『種族:樹人』を選んでみたら 異世界に放り出されたけれど何とかやってます

しろ卯

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真相編

426.というわけで情報を

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「そうだね。でも僕が出会った雪乃は、初めから樹人だったよ?」

 「どういうこと?」と聞きたそうな顔が、樹人の王を見つめ、それからムダイへと移った。

「たぶん、『無題』っていう、箱庭みたいな世界を見たんだと思う。僕と雪乃ちゃんは、その『無題』の世界を通してこの世界に来た。『ルモン味』にもたぶん、この世界と通じる道があるんじゃないかと思うけど」

 この世界の人間には異世界の存在自体が信じられないことだったが、ムダイたちの住む世界では複数の異世界が存在し繋がっているようだと、不思議に思いながらも納得しておく。
 そしてよく分からないながらも、マンドラゴラ少年の知識は役に立たないことは理解した。
 頭の中がまとまった人から順番に、ムダイへと視線が戻る。

「一応言っておくけど、あの世界もかなり広いからね? 僕と雪乃ちゃんが暮らしていた国だって、それなりに広いし人が多い。見つけ出すのはまず無理だ」

 ムダイは即座に諸手を挙げて、降参の姿勢を取った。
 けれどそんな言葉で諦めるはずがない。全員の視線はムダイを睨むように見つめたまま動かない。

「あー、とりあえず雪乃ちゃんの過去について、何か聞いていませんか?」

 というわけで情報を集めることにしたのだが、有益な情報など出てくるはずがなかった。なにせ雪乃は異世界から来たことも、人間だったことも隠していたのだから。

「ニホンっていう所に住んでたって言ってた」
「それは目星が付いていました」
「カレーとかナットーとかテンプラとか」
「日本ではどこでも食べられますね」
「魚をほぐすのが得意だった」
「島国ですから。というか、やっぱり年齢詐称していたんじゃ?」

 最も共に行動していたはずのノムルからの情報も、然して役に立たなかった。

「俺が行ければ、匂いで探せるかもしれない」
「いや、広いから。いくらカイ君でも匂いだけじゃ無理だと思う。そもそもあちらの世界では樹人じゃないし」

 否定されたカイは耳を垂れてしょげてしまう。

「特産品などで領地を割り出したりするわね」
「そうですわね。歌や音楽も、領地によって特徴がありますわ」
「尋問では方言などを参考にすることもあります」

 女性二人とナルツから意見が出る。公爵令嬢として育ったローズマリナとフランソワは、貴族たちとの会話をそつなくこなすために各領地の特色を叩き込まれていた。
 三人の話を聞いていたマーちゃんとティンクルベルが立ち上がる。スターベルはノムルの下へ出張中だ。
 大きい人たちの注目の中、マーちゃんとティンクルベルは歌いだす。

「わーわわわーぁ」
「花の歌か。樹人の女の子らしいね。けどそれは世界中で歌われているから、参考にはならないかな」
「わわわわ、わーわわわー」
「ちょっと待って。それ歌ってたの? 雪乃ちゃんが? 色んな意味で駄目でしょ?」

 曲を知らない人々の視線を受け、仕方なくムダイは歌って聞かせる。渋いきこりの歌だ。
 内容を知った人族たちは、一人残らず俯いてぷるぷる震えだす。樹人の子供が歌う歌ではない。というか、聴かせたくない。
 マーちゃんとティンクルベルは、歌を続ける。

「わっわわわーわわー」
「それは君たちが歌っちゃ駄目! なんでその歌を教えたの? 雪乃ちゃん。……いや、気持ちは凄く分かるけど」
「わー」
「え? 君たちはいいの?」

 マンドラゴラからはじとりと面倒くさそうに見上げられ、人族からは怪訝な視線を向けられ、仕方なくムダイは歌う。
 彼らと似たような植物らしきものの歌だ。

「わぁー……」

 歌を披露する前よりも更にひどい視線が、ムダイを突き刺した。
 マグレーンがそっとマーちゃんを持ち上げてムダイから隠すようにした行動が、更にムダイの心をえぐる。

「僕が悪いの?」

 理不尽な視線の暴力に、ムダイはげっそりと力尽きた。
 マンドラゴラたちが色々と歌を披露したわけだが、結局のところ、歌や食べ物で地域を絞ることは難しいとムダイに説明され、一から考え直すこととなる。

「こんなことになるなら、もう少し聞いておけば良かった」

 後悔先に立たず、こうなると分かっていれば、誰だって聞いていただろう。

「そういえば」

 と厳しい顔で考え込んでいたカイがぽつりとこぼした声に、一斉に注意が向く。何でも良いからヒントがほしいと誰もが縋る。

「雪乃の話を聞いていると、ノムル殿と旅をするようになる前にもノムル殿と会ったことがあるような話をしていたのだが、あれはいつの話なのだ?」
「何言ってるんだ? 俺はユキノちゃんと会ってから、ずっと一緒だった」

 それもどうなんだろうと思いつつも、あえてツッコミは入れずに話を進める。

「でもそうなると、ノムルさんは僕たちの世界に来たことがあるという事になるわけですよね? あるんですか?」
「そんなの……」

 あるわけないと言い返そうとしたノムルは、固まった。

「ムダイ、お前の世界って、どんなところだ?」

 声のトーンが下がったことで、心当たりがあるのだと察した人々は、静かに二人の会話を見守る態勢に入る。

「そうですね。大陸の中ではネーデルが一番近いです。四角く高い建物が立ち並んでいて、機関車に似た乗物も走っています。車は四角いですね。ああ、黒髪の人が多いですよ」

 ムダイの脳裏には、懐かしい故国の姿が浮かぶ。この世界に来て、もう何年が経過しただろう?
 あちらの世界と違い、息がしやすく、自由に生きることが許された。けれど望郷の念は中々消えず、同じ境遇の人間がいないかと探し、帰る方法を見つけようと放浪した。
 思いは断ち切ったはずなのに、じわりと込み上げてくるものがある。

「ヒイヅルにあった緑の門の、色違いがあるか? 赤いやつ」
「すみません、僕はヒイヅルにいっていないので、そもそもそれがどういう形なのか分からないのですが?」
「役に立たないな」
「どーも」

 ノムルからの無茶振りに、ムダイの額に青筋が浮かぶ。
 会話を聞いていたカイは、紙とペンを借りてささっと鳥居を描いて見せた。

「へえ? 名前でもしかしてと思っていたけど、ヒイヅルってそういう文化なんだ。――ええ、ありますよ。その時のことを詳しく教えてください」

 ムダイから確認を取ったノムルは、ツクヨ国の鏡の泉で見た光景を話した。
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