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魔王の遺跡編
224.何故お前は
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無機質な声は、苛立つように声を低める。
『どういうことだ? 生まれたときから理由もなく憎まれ、虐げられ続けた魂を選んだはずだ。そしてその魂に魔物の器を与え、人間への恐怖と憎しみを増加させた。それなのに、何故お前は憎悪に染まらぬ?』
「え?」
雪乃は顔を上げる。その途端、
「ふにゃあああああーー?!」
タールの高波に、ざっぱーんと押し流された。
樹人の子供は、タールの海にぷかぷか浮かぶ。今度は沈まないようだ。
「ええーっと、これはどういう状況なのでしょうか? なんだかとても嫌な夢を見ていたような? というか」
と、雪乃は視線を左右に振る。真っ黒に染まる、タールの海が視界に映った。
「これはとても体に悪そうなのですが、樹人にはどうなのでしょう?」
背浮きの状態で、雪乃は溺れないように注意しながら、周囲を見回す。陸も島も岩場も無いようだ。見渡す限りの黒い海。
泳いで行こうにも、どちらへ向かえば良いのかわからない。下手に動けば更に陸から遠ざかってしまうだろう。陸があるのかは、はなはだ疑問だが。
「下手に体力を使うより、温存すべきですね。どうせそのうち、ノムルさんが見つけてくれるでしょう」
そう結論付けた雪乃は、そのままぷかぷかと浮かんでいることにした。
空は紅く染まっている。夕焼けというには、あまりに鮮やかでおぞましい。大火の夜のようだ。
「うん? 大火?」
雪乃の葉裏が、じとりと湿る。すでに濡れているのも同じなので、実際には湿るという感覚は無いが。
「これ、黒いんですけど、石油系ではありませんよね?」
思わず、すんすんと辺りのにおいを嗅いだ。本物の石油ならば改めて確かめるまでもなく、強いにおいで頭痛や吐き気がするであろうほどの量なのだが。
「違うようです。よかったです。石油を吸った樹人など、軽い火花で一巻の終わりです」
自分で言っておきながら、雪乃はふるふると震えだす。そのせいで、タールの海にわずかな波が生じた。
重い液体に打ち付けられ、雪乃の葉が一枚、抜け落ちる。
黒い海に浮かぶ薄緑色の小さな葉は、揺れながら流れていった。その上に乗る小さな光の玉に、雪乃も誰も、気付きはしない。
謁見の間に辿り着いたカイとムダイは、重厚な扉を開けて中へと入った。
「雪乃!」
玉座に樹人の子供の姿を見つけたカイは、駆け寄る。しかし透明な壁が邪魔をして、近付くことはできなかった。
扉から玉座へと敷かれた紅い毛氈の上を、ムダイはゆっくりと進む。
燃えるような長い赤髪を揺らし、切れ長の緋色の目で正面を見据え、朱色のマントを翻し、真紅の鎧を輝かせて歩むその姿は、まるで皇帝のようだ。いや、勇者候補であったか。
紅い毛氈の上を進む彼は、微妙に同化して透明人間のようにも見える。
「ちょっと離れてくれるかい?」
カイが下がるなり、ムダイは壁に向かって剣を薙いだ。ムダイの手に、びりりと痺れが走る。
「あー、やっぱり無理か。想像はしてたけど」
剣に刃こぼれが無いか確かめると、ムダイは鞘にしまう。
ムダイがこれ以上は動かないと判じたカイは、再び透明な壁の前まで進み出た。
「雪乃! 返事をするんだ!」
壁を叩き、大声で呼びかけるが、玉座に力なく座る子供に反応は無い。
「雪乃!」
なおもカイは呼び続ける。
一方のムダイは、樹人の子供の様子を冷静に観察していた。
力なく座っているが、体の弛緩具合から、意識が無いという訳ではないと分かる。では彼女はどういった状態なのか?
「やっぱ、そういうことだよな? ノムルさんと喧嘩してでも、置いてくるべきだったか?」
腕を組んで動揺も見せないムダイ。彼の口から出てきた言葉を、カイは聞き逃さなかった。
「どういうことだ? ムダイ殿は雪乃に何が起こっているのか、知っているのか?」
怒気を顕わにムダイに詰め寄った。
ムダイは、しまったとばかりに顔をゆがめる。
人間の耳では拾えない小声も、獣人の耳には簡単に拾われてしまうことを失念していた。
しかし一度出した言葉をなかったことにはできない。
肩をすくめたムダイは、やれやれとばかりに口を開く。
「僕と彼女はちょっと特殊な事情があってね。この状況は、予測できる範囲だったんだ。もっとも」
と、ムダイは樹人の子供へと視線を向けた。カイも釣られて樹人の子供を見る。
「彼女の性格や外見から、考えすぎだったかと思っていたんだけど……」
ムダイへは、
『勇者になりますか?』
というカードが届いている。
同じプレイヤーである雪乃にも、同じような内容のカードが届いていることは、察していた。そしてその内容は、人間であるムダイが『勇者』であるならば、魔物である雪乃は、『魔王』であると推測できる。
実際のところ、ムダイはもし自分以外にこの世界に転送された人間がいて、その姿が魔物であったなら、確実に魔王候補であろうと読んでいた。
だが雪乃に会って、その予想が揺らいだ。
魔物である樹人の姿でありながら、戦いよりも人助けを好む、愛らしい樹人。どう考えても、
「ユキノちゃんは?! おとーさんが迎えに来たよ!」
この自称おとーさんの方が、魔王に近い。というより、すでに魔王を名乗っていても、誰も文句は言わないだろう。
「彼女は聖女辺りかもって踏んでたんだけどね」
ノムルを視界に入れると、ムダイは難しい顔になった。
結局ムダイの言っている内容が理解できなかったカイは、眉をひそめた。それでもムダイ同様、ノムルへと注意を向け、気を引き締める。
油断したら巻き込まれかねない。
その予想通り、
「ユキノちゃああーんっ!」
駆け出したノムルは壁にぶち当たるなり、渾身の魔力を込め始めた。
「ちょぉっと、それは」
思わず目を剥いてツッコミかけたムダイより先に、カイは謁見の間から逃避する。ムダイもすぐさま追随した。
廊下に出た二人は、そのまま駆け抜け、脇道に逃げ込む。その直後、謁見の間からあふれ出た閃光と爆風が、廊下を襲い抜けた。
脇道に逸れたカイとムダイにも、容赦なく雷撃と爆風が襲う。
二人は吹き飛ばされ、廊下を転がり、壁にぶつかって止まった。カイの尻尾もムダイの髪も、静電気で毛羽立っている。
『どういうことだ? 生まれたときから理由もなく憎まれ、虐げられ続けた魂を選んだはずだ。そしてその魂に魔物の器を与え、人間への恐怖と憎しみを増加させた。それなのに、何故お前は憎悪に染まらぬ?』
「え?」
雪乃は顔を上げる。その途端、
「ふにゃあああああーー?!」
タールの高波に、ざっぱーんと押し流された。
樹人の子供は、タールの海にぷかぷか浮かぶ。今度は沈まないようだ。
「ええーっと、これはどういう状況なのでしょうか? なんだかとても嫌な夢を見ていたような? というか」
と、雪乃は視線を左右に振る。真っ黒に染まる、タールの海が視界に映った。
「これはとても体に悪そうなのですが、樹人にはどうなのでしょう?」
背浮きの状態で、雪乃は溺れないように注意しながら、周囲を見回す。陸も島も岩場も無いようだ。見渡す限りの黒い海。
泳いで行こうにも、どちらへ向かえば良いのかわからない。下手に動けば更に陸から遠ざかってしまうだろう。陸があるのかは、はなはだ疑問だが。
「下手に体力を使うより、温存すべきですね。どうせそのうち、ノムルさんが見つけてくれるでしょう」
そう結論付けた雪乃は、そのままぷかぷかと浮かんでいることにした。
空は紅く染まっている。夕焼けというには、あまりに鮮やかでおぞましい。大火の夜のようだ。
「うん? 大火?」
雪乃の葉裏が、じとりと湿る。すでに濡れているのも同じなので、実際には湿るという感覚は無いが。
「これ、黒いんですけど、石油系ではありませんよね?」
思わず、すんすんと辺りのにおいを嗅いだ。本物の石油ならば改めて確かめるまでもなく、強いにおいで頭痛や吐き気がするであろうほどの量なのだが。
「違うようです。よかったです。石油を吸った樹人など、軽い火花で一巻の終わりです」
自分で言っておきながら、雪乃はふるふると震えだす。そのせいで、タールの海にわずかな波が生じた。
重い液体に打ち付けられ、雪乃の葉が一枚、抜け落ちる。
黒い海に浮かぶ薄緑色の小さな葉は、揺れながら流れていった。その上に乗る小さな光の玉に、雪乃も誰も、気付きはしない。
謁見の間に辿り着いたカイとムダイは、重厚な扉を開けて中へと入った。
「雪乃!」
玉座に樹人の子供の姿を見つけたカイは、駆け寄る。しかし透明な壁が邪魔をして、近付くことはできなかった。
扉から玉座へと敷かれた紅い毛氈の上を、ムダイはゆっくりと進む。
燃えるような長い赤髪を揺らし、切れ長の緋色の目で正面を見据え、朱色のマントを翻し、真紅の鎧を輝かせて歩むその姿は、まるで皇帝のようだ。いや、勇者候補であったか。
紅い毛氈の上を進む彼は、微妙に同化して透明人間のようにも見える。
「ちょっと離れてくれるかい?」
カイが下がるなり、ムダイは壁に向かって剣を薙いだ。ムダイの手に、びりりと痺れが走る。
「あー、やっぱり無理か。想像はしてたけど」
剣に刃こぼれが無いか確かめると、ムダイは鞘にしまう。
ムダイがこれ以上は動かないと判じたカイは、再び透明な壁の前まで進み出た。
「雪乃! 返事をするんだ!」
壁を叩き、大声で呼びかけるが、玉座に力なく座る子供に反応は無い。
「雪乃!」
なおもカイは呼び続ける。
一方のムダイは、樹人の子供の様子を冷静に観察していた。
力なく座っているが、体の弛緩具合から、意識が無いという訳ではないと分かる。では彼女はどういった状態なのか?
「やっぱ、そういうことだよな? ノムルさんと喧嘩してでも、置いてくるべきだったか?」
腕を組んで動揺も見せないムダイ。彼の口から出てきた言葉を、カイは聞き逃さなかった。
「どういうことだ? ムダイ殿は雪乃に何が起こっているのか、知っているのか?」
怒気を顕わにムダイに詰め寄った。
ムダイは、しまったとばかりに顔をゆがめる。
人間の耳では拾えない小声も、獣人の耳には簡単に拾われてしまうことを失念していた。
しかし一度出した言葉をなかったことにはできない。
肩をすくめたムダイは、やれやれとばかりに口を開く。
「僕と彼女はちょっと特殊な事情があってね。この状況は、予測できる範囲だったんだ。もっとも」
と、ムダイは樹人の子供へと視線を向けた。カイも釣られて樹人の子供を見る。
「彼女の性格や外見から、考えすぎだったかと思っていたんだけど……」
ムダイへは、
『勇者になりますか?』
というカードが届いている。
同じプレイヤーである雪乃にも、同じような内容のカードが届いていることは、察していた。そしてその内容は、人間であるムダイが『勇者』であるならば、魔物である雪乃は、『魔王』であると推測できる。
実際のところ、ムダイはもし自分以外にこの世界に転送された人間がいて、その姿が魔物であったなら、確実に魔王候補であろうと読んでいた。
だが雪乃に会って、その予想が揺らいだ。
魔物である樹人の姿でありながら、戦いよりも人助けを好む、愛らしい樹人。どう考えても、
「ユキノちゃんは?! おとーさんが迎えに来たよ!」
この自称おとーさんの方が、魔王に近い。というより、すでに魔王を名乗っていても、誰も文句は言わないだろう。
「彼女は聖女辺りかもって踏んでたんだけどね」
ノムルを視界に入れると、ムダイは難しい顔になった。
結局ムダイの言っている内容が理解できなかったカイは、眉をひそめた。それでもムダイ同様、ノムルへと注意を向け、気を引き締める。
油断したら巻き込まれかねない。
その予想通り、
「ユキノちゃああーんっ!」
駆け出したノムルは壁にぶち当たるなり、渾身の魔力を込め始めた。
「ちょぉっと、それは」
思わず目を剥いてツッコミかけたムダイより先に、カイは謁見の間から逃避する。ムダイもすぐさま追随した。
廊下に出た二人は、そのまま駆け抜け、脇道に逃げ込む。その直後、謁見の間からあふれ出た閃光と爆風が、廊下を襲い抜けた。
脇道に逸れたカイとムダイにも、容赦なく雷撃と爆風が襲う。
二人は吹き飛ばされ、廊下を転がり、壁にぶつかって止まった。カイの尻尾もムダイの髪も、静電気で毛羽立っている。
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