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番外編

番外編:とあるエルフの嘆き

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 東の果てにある島国の北側には、エルフの森が広がっている。そこには精霊を生み出す樹人の王が住んでいるという。

「お父様、どうかお願いいたします」

 エルフのラスエルは、樹人の王に懇願していた。

「そもそもそれって精霊たちが選ぶことで、僕がどうこうすることじゃないでしょ?」

 樹人の王は面倒臭そうに答える。
 顔色を悪くしてしょげたラスエルは、恨めしそうに周囲でくつろぐ者たちを見る。

「わー」
「わー?」
「わー」

 エルフの森で自由に遊びくつろぐマンドラゴラたち。

「なぜ? なぜなのです?」

 ラスエルは両手で顔を覆いうなだれる。
 当代樹人の王は、多くの精霊を生み出した。しかしエルフは未だに一人も生まれていない。
 精霊たちが肉体を求めることで、エルフは生まれる。新たな樹人の王から生まれた精霊たちの中にも、肉体を求める者たちはいた。だが誰一人として、エルフとはならなかった。
 精霊たちは、他の体を選んだのだ。

「誇り高きエルフにならず、なぜマンドラゴラなどに?!」
「わー?」
「わー?」
「わー!」

 そう、マンドラゴラという肉体を。

「言葉も喋れぬではありませんか」
「わー?」
「わー!」
「わー!」

 マンドラゴラたちは抗議の声を上げる。

「魔法も使えぬ」
「「「わわわわ~」」」
「幻覚だけではお父様を守れぬわ!」
「「「わー……」」」

 かんしゃくを起こすラスエルを、マンドラゴラたちは面倒臭そうに見上げた。

「仲良くしなよ。マンドラゴラの体も楽しいよ? ラスエルもマンドラゴラになってみれば?」
「お断りします!」

 きゃらきゃらと笑う樹人の王に、ラスエルは今日もこめかみを抑えて大きなため息を吐くのだった。
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