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ゴリン国編2
232.何を訴えているんだ?!
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「おい、竜殺し、説明しろ! このマンドラゴラは、俺に何を訴えているんだ?!」
「僕が教えてほしいですよ」
男たちの視線は、事情を知っているはずのノムルへと向かう。
「ユキノちゃん……。おとーさんを、見捨てないで……」
湿度が高いどころか、雨まで降らせて濡れそぼる草色のおっさんが一匹。もはや日陰に生えた苔だ。
「駄目だ。使い物にならん」
即座に切り捨てたドインに、ムダイとヒツジーも同意する。
「あの子供に聞くのが一番だが、こいつがまともになるまで近付けない方が良いだろう。こいつにまともな時なんて、あるのか知らんが」
ノムルの腕の中で、ぐったりとしていた小さな子供の姿を思い出し、男たちは表情を苦くしかめた。
相手が最強の魔法使いとはいえ、マンドラゴラが出てくるまで助けてやれなかったことが悔やまれる。
いや、自分達が助けられなかった少女を、小さな薬草マンドラゴラに救出されたことによる、心のダメージもなんだか凄まじいのだが。
一応、ドインがノムルを注意して雪乃を解放させようとしたのだが、ノムルが本気で拒んだのだ。
互角に喧嘩をしているように見えたドインだが、それはノムルが手加減しているからだった。
本気になったノムルには、ドインもムダイも歯が立たない。
「ナイオネルのやつを呼んで来てくれるか?」
ドインの指示を受けたヒツジーは、一礼すると部屋から消えた。
男達が対応に追われている間も、マンドラゴラはお尻を振ったり、踊ってみせたりと、なぜか可愛い仕草を続けている。中にはセクシーポーズも混じっていた。
「しかしこれ、誰が仕込んだんだ?」
眉根を寄せたドインは、マンドラゴラの主だという少女を思い浮かべる。しかし、あの小さな子供が教えたと考えると、余計に頭痛がしそうなポーズが混じっている。
ドインの呟きを拾ったムダイも、雪乃を連想していた。けれど少ししか知らないとはいえ、ユキノがこんな調教をするとは思えない。
となると……。
二人の男が導き出した答えは、一つだった。
「本当に、こいつに任していて大丈夫なのか?」
「やっぱり僕も同行したほうが良いですよね?」
冷たい視線が、雨降りおじさんに降り注ぐ。
何気にムダイは、ノムルとパーティーを組むために、ドインを取り込もうとしているようだが。
「今度は何があったのかね?!」
勢い良く飛び込んできたナイオネルに、ドインとムダイは視線を向ける。彼らの指は、静かに机上のマンドラゴラを差していた。
「マンドラゴラ、か?」
ナイオネルは不思議そうにマンドラゴラに近づく。
「ああ、マンドラゴラってのは、こういう生態であってるのか?」
尋ねたドインは、机に視線を落として固まった。釣られて視線を向けたムダイとヒツジーも、眉根を寄せる。
つい先ほどまで、セクシーポーズを披露したり、踊っていたはずのマンドラゴラは、横たわって沈黙していた。
「失礼するよ」
マンドラゴラを手に取ったナイオネルは、目をすぼめ、しげしげと観察する。その間、マンドラゴラはぴくりとも動かない。
ドインたちは、あ然としてマンドラゴラを見つめている。
「ずいぶんと質の良いマンドラゴラだな。これもあのドクター・ユキノが?」
「あ、ああ」
頷いたドインだが、聞きたかったのはそこではない。
机の上に戻されたマンドラゴラを、ドインとムダイはじっと見つめる。指で突っついてみるが、動かない。
力尽きたのかと、今度はドインが持ち上げる。
手に握られ、ナイオネルの死角になった位置で、マンドラゴラは右足で左足を掻き始めた。
「おいっ!」
思わずドインは声を荒げる。
驚いたナイオネルが、怪訝な表情でドインを見た。
「こういう動きをするのか? こいつらは?」
そう言って差し出されたマンドラゴラを、ナイオネルは凝視する。じいっと首を曲げて角度を変えながら観察すると、
「動きとは?」
と、不思議そうに眉根を寄せた。
「いや、だから、足を掻いたり、踊ったり、妙なポーズを取ったり」
ドインは言い募るが、ナイオネルはあからさまに眉間の皺を寄せる。
「確かに逃げ惑うマンドラゴラの姿は、踊っているように見えることもある。だがそれはそう見えただけで、踊っているわけじゃあない。乾したマンドラゴラが奇妙に変形していることもあるが、根菜類にはたまにある。別にマンドラゴラに意思があるわけじゃあない」
「いや、そういうレベルじゃなくて」
ナイオネルが言う内容であれば、ドインにとっても常識の範囲だ。しかし手の内にあるマンドラゴラは、ドインの常識を超える行動を取っていた。
「おい、動いてみろ」
ドインはマンドラゴラを指で突っつくが、マンドラゴラはくたりとして動かない。
「おーい」
動く薬草マンドラゴラに話しかける、冒険者ギルド副会長。その姿を見ていたナイオネルの目が、困惑に揺れ、そして細められた。
「もしや花の咲いたマンドラゴラが、この部屋にあるのでは? マンドラゴラの花粉には、媚薬に似た催眠作用がある」
あごに軽く握った拳を添え、考え込むナイオネル。その間に、マンドラゴラはドインの手の上で、寝転がって新聞を読むおっさんのように葉をもたげ、上側の根で下になっている根を掻き出した。
「ほら、見ろ!」
ぱたりと、動かなくなるマンドラゴラ。
ナイオネルの眉間に皺が寄る。気の毒そうな眼差しを、ドインに向けた。
「大丈夫か? ドイン」
「違う! 竜殺しとヒツジーも見ただろう?」
頷くムダイと執事ヒツジー。ナイオネルの眉間の皺は、更に深まる。
「危険だ。早くそのマンドラゴラを手から離し、部屋から出るんだ。どうやらこの部屋には、マンドラゴラの花粉が飛散している様子」
「してねえよ! どう見てもこいつに花は咲いてないだろうが?!」
「はっ! それこそが幻覚なのかも。早く脱出を」
「いや、だから話を聞け! そしてお前は動け!」
揺さぶられるマンドラゴラだが、動く気配は無い。
「なんという気の毒な男だ、ドイン。せっかく融筋病を打破できたというのに、今度はマンドラゴラの花粉にやられるとは」
「いや違うから。というか、……花粉?」
ようやくドインは、目の前にいるマンドラゴラの異常にもう一つ、気付いたのだった。
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おまけ置場更新しました。
ssは魔王様vs戦闘狂です。
「僕が教えてほしいですよ」
男たちの視線は、事情を知っているはずのノムルへと向かう。
「ユキノちゃん……。おとーさんを、見捨てないで……」
湿度が高いどころか、雨まで降らせて濡れそぼる草色のおっさんが一匹。もはや日陰に生えた苔だ。
「駄目だ。使い物にならん」
即座に切り捨てたドインに、ムダイとヒツジーも同意する。
「あの子供に聞くのが一番だが、こいつがまともになるまで近付けない方が良いだろう。こいつにまともな時なんて、あるのか知らんが」
ノムルの腕の中で、ぐったりとしていた小さな子供の姿を思い出し、男たちは表情を苦くしかめた。
相手が最強の魔法使いとはいえ、マンドラゴラが出てくるまで助けてやれなかったことが悔やまれる。
いや、自分達が助けられなかった少女を、小さな薬草マンドラゴラに救出されたことによる、心のダメージもなんだか凄まじいのだが。
一応、ドインがノムルを注意して雪乃を解放させようとしたのだが、ノムルが本気で拒んだのだ。
互角に喧嘩をしているように見えたドインだが、それはノムルが手加減しているからだった。
本気になったノムルには、ドインもムダイも歯が立たない。
「ナイオネルのやつを呼んで来てくれるか?」
ドインの指示を受けたヒツジーは、一礼すると部屋から消えた。
男達が対応に追われている間も、マンドラゴラはお尻を振ったり、踊ってみせたりと、なぜか可愛い仕草を続けている。中にはセクシーポーズも混じっていた。
「しかしこれ、誰が仕込んだんだ?」
眉根を寄せたドインは、マンドラゴラの主だという少女を思い浮かべる。しかし、あの小さな子供が教えたと考えると、余計に頭痛がしそうなポーズが混じっている。
ドインの呟きを拾ったムダイも、雪乃を連想していた。けれど少ししか知らないとはいえ、ユキノがこんな調教をするとは思えない。
となると……。
二人の男が導き出した答えは、一つだった。
「本当に、こいつに任していて大丈夫なのか?」
「やっぱり僕も同行したほうが良いですよね?」
冷たい視線が、雨降りおじさんに降り注ぐ。
何気にムダイは、ノムルとパーティーを組むために、ドインを取り込もうとしているようだが。
「今度は何があったのかね?!」
勢い良く飛び込んできたナイオネルに、ドインとムダイは視線を向ける。彼らの指は、静かに机上のマンドラゴラを差していた。
「マンドラゴラ、か?」
ナイオネルは不思議そうにマンドラゴラに近づく。
「ああ、マンドラゴラってのは、こういう生態であってるのか?」
尋ねたドインは、机に視線を落として固まった。釣られて視線を向けたムダイとヒツジーも、眉根を寄せる。
つい先ほどまで、セクシーポーズを披露したり、踊っていたはずのマンドラゴラは、横たわって沈黙していた。
「失礼するよ」
マンドラゴラを手に取ったナイオネルは、目をすぼめ、しげしげと観察する。その間、マンドラゴラはぴくりとも動かない。
ドインたちは、あ然としてマンドラゴラを見つめている。
「ずいぶんと質の良いマンドラゴラだな。これもあのドクター・ユキノが?」
「あ、ああ」
頷いたドインだが、聞きたかったのはそこではない。
机の上に戻されたマンドラゴラを、ドインとムダイはじっと見つめる。指で突っついてみるが、動かない。
力尽きたのかと、今度はドインが持ち上げる。
手に握られ、ナイオネルの死角になった位置で、マンドラゴラは右足で左足を掻き始めた。
「おいっ!」
思わずドインは声を荒げる。
驚いたナイオネルが、怪訝な表情でドインを見た。
「こういう動きをするのか? こいつらは?」
そう言って差し出されたマンドラゴラを、ナイオネルは凝視する。じいっと首を曲げて角度を変えながら観察すると、
「動きとは?」
と、不思議そうに眉根を寄せた。
「いや、だから、足を掻いたり、踊ったり、妙なポーズを取ったり」
ドインは言い募るが、ナイオネルはあからさまに眉間の皺を寄せる。
「確かに逃げ惑うマンドラゴラの姿は、踊っているように見えることもある。だがそれはそう見えただけで、踊っているわけじゃあない。乾したマンドラゴラが奇妙に変形していることもあるが、根菜類にはたまにある。別にマンドラゴラに意思があるわけじゃあない」
「いや、そういうレベルじゃなくて」
ナイオネルが言う内容であれば、ドインにとっても常識の範囲だ。しかし手の内にあるマンドラゴラは、ドインの常識を超える行動を取っていた。
「おい、動いてみろ」
ドインはマンドラゴラを指で突っつくが、マンドラゴラはくたりとして動かない。
「おーい」
動く薬草マンドラゴラに話しかける、冒険者ギルド副会長。その姿を見ていたナイオネルの目が、困惑に揺れ、そして細められた。
「もしや花の咲いたマンドラゴラが、この部屋にあるのでは? マンドラゴラの花粉には、媚薬に似た催眠作用がある」
あごに軽く握った拳を添え、考え込むナイオネル。その間に、マンドラゴラはドインの手の上で、寝転がって新聞を読むおっさんのように葉をもたげ、上側の根で下になっている根を掻き出した。
「ほら、見ろ!」
ぱたりと、動かなくなるマンドラゴラ。
ナイオネルの眉間に皺が寄る。気の毒そうな眼差しを、ドインに向けた。
「大丈夫か? ドイン」
「違う! 竜殺しとヒツジーも見ただろう?」
頷くムダイと執事ヒツジー。ナイオネルの眉間の皺は、更に深まる。
「危険だ。早くそのマンドラゴラを手から離し、部屋から出るんだ。どうやらこの部屋には、マンドラゴラの花粉が飛散している様子」
「してねえよ! どう見てもこいつに花は咲いてないだろうが?!」
「はっ! それこそが幻覚なのかも。早く脱出を」
「いや、だから話を聞け! そしてお前は動け!」
揺さぶられるマンドラゴラだが、動く気配は無い。
「なんという気の毒な男だ、ドイン。せっかく融筋病を打破できたというのに、今度はマンドラゴラの花粉にやられるとは」
「いや違うから。というか、……花粉?」
ようやくドインは、目の前にいるマンドラゴラの異常にもう一つ、気付いたのだった。
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