳をノムルに向け、それから雪乃に冷たい視線を送っていた。
事情を知ったとはいえ、気分の良いものではない。
森に着いた二人は、土を掘って樽を埋める。あまり深く埋めると、土の重さで蓋が壊れてしまうため、口の部分は地面より少し高くなるように埋める。
それから腐葉土で優しく蓋を埋めた。
「ついでに根を張っていく? 人払いはしておいたし、もし来てもローブを着たままなら、ばれないよ」
「ぴー助を一匹にして心配なのですが……」
建物を見上げる雪乃に、ノムルは笑う。
「じゃあ、連れて来るよう、ディランに連絡しとくよ」
と、ノムルは空中に向かって指示を出した。
その姿を横目に見ながら、雪乃は根を張る。ノムルが用意してくれた植木鉢も悪くはないのだが、やはり森の土は気持ちいい。
「ふはあー。生き返ります」
「ははは。なんか、温泉にでも浸かってるみたいだね」
「そうですね。ノムルさんも温泉がお好きなんですか?」
異世界の温泉文化に、思わず葉がきらりんっと輝いた。
「ああ。そういえば、ムダイのやつも食いついてたな。プレイヤーは温泉好きが多いわけ?」
「そうですね。血が滾ります」
「……。そう」
ノムルは話を切り上げた。なんだか聞いてはいけない気がしたのだった。
ふと、雪乃は辺りを見回す。雪乃とノムル以外に人影はない。
「ランタを出しても良いでしょうか?」
グレーム森林を出てから、ずっと眠らせたままなのだ。
「ああ、良いんじゃないの?」
「では。……出でよ、ランタ!」
ローブを脱ぎ捨て、ランタを召喚する。
「……。その召喚呪文は必要なの?」
「……」
雪乃はほんのり紅葉した。
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーーーーーっっ!!」
今日も元気に、ランタは奇声を発する。
「おお! 元気そうで何よりです」
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーーーーーっっ!!」
耳を覆ったノムルは、杖を弾いて空気の耳栓をはめる。地面に落ちたローブを拾い、雪乃に着せてやった。
「ありがとうございます」
「どーいたしまし」
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーーーーーっっ!!」
「うるさいよっ!」
会話も何もあったものではない。
「はーい」
素直に返事をした雪乃は、眠っていたぴー助を促がして、寝室に向かう。
ノムルが用意しておいてくれた特大の植木鉢に上ると、根を張って眠りに就いた。
そして翌日。
「ユキノちゃん?!」
「……。おはよーございます」
雪乃の葉先が、わずかに萎れていた。
「寝不足? 今から暗くして眠らせるか?! ごめんよ、ユキノちゃんの眠りを妨げた不届き者は、後できっちりお仕置きしとくからね?」
「いえ、しなくていいです」
ノムルはぷちパニックに陥ったのだった。
そんなノムルをなんとか宥めすかし、身支度を終わらせると、いよいよ調合室へと向かう。
今日はお酒も使うので、ぴー助はお留守番だ。
「ぴー?!」
怒っていたが、しっかり説得して、部屋に待機させた。
帰ってきたときに暴れていなければ良いのだがと心配になる雪乃だが、これも訓練の一つと心を鬼にする。
旅を続ける以上、飛竜をつれて行けない場所も出てくるだろう。少しずつ、一匹で留守番することにも、慣らしていかなければならない。
「では、始めます。準備はいいですねー?」
「はーい」
長閑な雰囲気で、薬作りは始まる。調合台の上には、事前に頼んでおいた器具が揃っていた。
「まずはデンゴラコンを、五ミリ幅の輪切りにします」
「りょうかーい」
ノムルよりも大きなデンゴラコンを、マグロ包丁のような大きな包丁がスライスしていく。
「わー」
「わー」
「わー」
なぜか自主的に出てきたマンドラゴラたちが、包丁の両端にぶら下がって、シーソーのように揺れていた。
直径が五十センチはありそうなデンゴラコンだ。薄くスライスするのは難しそうな作業であるが、マンドラゴラたちは綺麗にスライスしていく。
「あはははー。働き者だねー」
「わー」
「でもさあ」
「わー」
「魔法で一瞬なんだけど?」
「わー?」
すぱぱぱんっと、デンゴラコンは一瞬で、綺麗にスライスされた。
マンドラゴラたちは、呆然と立ち尽くす。
気を取り直した一匹が、近くのマンドラゴラにそっと寄り添い、葉をもさもさと左右に振る。それを受けたマンドラゴラは、がくりと萎れた。
「……。どこで仕入れてくるのでしょう?」
そっと視線を逸らした雪乃は、次の工程へと移る。
「煮沸消毒した銀の樽に詰めまーす」
「りょーかーい」
シュボンッと、銀の樽が一瞬、真っ赤に変色した。
煮沸消毒とは、高熱により雑菌を殺すことを目的としている。お湯で煮立たせなくても、高熱を加えることが出来れば問題はない。
大人が悠々と入れそうな大きさの樽である。普通に茹でることは難しいだろう。
だがしかし。
「何かが間違っている気が……。まあ、良しとしましょう」
どこか遠くの世界に意識が飛びそうになった雪乃だが、全てを受け入れることにした。
きちんと銀の樽が冷めていることを確認してから、スライスしたデンゴラコンを底に敷いていく。樽の底が見えなくなったら、適当に千切ったムッセリー草やその他の薬草もまぶし、再びデンゴラコンを並べる。
「わー」
「わー」
「わー」
樽の中に入ったマンドラゴラたちが、綺麗に並べてくれた。
こんなお漬物があったなーと考えながら、雪乃は薬草を千切ってはマンドラゴラたちの上に降らす。
「わー」
「わー」
「わー」
一本のデンゴラコンを詰め終わると、樽の七分ほどまでになっていた。
そこにトモ酒を注ぎ込む。トモ酒は、コンメから作られた味醂のような香りと色を持つ古代酒に、星の種やコクの実などを漬けて作る酒だ。
作ろうと考えていたのだが、流通していると聞いて取寄せてもらった。
最後に油紙で五重に蓋をする。
「これを森の中に埋めて、九日間、放置します」
「りょーかーい」
「わー」
「わー」
「わー」
「マンドラゴラたちは、人間に見られると面倒なので、戻ってくださいね」
「わー?」
「わー」
「わー」
次々と雪乃の枝の間にもぐりこみ、吸収されていった。
魔法を使って浮かした樽を持って、雪乃とノムルはギルドの裏にある、森林へと向かう。
途中で行き交う人が、輝く瞳をノムルに向け、それから雪乃に冷たい視線を送っていた。
事情を知ったとはいえ、気分の良いものではない。
森に着いた二人は、土を掘って樽を埋める。あまり深く埋めると、土の重さで蓋が壊れてしまうため、口の部分は地面より少し高くなるように埋める。
それから腐葉土で優しく蓋を埋めた。
「ついでに根を張っていく? 人払いはしておいたし、もし来てもローブを着たままなら、ばれないよ」
「ぴー助を一匹にして心配なのですが……」
建物を見上げる雪乃に、ノムルは笑う。
「じゃあ、連れて来るよう、ディランに連絡しとくよ」
と、ノムルは空中に向かって指示を出した。
その姿を横目に見ながら、雪乃は根を張る。ノムルが用意してくれた植木鉢も悪くはないのだが、やはり森の土は気持ちいい。
「ふはあー。生き返ります」
「ははは。なんか、温泉にでも浸かってるみたいだね」
「そうですね。ノムルさんも温泉がお好きなんですか?」
異世界の温泉文化に、思わず葉がきらりんっと輝いた。
「ああ。そういえば、ムダイのやつも食いついてたな。プレイヤーは温泉好きが多いわけ?」
「そうですね。血が滾ります」
「……。そう」
ノムルは話を切り上げた。なんだか聞いてはいけない気がしたのだった。
ふと、雪乃は辺りを見回す。雪乃とノムル以外に人影はない。
「ランタを出しても良いでしょうか?」
グレーム森林を出てから、ずっと眠らせたままなのだ。
「ああ、良いんじゃないの?」
「では。……出でよ、ランタ!」
ローブを脱ぎ捨て、ランタを召喚する。
「……。その召喚呪文は必要なの?」
「……」
雪乃はほんのり紅葉した。
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーーーーーっっ!!」
今日も元気に、ランタは奇声を発する。
「おお! 元気そうで何よりです」
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーーーーーっっ!!」
耳を覆ったノムルは、杖を弾いて空気の耳栓をはめる。地面に落ちたローブを拾い、雪乃に着せてやった。
「ありがとうございます」
「どーいたしまし」
「んめ゛え゛え゛え゛え゛ええええーーーーーっっ!!」
「うるさいよっ!」
会話も何もあったものではない。
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