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旅路編
259.魔法はイメージよ?
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マグレーンと行動する時などは、魔法で熾した火で薪を燃やすこともあったが、ムダイが自分で火を熾したことはない。
冒険者になって駆け出しの頃に、ライターのような魔法石を利用して何度か挑戦してみたのだが、巧く薪に火を移すことはできなかった。
日本にいた頃に火を見たのは、化学の実験や夏の花火くらいだろう。
「魔法はイメージよ? 水ならば水に触れたり、口に含んだりして五感に憶えさせるの。だから難易度としては、水、土、風、そして火と上がっていくわ。水や土と、風や火を操る難易度の差は大きいそうよ」
そこまで指摘されて、ようやくムダイは、自分がなぜ魔法を使いこなすことが出来ないのか気付く。
「五感のうち、視覚でしか火を知らないから」
それも本物の火ではなく、映像の火。更に言えば、人の手によって描かれた、偽物の炎だ。
ゲームやアニメで目にしていたから、イメージは完璧だと考えていた。だが全く理解していなかったようだ。
「幻影、か」
自分が出現させた炎の鳥を思い出し、ムダイは太く息を吐いた。
ふっと、ローズマリナは慰めるように微笑む。
「それでもこんな短期間で、あんなにも素晴らしい魔法を使えるようになったのだもの。才能はおありだと思うわ」
素直な賞賛の言葉に、ムダイは仄かな温かみを感じながらも、苦笑を浮かべる。
「いやいや、駄目だろう。ユキノちゃんなんて、初めは魔力の違いも分からなかったのに、一時間足らずで治癒魔法が使えるようになったよ?」
浮かび上がりかけていたムダイは、至高の魔法使いの言葉で一気に沈没した。
「種族の関係かしら? いえ、天才なのかもしれないわね」
ローズマリナも細めた目で遠くを眺めている。
「治癒の魔法は、難易度は低いんですか?」
「初歩的な魔法はね。中級だと貴族階級の人間には使える者も珍しくないけれど、平民で使える人はまずいないわ」
「雪乃ちゃんのレベルは?」
お茶をすすりながら何気なく問うたムダイに対して、ローズマリナは沈黙する。
怪訝に思ったムダイがちらりと視線を向ければ、ローズマリナは視線を落とした。
「聖女と呼ばれても不思議ではないレベルよ。ノムル様の庇護下にあるから、誰も手を出さないでしょうけれど」
なんとなくそんな気がしていたムダイは、それ以上深くは聞かず、冷めたお茶と最後のカンヨーで心を落ち着かせる。
「しかしなんであの子は、そんなに魔法が使えるんだ?」
疑問には思うが、答えを知ると自分の何かが崩壊しそうだったので、ムダイはそっと蓋をしておいた。
「やっぱり機関車の旅は途中下車しながらの、のんびり旅が良いですよね?」
駅の窓口に切符を買いに行ったムダイが、爽やかな笑顔を浮かべている。
雪乃は半目でじとりと見つめた。カイとローズマリナも、少しばかり呆れ眼だ。
ネーデルまで直行する夜行機関車は、日に一度だけ運行されている。
しかし今日の夜行機関車の一等車輌の切符は、早朝に売れたという。次は三日後までネーデル行きの機関車はない。
昨日のうちに購入しておけば、乗車できたのだ。
とはいえ、雪乃たちはムダイを責めているわけではない。
このタイミングで買われてしまうなど、誰にも予想はできなかったのだ。そもそも一等車輌は一両しか付いていないのだから、当日に買えるほうが幸運だろう。
雪乃たちはただ、爽やか笑顔で誤魔化そうという魂胆の見えるムダイに、呆れていただけだった。
「二等車輌を二部屋借りれば良いのではないですか?」
気を取り直して、雪乃が提案する。二等車輌ならば、まだ空きが有ると駅員は言っていた。
「僕たちは良いけど、ローズマリナさんを椅子で眠らせるわけにはいかないよ」
ムダイは紳士的な理由を持って、雪乃の意見に拒否を示す。
「機関車での宿泊は、雪乃にも負担だろう? 夜は一度降りて、休んだほうが良いのではないか?」
カイも別の理由で夜行機関車に難色を示した。
「そうだな。前回のこともあるし」
昨日よりは幾分か復活したノムルだが、今日もあまり元気が無いようだ。とはいえノムル・クラウだ。
「またあんなことがあったら、おとーさんは耐えられないいっ!」
「ふみゃああーっ?! いきなりですか? 油断していました。ふんにゅうーっ!」
ひしっと抱きつかれて、雪乃は慌てて枝を突っ張る。
以前ルモン大帝国を訪れた際、機関車の旅で栄養と水分をしっかり吸収できなかった雪乃は、枯れかけてしまったのだ。
思ったよりも元気そうだと、残りの三人は安心したような不安が戻ってきたような、複雑な表情で見物している。
「じゃあ、次に出る機関車の切符を買ってきますね」
「ちゃんと自然の多い駅で休めるようにしろよ?!」
「はいはい。分かってますって」
肩越しに、ひらひらと手を振って、ムダイは切符売り場へと向かった。
列の最後尾に並んだムダイだが、なぜか次々と客たちが順番を譲っている。あっと言う間に窓口に辿り着いていた。
「さすがはSランク冒険者ね」
「ああ」
感嘆するローズマリナとカイ。
その横では、未だに不毛な争いが繰り広げられていた。
「ふんにゅううーっ! 萎れたノムルさんは心配でしたけど、これはこれで私の身が……ま、負けません、ぐぬぬぬぬうーっ!」
昨夜の慰労はなんだったのだろうかと、ローズマリナは微かに頭痛を覚えた。
ゴリン国から出たことの無いローズマリナはもちろん、ルモンを訪れたことは有るというカイも、蒸気機関車に乗るのは初めてだった。
獣人のカイは、正体が露見しても逃げ場の無い蒸気機関車は危険だということで、乗車は避けていたという。
相変わらずのポーカーフェイスだが、尻尾がぶんぶん揺れていた。
当然のようにムダイが選んだのは、一等車輌だった。
窓にはもちろん、外から見えないようにノムルが魔法を掛ける。
「噂では聞いていたけれど、不思議ね。馬もなく走るのでしょう?」
大きな窓に向かって設置されたソファで出発を待っていたローズマリナは、隣に座る雪乃に声を掛けた。
雪乃を挟んで向こう側にノムルが陣取り、雪乃にぴったりとくっ付いてる。
カイとムダイはソファには座らず、テーブル席に設置された椅子に、向かい合って座っている。
ちなみに一等車輌の定員は四名までとなっているのだが、雪乃は小さいため数に入っていない。
ついでにぴー助も人ではないので数には含まれなかった。
冒険者になって駆け出しの頃に、ライターのような魔法石を利用して何度か挑戦してみたのだが、巧く薪に火を移すことはできなかった。
日本にいた頃に火を見たのは、化学の実験や夏の花火くらいだろう。
「魔法はイメージよ? 水ならば水に触れたり、口に含んだりして五感に憶えさせるの。だから難易度としては、水、土、風、そして火と上がっていくわ。水や土と、風や火を操る難易度の差は大きいそうよ」
そこまで指摘されて、ようやくムダイは、自分がなぜ魔法を使いこなすことが出来ないのか気付く。
「五感のうち、視覚でしか火を知らないから」
それも本物の火ではなく、映像の火。更に言えば、人の手によって描かれた、偽物の炎だ。
ゲームやアニメで目にしていたから、イメージは完璧だと考えていた。だが全く理解していなかったようだ。
「幻影、か」
自分が出現させた炎の鳥を思い出し、ムダイは太く息を吐いた。
ふっと、ローズマリナは慰めるように微笑む。
「それでもこんな短期間で、あんなにも素晴らしい魔法を使えるようになったのだもの。才能はおありだと思うわ」
素直な賞賛の言葉に、ムダイは仄かな温かみを感じながらも、苦笑を浮かべる。
「いやいや、駄目だろう。ユキノちゃんなんて、初めは魔力の違いも分からなかったのに、一時間足らずで治癒魔法が使えるようになったよ?」
浮かび上がりかけていたムダイは、至高の魔法使いの言葉で一気に沈没した。
「種族の関係かしら? いえ、天才なのかもしれないわね」
ローズマリナも細めた目で遠くを眺めている。
「治癒の魔法は、難易度は低いんですか?」
「初歩的な魔法はね。中級だと貴族階級の人間には使える者も珍しくないけれど、平民で使える人はまずいないわ」
「雪乃ちゃんのレベルは?」
お茶をすすりながら何気なく問うたムダイに対して、ローズマリナは沈黙する。
怪訝に思ったムダイがちらりと視線を向ければ、ローズマリナは視線を落とした。
「聖女と呼ばれても不思議ではないレベルよ。ノムル様の庇護下にあるから、誰も手を出さないでしょうけれど」
なんとなくそんな気がしていたムダイは、それ以上深くは聞かず、冷めたお茶と最後のカンヨーで心を落ち着かせる。
「しかしなんであの子は、そんなに魔法が使えるんだ?」
疑問には思うが、答えを知ると自分の何かが崩壊しそうだったので、ムダイはそっと蓋をしておいた。
「やっぱり機関車の旅は途中下車しながらの、のんびり旅が良いですよね?」
駅の窓口に切符を買いに行ったムダイが、爽やかな笑顔を浮かべている。
雪乃は半目でじとりと見つめた。カイとローズマリナも、少しばかり呆れ眼だ。
ネーデルまで直行する夜行機関車は、日に一度だけ運行されている。
しかし今日の夜行機関車の一等車輌の切符は、早朝に売れたという。次は三日後までネーデル行きの機関車はない。
昨日のうちに購入しておけば、乗車できたのだ。
とはいえ、雪乃たちはムダイを責めているわけではない。
このタイミングで買われてしまうなど、誰にも予想はできなかったのだ。そもそも一等車輌は一両しか付いていないのだから、当日に買えるほうが幸運だろう。
雪乃たちはただ、爽やか笑顔で誤魔化そうという魂胆の見えるムダイに、呆れていただけだった。
「二等車輌を二部屋借りれば良いのではないですか?」
気を取り直して、雪乃が提案する。二等車輌ならば、まだ空きが有ると駅員は言っていた。
「僕たちは良いけど、ローズマリナさんを椅子で眠らせるわけにはいかないよ」
ムダイは紳士的な理由を持って、雪乃の意見に拒否を示す。
「機関車での宿泊は、雪乃にも負担だろう? 夜は一度降りて、休んだほうが良いのではないか?」
カイも別の理由で夜行機関車に難色を示した。
「そうだな。前回のこともあるし」
昨日よりは幾分か復活したノムルだが、今日もあまり元気が無いようだ。とはいえノムル・クラウだ。
「またあんなことがあったら、おとーさんは耐えられないいっ!」
「ふみゃああーっ?! いきなりですか? 油断していました。ふんにゅうーっ!」
ひしっと抱きつかれて、雪乃は慌てて枝を突っ張る。
以前ルモン大帝国を訪れた際、機関車の旅で栄養と水分をしっかり吸収できなかった雪乃は、枯れかけてしまったのだ。
思ったよりも元気そうだと、残りの三人は安心したような不安が戻ってきたような、複雑な表情で見物している。
「じゃあ、次に出る機関車の切符を買ってきますね」
「ちゃんと自然の多い駅で休めるようにしろよ?!」
「はいはい。分かってますって」
肩越しに、ひらひらと手を振って、ムダイは切符売り場へと向かった。
列の最後尾に並んだムダイだが、なぜか次々と客たちが順番を譲っている。あっと言う間に窓口に辿り着いていた。
「さすがはSランク冒険者ね」
「ああ」
感嘆するローズマリナとカイ。
その横では、未だに不毛な争いが繰り広げられていた。
「ふんにゅううーっ! 萎れたノムルさんは心配でしたけど、これはこれで私の身が……ま、負けません、ぐぬぬぬぬうーっ!」
昨夜の慰労はなんだったのだろうかと、ローズマリナは微かに頭痛を覚えた。
ゴリン国から出たことの無いローズマリナはもちろん、ルモンを訪れたことは有るというカイも、蒸気機関車に乗るのは初めてだった。
獣人のカイは、正体が露見しても逃げ場の無い蒸気機関車は危険だということで、乗車は避けていたという。
相変わらずのポーカーフェイスだが、尻尾がぶんぶん揺れていた。
当然のようにムダイが選んだのは、一等車輌だった。
窓にはもちろん、外から見えないようにノムルが魔法を掛ける。
「噂では聞いていたけれど、不思議ね。馬もなく走るのでしょう?」
大きな窓に向かって設置されたソファで出発を待っていたローズマリナは、隣に座る雪乃に声を掛けた。
雪乃を挟んで向こう側にノムルが陣取り、雪乃にぴったりとくっ付いてる。
カイとムダイはソファには座らず、テーブル席に設置された椅子に、向かい合って座っている。
ちなみに一等車輌の定員は四名までとなっているのだが、雪乃は小さいため数に入っていない。
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