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番外編
とあるマンドラゴラのお話。
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ルモン大帝国帝都の教会には、月に一度、精霊王の眷属がやってきて人々の怪我や病気を治してくれるという。
その日も人間の医者では治せない病や怪我を負った者たちが、列をなしていた。
「はーい。次の方ー」
呼ばれた患者が中に入ると、植木鉢に根を張った樹人が出迎える。初めて訪れた患者は部屋の中を見回して医者を探すが、それらしき姿はない。
「どうしましたか?」
「えっと、母が腰痛で寝たきりになっていまして」
「ほうほう。ではこちらを持って帰って、温めてから患部に貼っておいてください」
青年の前に立つ樹人は、ぷちりと自分の頭からぎざぎざの葉っぱを一枚引っこ抜いて手渡した。
「次の方ー」
訳の分からぬままに部屋を出された青年と入れ違いに、がっちりとした体格の男が入ってきた。
「どうしましたか?」
「ふんっ、魔物が。万病薬を寄越せ!」
懐からナイフを取り出し樹人の医者に襲い掛かろうとした男がぴたりと止まる。彼の首筋には、小さな刃物が突きつけられていた。
「わー?」
普通ならばそんな小さな刃物を恐れる者は少ないだろうが、それは寸分違わず急所に添えられている。
刃物を持つのはマンドラゴラ。男の肩に乗り、冷酷な殺気を注ぐ。
「私はお金儲けに協力する気はないです。おとーさんが本気で怒ってしまうので、諦めて帰ってくださいね。はーい、次の方ー」
マンドラゴラが肩から飛び退いて気が緩んだ男は、その場にがくりと膝を突いた。新しい患者を案内してきた神官が、腰を抜かしている男を引き摺って行った。
「雪乃、終わったか?」
患者の列も途絶え、一息ついていた樹人――雪乃の下に、エルフの青年がやってきた。
「はい。カイさんもお仕事はうまくいきましたか?」
「ああ。獣人と人間との交流は順調だ」
「それは良かったです」
雪乃はエルフの青年カイと微笑みあい、飛竜のぴー助に乗ってヒイヅル国に帰る。
「わーっ!」
「どうした? ノムル殿」
「わーっ!」
不満の声を上げるマンドラゴラに、雪乃とカイは首を傾げながらぴー助の背から下り、家へと入る。
「お帰りー。雪乃」
「ただいまです。いらしていたんですね」
「うん。遊びに来たよー」
「わー」
「わー」
「わー」
留守のはずの家では、樹人の王とマンドラゴラたちが寛いていた。
雪乃の肩から飛び降りたマンドラゴラは、樹人の王に駆け寄ると抗議の声を上げる。
「わーっ!」
「また怒ってるの?」
「わーっ!」
「しかたないだろ? 僕の本体はマンドラゴラを生み出すことに特化しちゃって、エルフは作れなくなっちゃったんだから」
「わーっ!」
マンドラゴラはカイを葉指す。
「獣人の皇子はムダイの体を貰い受けたからね。ラスエルは寿命だし」
「わーっ!」
なおも騒ぐマンドラゴラ。
「魔法? 君は精霊じゃないから、その体じゃ使えないよ。諦めなよ」
「わー……」
「わー」
「わー」
「わー」
萎れるマンドラゴラを慰めるように、たくさんのマンドラゴラたちが取り囲み葉を寄せる。
「わーっ!」
中心にいるマンドラゴラは葉をぶんぶんと振って、マンドラゴラたちを追い払った。
「はいはい、おとーさん。あんまり怒ると血圧が上がりますよ?」
「マンドラゴラに血圧があるのか?」
カイのツッコミに、雪乃は固まった。
了
---------------------------------------
エルフの寿命は千年以上。
マンドラゴラの寿命も……千年物のマンドラゴラ……。
その日も人間の医者では治せない病や怪我を負った者たちが、列をなしていた。
「はーい。次の方ー」
呼ばれた患者が中に入ると、植木鉢に根を張った樹人が出迎える。初めて訪れた患者は部屋の中を見回して医者を探すが、それらしき姿はない。
「どうしましたか?」
「えっと、母が腰痛で寝たきりになっていまして」
「ほうほう。ではこちらを持って帰って、温めてから患部に貼っておいてください」
青年の前に立つ樹人は、ぷちりと自分の頭からぎざぎざの葉っぱを一枚引っこ抜いて手渡した。
「次の方ー」
訳の分からぬままに部屋を出された青年と入れ違いに、がっちりとした体格の男が入ってきた。
「どうしましたか?」
「ふんっ、魔物が。万病薬を寄越せ!」
懐からナイフを取り出し樹人の医者に襲い掛かろうとした男がぴたりと止まる。彼の首筋には、小さな刃物が突きつけられていた。
「わー?」
普通ならばそんな小さな刃物を恐れる者は少ないだろうが、それは寸分違わず急所に添えられている。
刃物を持つのはマンドラゴラ。男の肩に乗り、冷酷な殺気を注ぐ。
「私はお金儲けに協力する気はないです。おとーさんが本気で怒ってしまうので、諦めて帰ってくださいね。はーい、次の方ー」
マンドラゴラが肩から飛び退いて気が緩んだ男は、その場にがくりと膝を突いた。新しい患者を案内してきた神官が、腰を抜かしている男を引き摺って行った。
「雪乃、終わったか?」
患者の列も途絶え、一息ついていた樹人――雪乃の下に、エルフの青年がやってきた。
「はい。カイさんもお仕事はうまくいきましたか?」
「ああ。獣人と人間との交流は順調だ」
「それは良かったです」
雪乃はエルフの青年カイと微笑みあい、飛竜のぴー助に乗ってヒイヅル国に帰る。
「わーっ!」
「どうした? ノムル殿」
「わーっ!」
不満の声を上げるマンドラゴラに、雪乃とカイは首を傾げながらぴー助の背から下り、家へと入る。
「お帰りー。雪乃」
「ただいまです。いらしていたんですね」
「うん。遊びに来たよー」
「わー」
「わー」
「わー」
留守のはずの家では、樹人の王とマンドラゴラたちが寛いていた。
雪乃の肩から飛び降りたマンドラゴラは、樹人の王に駆け寄ると抗議の声を上げる。
「わーっ!」
「また怒ってるの?」
「わーっ!」
「しかたないだろ? 僕の本体はマンドラゴラを生み出すことに特化しちゃって、エルフは作れなくなっちゃったんだから」
「わーっ!」
マンドラゴラはカイを葉指す。
「獣人の皇子はムダイの体を貰い受けたからね。ラスエルは寿命だし」
「わーっ!」
なおも騒ぐマンドラゴラ。
「魔法? 君は精霊じゃないから、その体じゃ使えないよ。諦めなよ」
「わー……」
「わー」
「わー」
「わー」
萎れるマンドラゴラを慰めるように、たくさんのマンドラゴラたちが取り囲み葉を寄せる。
「わーっ!」
中心にいるマンドラゴラは葉をぶんぶんと振って、マンドラゴラたちを追い払った。
「はいはい、おとーさん。あんまり怒ると血圧が上がりますよ?」
「マンドラゴラに血圧があるのか?」
カイのツッコミに、雪乃は固まった。
了
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エルフの寿命は千年以上。
マンドラゴラの寿命も……千年物のマンドラゴラ……。
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