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真相編
425.三度?
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『また貴様か! 聖なる契約の邪魔をする、許されざる者め!』
しわがれた男の声が響く。その場に居た者の中で、その声を知っていたのはただ一人。赤玉に吸い込まれた経験を持つノムルだった。
「お前は誰だ? なんでユキノちゃんを狙った?!」
光を失っていた茶色い瞳に、怒りの火が灯る。
『ユキノ? あの樹人のことか。魔物でありながら聖女に劣らぬ強い魂を持つ稀有な存在。壊れる前に悪意を注ぎきれただろう。だが今はこの男だ! よくも三度も邪魔してくれたな』
「三度?」
『そうだ! 聖女への契約遂行を邪魔し、代用になりそうな女を見つけたと思えば結界に囲い込み、更には我を滅ぼそうなどと、許せぬ。道連れにしてくれる!』
赤い煙は、眉をひそめるナルツを一直線に狙う。
ナルツは剣を持つ手を構えるが、霧を剣で防ぐことは不可能だ。マグレーンの水の障壁も間に合わない。
誰もが諦めかけたその時、ナルツの体が青い光に包まれた。左薬指に嵌めた青の双子石から光がこぼれだし、ナルツを包んだのだ。
『それは壊したはずだ! いったい幾つ持っている?!』
叫び声を上げて、赤い煙は消滅した。青い光が収まると、その指にはまった青い石は、真紅のバラのように真っ赤に染まっていた。
「あれ? この石、見たことある。父さんにもらった守り石だ」
赤玉が消えさったことを確認してから指輪を確認したナルツは、ふとそんなことを言いだした。なんでも母の形見だったとかで、昔は青かったそうだが、
「小さい時に俺が持って遊びに行って戻ってきたら、色が変わっていたって」
ということだ。ちなみにそれはアラージ国の革命の日だったらしく、何かの災いがゴリン国にも迫っていたのかもしれないなと、ナルツ父は少年となったナルツに笑いながら語ったらしい。
どこか鈍感なナルツと、事情を知らないノムル以外は全員、気が付いた。
ローズマリナに注がれるはずだった悪意と魔力を、ナルツが気付かず跳ね除けたのだろうと。そうして行き場を失った悪意は赤玉に戻り、魔力は何故かノムルに入ってしまったのだろう。
だがそれが一度目だとして今回が三度目となると、間にもう一度、赤玉の邪魔をしていたことがあるはずなのだが、
「自称聖女の幽閉も、切っ掛けはナルツだったね」
とのマグレーンの発言に、本人を残して納得したのだった。
「さて、ここからは僕が話さないといけないのかな?」
精霊の話が一通り済み、赤玉も消滅したところで、マンドラゴラ少年が引き受ける。
「さっき話に出てきた人間の住む世界、そこから雪乃は僕が連れてきたんだよ。未来を変えるためにね。でも異世界の魂を連れてくるって大変だから、完全には連れてこられなかった。彼女の命に関わるような出来事に遭遇したり、彼女が心の底から帰りたいと願えば、元の世界に帰ってしまうんだ」
「それじゃあやっぱりもう、ユキノちゃんには会えないのか?」
ノムルの顔が絶望に色を失っていく。
マンドラゴラ少年は、うーんっと首を傾げる。
「僕には無理だけど、方法が無いわけじゃないよ?」
全員が顔を上げて、マンドラゴラ少年を見る。
「方法を! なんでもする」
「俺もなんでもします。雪乃に会わせてください」
鬼気迫る形相で詰め寄るノムルとカイを、精霊ムダイが牽制し、マンドラゴラ少年は体を反らして逃げる。
「もちろん、僕は協力するよ? 僕だって雪乃に会いたいもの」
それから男たちは、一度ルモンに戻ることになった。
ノムルが生きている上に魔力の大半を失っていると知られれば、命を奪われることになるのは目に見えている。そのため彼にはローブを着せマンドラゴラたちの幻覚魔法を掛けた。
いなくなってしまった小さな魔法使いに見えるように。
「思うところはあるだろうが、今は耐えろ。雪乃を取り戻すためだ」
「分かってる」
カイの言葉に、ノムルは視線も向けずに答えた。
勇者の凱旋ということで、ネーデルの町も城も祝宴ムード一色だったが、当事者たちにはそんな喜びの色は一切なかった。
城に戻るなり、迎えに来てくれていたローズマリナとダルクを呼び、アルフレッドに協力を頼んで密談の場を設けた。
とはいえ多忙なアルフレッドは同席できず、変わりにフランソワが加わった。
「――どうりで妙な気配をしていたわけだ」
と、ナルツとローズマリナの後ろから声がする。ノムルにやられたトラウマが残るダルクは、二人の後ろから出ようとしない。
「それで俺に迎えに行けと?」
「そうそう。お兄様ならできるでしょ?」
にっこりと微笑むマンドラゴラ少年は、話をするためにマンドラゴラたちの力を使い、再び樹人の王の姿となっていた。
対するダルクは、苦々しく顔をゆがめている。
「何が不満なのさ? ユキノちゃんを取り戻したくないのか?!」
「俺はどっちでもいい」
「このガキっ!」
憤るノムルに怯えるように、ダルクはローズマリナの後ろに身を強張らせる。
「母上は、アイツが戻ってきたら嬉しいですか?」
ノムルがカイとムダイに取り押さえられたのを見て、ダルクはひょこりと顔を出しローズマリナの顔を覗き込む。
「もちろんよ。だけどダルク君に無理強いする気はないわ」
「無理強いしろー!」
ノムルが叫んでいるが、ローズマリナは微笑みを崩さない。一秒ほど強張っていたが。
じいっと、ダルクはローズマリナを見つめる。しばらくして、
「分かりました」
と微笑んだ。
「でも俺の力だけでは難しいと思いますよ? すでに本体は枯れていますから」
人間に比べれば強大な魔法を使うダルクだが、それでも時空を超えるには制限があるという。
「必要なものを言え。揃える」
歯を剥くノムルに怯えるダルクの手を取り、ローズマリナが優しく撫でて落ち着かせる。しかしノムルがいては話が中々進まないと、最終的に追い出した。
別室に連れて行かれたノムルは、マンドラゴラを通して会話を聞いている。雪乃以外とは話すことはできないと思われていたマンドラゴラだが、ここにきて幻覚を見せれば解決することが明らかとなっていた。
ダルクの話から、雪乃をこの世界に連れ帰るためには、先に雪乃の居場所を特定する必要があることが分かった。
「それなら雪乃を連れてきてくださった樹人の王がご存知のはず」
と、カイはマンドラゴラ少年こと樹人の王を見る。
しわがれた男の声が響く。その場に居た者の中で、その声を知っていたのはただ一人。赤玉に吸い込まれた経験を持つノムルだった。
「お前は誰だ? なんでユキノちゃんを狙った?!」
光を失っていた茶色い瞳に、怒りの火が灯る。
『ユキノ? あの樹人のことか。魔物でありながら聖女に劣らぬ強い魂を持つ稀有な存在。壊れる前に悪意を注ぎきれただろう。だが今はこの男だ! よくも三度も邪魔してくれたな』
「三度?」
『そうだ! 聖女への契約遂行を邪魔し、代用になりそうな女を見つけたと思えば結界に囲い込み、更には我を滅ぼそうなどと、許せぬ。道連れにしてくれる!』
赤い煙は、眉をひそめるナルツを一直線に狙う。
ナルツは剣を持つ手を構えるが、霧を剣で防ぐことは不可能だ。マグレーンの水の障壁も間に合わない。
誰もが諦めかけたその時、ナルツの体が青い光に包まれた。左薬指に嵌めた青の双子石から光がこぼれだし、ナルツを包んだのだ。
『それは壊したはずだ! いったい幾つ持っている?!』
叫び声を上げて、赤い煙は消滅した。青い光が収まると、その指にはまった青い石は、真紅のバラのように真っ赤に染まっていた。
「あれ? この石、見たことある。父さんにもらった守り石だ」
赤玉が消えさったことを確認してから指輪を確認したナルツは、ふとそんなことを言いだした。なんでも母の形見だったとかで、昔は青かったそうだが、
「小さい時に俺が持って遊びに行って戻ってきたら、色が変わっていたって」
ということだ。ちなみにそれはアラージ国の革命の日だったらしく、何かの災いがゴリン国にも迫っていたのかもしれないなと、ナルツ父は少年となったナルツに笑いながら語ったらしい。
どこか鈍感なナルツと、事情を知らないノムル以外は全員、気が付いた。
ローズマリナに注がれるはずだった悪意と魔力を、ナルツが気付かず跳ね除けたのだろうと。そうして行き場を失った悪意は赤玉に戻り、魔力は何故かノムルに入ってしまったのだろう。
だがそれが一度目だとして今回が三度目となると、間にもう一度、赤玉の邪魔をしていたことがあるはずなのだが、
「自称聖女の幽閉も、切っ掛けはナルツだったね」
とのマグレーンの発言に、本人を残して納得したのだった。
「さて、ここからは僕が話さないといけないのかな?」
精霊の話が一通り済み、赤玉も消滅したところで、マンドラゴラ少年が引き受ける。
「さっき話に出てきた人間の住む世界、そこから雪乃は僕が連れてきたんだよ。未来を変えるためにね。でも異世界の魂を連れてくるって大変だから、完全には連れてこられなかった。彼女の命に関わるような出来事に遭遇したり、彼女が心の底から帰りたいと願えば、元の世界に帰ってしまうんだ」
「それじゃあやっぱりもう、ユキノちゃんには会えないのか?」
ノムルの顔が絶望に色を失っていく。
マンドラゴラ少年は、うーんっと首を傾げる。
「僕には無理だけど、方法が無いわけじゃないよ?」
全員が顔を上げて、マンドラゴラ少年を見る。
「方法を! なんでもする」
「俺もなんでもします。雪乃に会わせてください」
鬼気迫る形相で詰め寄るノムルとカイを、精霊ムダイが牽制し、マンドラゴラ少年は体を反らして逃げる。
「もちろん、僕は協力するよ? 僕だって雪乃に会いたいもの」
それから男たちは、一度ルモンに戻ることになった。
ノムルが生きている上に魔力の大半を失っていると知られれば、命を奪われることになるのは目に見えている。そのため彼にはローブを着せマンドラゴラたちの幻覚魔法を掛けた。
いなくなってしまった小さな魔法使いに見えるように。
「思うところはあるだろうが、今は耐えろ。雪乃を取り戻すためだ」
「分かってる」
カイの言葉に、ノムルは視線も向けずに答えた。
勇者の凱旋ということで、ネーデルの町も城も祝宴ムード一色だったが、当事者たちにはそんな喜びの色は一切なかった。
城に戻るなり、迎えに来てくれていたローズマリナとダルクを呼び、アルフレッドに協力を頼んで密談の場を設けた。
とはいえ多忙なアルフレッドは同席できず、変わりにフランソワが加わった。
「――どうりで妙な気配をしていたわけだ」
と、ナルツとローズマリナの後ろから声がする。ノムルにやられたトラウマが残るダルクは、二人の後ろから出ようとしない。
「それで俺に迎えに行けと?」
「そうそう。お兄様ならできるでしょ?」
にっこりと微笑むマンドラゴラ少年は、話をするためにマンドラゴラたちの力を使い、再び樹人の王の姿となっていた。
対するダルクは、苦々しく顔をゆがめている。
「何が不満なのさ? ユキノちゃんを取り戻したくないのか?!」
「俺はどっちでもいい」
「このガキっ!」
憤るノムルに怯えるように、ダルクはローズマリナの後ろに身を強張らせる。
「母上は、アイツが戻ってきたら嬉しいですか?」
ノムルがカイとムダイに取り押さえられたのを見て、ダルクはひょこりと顔を出しローズマリナの顔を覗き込む。
「もちろんよ。だけどダルク君に無理強いする気はないわ」
「無理強いしろー!」
ノムルが叫んでいるが、ローズマリナは微笑みを崩さない。一秒ほど強張っていたが。
じいっと、ダルクはローズマリナを見つめる。しばらくして、
「分かりました」
と微笑んだ。
「でも俺の力だけでは難しいと思いますよ? すでに本体は枯れていますから」
人間に比べれば強大な魔法を使うダルクだが、それでも時空を超えるには制限があるという。
「必要なものを言え。揃える」
歯を剥くノムルに怯えるダルクの手を取り、ローズマリナが優しく撫でて落ち着かせる。しかしノムルがいては話が中々進まないと、最終的に追い出した。
別室に連れて行かれたノムルは、マンドラゴラを通して会話を聞いている。雪乃以外とは話すことはできないと思われていたマンドラゴラだが、ここにきて幻覚を見せれば解決することが明らかとなっていた。
ダルクの話から、雪乃をこの世界に連れ帰るためには、先に雪乃の居場所を特定する必要があることが分かった。
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