詐欺師たちは愛を語りたい〜成約は恋のあとで〜

みにみ

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出会いと騙し合い

新宿、歩道橋

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新宿。 この街を流れるのは、血液ではない。
光ファイバーの中を駆け巡る膨大なデジタル信号と
アスファルトを叩く数多の靴音
そして――空気に溶け込んだ「孤独」という名の商機だ。

高層ビル群が放つ無機質な光が、雲を低く垂れ込めさせ
夜空を不自然なオレンジ色に染めている。その光の海を見下ろしながら
神宮寺蓮は、冷めた目で眼下の群衆をスキャンしていた。

「……人類史上、最も古く、最も強力なバグ。それが恋愛だ」

蓮は誰に聞かせるでもなく、心の中で呟いた。
 脳内の報酬系を狂わせ、論理的な思考を停止させ、
全財産を捧げさせることすら厭わなくなる狂気。
この「バグ」を意図的に引き起こし、対価として金を回収する。
それこそが、神宮寺蓮の生業――『恋愛商法(ラブ・コン・ゲーム)』の真髄である。

今夜の新宿は、彼にとっての巨大なマーケットだった。 
蓮は、完璧な仕立てのネイビーのスーツを纏い
左手首には数百万円は下らないであろう高級時計を鈍く光らせていた。
表向きの顔は、若きエリートデザイナー。だがその裏では
価値のない、あるいは相場の10倍以上の価格をふっかけた
「投資用ダイヤモンド」を、夢を見る女性たちに売りつけるプロの詐欺師だ。

「……今日は効率が悪いな」

蓮は眉をひそめた。歩道橋の上で立ち止まり、獲物を探す。 
彼のターゲットは「少しだけ満たされていない、自立した女性」だ。
だが、今夜目に映るのは、騒がしい若者グループか
スマホに目を落として死んだ魚のような目をしているサラリーマンばかり。

「投資効率(ROI)が合わない。撤退して明日に備えるべきか……」

超合理主義者の蓮にとって、無駄な時間は損失に等しい。
一円単位の損得を計算する彼の脳が、帰宅の選択肢を選ぼうとしたその時――。

視界の端に、一輪の「枯れそうな花」が入り込んだ。

白く、儚げなロングコート。 今にも消えてしまいそうなほど頼りなげな足取り。
そして、都会の喧騒から切り離されたかのような、寂寥感を漂わせる横顔。

(……ターゲット、ロックオン)

蓮のハンターとしての本能が、鋭く反応した。 
あの弱々しさは、守ってあげたいという保護欲を刺激する。
それと同時に、内側に秘めた「不幸」という重力が、こちらを惹きつけようとしている。

「推定年齢20代前半。身なりは清潔だが、ブランド物で固めていない謙虚さ。
 何よりあの『世界に捨てられたような目』……最高だ。
 あれなら、僕という救済(ダイヤ)を容易に受け入れるだろう」

蓮は口角をわずかに上げた。 完璧な獲物を見つけた高揚感。
それは、最高のビジネスチャンスを手にした時の興奮そのものだった。



一方、その「枯れそうな花」――一ノ瀬ミオは
自分の足元を見つめながら、心の中で激しく毒を吐いていた。

(あーあ、まじで足痛い。このパンプス、安物だからすぐ靴擦れするんだよね。
 早く帰ってジャージに着替えて、発泡酒片手に
 競馬新聞読みたい……。明日の大井、どいつが来るかな……)

表面上は、今にも涙がこぼれ落ちそうな「薄幸の美少女」を完璧に演じているが
その中身は驚くほどにドライだった。ミオの生業は、不運を吸い取ると称した
「奇跡の絵画」を、孤独な富裕層や夢追い人に売りつけること。
原価数千円のプリント画を、言葉巧みに100万円に変える。それが彼女の魔法だ。

(……それにしても、今日の新宿は渋い。カモがいない。
 男はみんなATMに見えるけど、中身が空っぽのATMばっかり。
 あーあ、誰か一気に100万振り込んでくれるような、お人好しのバカいないかな……)

ミオは溜息をつく。だが、その溜息すらも「都会の孤独に耐える少女」の
演出の一部として、道ゆく者の視線を奪う。

その時だった。 前方から、異質な空気感を纏った男が歩いてくるのが見えた。

(……っ! 何あれ、歩く金塊じゃん)

ミオの「金勘定レーダー」が、かつてない強さで反応した。 
オーダーメイドと思われるスーツのライン。手入れの行き届いた革靴。
そして、自信に満ちあふれた歩き方。 何よりあの時計。
パテックか、あるいはオーデマ・ピゲか。
少なくとも数百万単位の余裕が、あの腕一本に凝縮されている。

(顔もいい……。あんなの、女が放っておかないはず。でも、あの自信満々な目。
  あれは『自分の力で全てを手に入れてきた』って思い込んでるタイプだ。
 プライドが高くて、自分が選んだものには惜しみなく金を出す。
 つまり……私の『奇跡の絵画』を、自分の審美眼で選んだ
 特別なコレクションだと錯覚させやすいタイプ!)

ミオは内心でガッツポーズをした。 獲物(カモ)だ。
それも、今年最大のビッグイベントになり得る、極上のカモ。

(決めた。今夜のノルマ、あいつで達成してやる。……よし、スイッチオン)

ミオは一瞬で表情を切り替えた。 瞳に薄く膜を張るような絶望を宿し
わざと足元をふらつかせる。 向こうもこちらを見ている。確信がある。
お互いに吸い寄せられるように、歩道橋の中央へと距離を縮めていく。


新宿の夜風が、二人の間を吹き抜ける。
 蓮は、手にしたカフェラテ
(コンビニの安物だが、容器だけは
 小洒落たカフェのものに見えるよう細工してある)を、あえて雑に持った。

(さあ、まずはフット・イン・ザ・ドアだ。小さな貸しを作り
 そこから一気に心の領域を侵食する。
 このラテを犠牲にして、1000倍のリターンを叩き出す……!)

蓮は、ミオがちょうど死角に入るタイミングで、わざとらしくスマホに目を落とした。

一方のミオも、相手が仕掛けてくるのを察知していた。

(来る……。ぶつかってからが勝負。泣き真似で行くか
 それとも健気な謝罪で行くか……。
 よし、ここは『驚きと、かすかな恐怖』を混ぜた表情で!)

――ドンッ。

二人の肩が、計算された角度で衝突した。
 バシャッ、と軽い音を立てて、蓮のラテが石畳に飛び散る。 
白いミルクの斑点が、蓮のネイビーのズボンと、ミオの真っ白なコートの裾を汚した。

「あっ……!」

ミオは小さく悲鳴を上げ、その場にへたり込んだ。
完璧な転び方だ。膝を擦りむかない程度に、しかし弱々しく。

「……っ、危ないじゃないか」

蓮は少し苛立った声を演じながら、すぐさま表情を「紳士的な心配」へと塗り替えた。
 「あ……すみません、僕も不注意で。……大丈夫ですか? 怪我は?」

彼は跪き、ミオに手を差し伸べる。 ミオは顔を上げ、潤んだ瞳で蓮を見つめた。

「ご、ごめんなさい……。私が、ぼーっとしてたから……。
 お洋服、汚しちゃって……どうしよう……」

声の震え、指先の微かな震動。ミオの演技はアカデミー賞級だった。 
だが、蓮の脳内では別の計算が走っていた。

(よし、食いついた。コートにシミを作ったのはこちらという体だが
 彼女は自分を責めている。この負い目を利用すれば、話を聞かせるのは容易い。
 ズボンの一本くらい、このカモのダイヤモンドへの投資額に比べれば端金だ)

一方でミオも、心の中で舌を出していた。

(よし、跪かせた! この男、予想以上にチョロい。
 イケメン特有の『弱者を守る自分』に酔ってる顔だわ。
 このまま罪悪感を植え付けて、私の寂しさを癒す『運命の人』役に仕立て上げてやる。
 コートのクリーニング代? 100万の絵を売るための広告費としては安すぎるでしょ!)

「いえ、洋服なんていいんです。それより、あなた……ひどく顔色が悪い。何か……悩み事でも? ちょうど今、僕も仕事が一段落したところで。もしよければ、あそこのカフェで少し休みませんか? 汚れを拭くものも借りたいですし」

蓮が、最も信頼感を与えると言われる
「30度の角度の微笑み」を向ける。

ミオは一瞬、躊躇う素振りを見せた。
 「でも……見ず知らずの方に、そんな……。迷惑じゃ……」

「迷惑だなんて。これも何かの縁ですから。
 ……実は、あなたを見かけた時、なんだか放っておけない気がしたんです」

「……え?」

「……自分でも不思議なんです。どこかで会ったことがあるような
 ……そんな、既視感を感じて」

蓮のセリフは、恋愛マニュアルの1ページ目にあるような手垢のついたものだった。
だが、彼のルックスと声質、そして演出されたシチュエーションが
それを「運命の言葉」へと昇華させる。

ミオは心の中で爆笑していた。
 (既視感!? 古っ! 今時そんなナンパ文句、おじさんでも言わないよ! 
 ……あ、でも待てよ。この男、意外と天然? 
 それとも、あまりに自信がありすぎ
 ベタなセリフが通用すると思ってる王道タイプ?)

ミオは恥ずかしそうに俯き、消え入るような声で答えた。

「……実は、私も。……なんだか、懐かしい感じがして。
 ……もしかして、前世とかで、会ってたりしたんでしょうか……?」

(前世!! きたー!! オカルト食いついたー!!) 
ミオは自分のセリフの完璧さに震えた。

蓮は内心で鼻で笑った。 
(前世、か。チョロい。チョロすぎる。
 この手のスピリチュアルに傾倒している女は、一度信じ込ませれば
 財布の紐を自分から解いてくれる。これなら、投資用ダイヤどころか
 グレードを一段階上げた特別セットも売れるかもしれない)

「前世……。ふふ、ロマンチックですね。もしかしたら
 本当にそうかもしれません。僕は神宮寺蓮。……あなたの名前は?」

「……ミオ。一ノ瀬、ミオです」

「ミオさん。素敵な名前だ。さあ、立ち上がれますか?」

蓮の手が、ミオの華奢な手を取る。 互いに触れ合ったその瞬間
二人の脳裏には共通の言葉が浮かんでいた。

――「今日の勝敗:双方完全勝利」


歩道橋のすぐ側にある、照明を落とした落ち着いた雰囲気のカフェ。 
蓮はミオのために最も座り心地の良さそうな
奥のソファ席を選び、温かいハーブティーを注文した。

「落ち着きましたか?」

蓮は、自分のズボンの汚れなど意に介さない様子で、優しくミオに問いかける。

「はい……。ありがとうございます、神宮寺さん。
 ……あ、蓮さん、ってお呼びしてもいいですか?」

ミオが上目遣いで尋ねる。 蓮は満足げに頷いた。 
(名前呼びの段階をショートカットした。親密度の
 上昇速度が予定より20%早い。やはり僕の魅力は完璧だ)

「もちろんです。僕も、ミオ、と呼ばせてもらってもいいかな?」

「はい……嬉しいです」

ミオはハーブティーのカップを両手で包み、香りを吸い込むフリをした。 
(よし、パーソナルスペースは完全に突破した。あとはどれだけ孤独で
 どれだけ救いを求めているかを小出しにしていくだけ。
 ……あ、でもこの男、さっきから時計をチラチラ見てる。
 時間を気にしてるのか、それとも『俺の時計を見ろ』っていうアピール? 
 後者だとしたら、承認欲求の塊ね。そこを突けばいい)

「蓮さん、お仕事は何をされているんですか? 
 そんなに素敵なスーツを着て……きっと、すごい方なんですね」

「デザイナーをしています。主に……そうですね、
 美しさと価値を結びつける仕事を。……でも、成功すればするほど
 何かが足りない気がして。この街で生きていると、本物の輝きを見失いそうになる」

蓮は窓の外を見つめ、遠い目をした。 
(「美しさと価値を結びつける」……我ながら名言だ。
 ダイヤの転売屋をここまで高尚に言い換えるデザイナーは、世界に僕一人だろう)

「わかります……」 ミオが深く共感するように頷く。 
「本物の輝き……。私も、ずっとそれを探している気がします。
 ……私の周りには、悲しい色をしたものばかりが溢れていて」

(「悲しい色」……いいね、このフレーズ。次はここから絵画の話に繋げられる。
 この男なら『本物の美を知る者の義務』とか言えば、100万なんてすぐに出すはず)

「ミオ、君は感受性が豊かすぎるんだ。
この冷たい都会で、その美しさを守るのは大変だっただろう」

蓮が、ミオの手をそっと握った。 ミオの体温が伝わってくる。
蓮はそれを、獲物の脈拍を確認する獣のような冷静さで分析していた。

「……蓮さんに、会えてよかったです。なんだか、本当に不思議。
 ……今日、死んじゃいたいなって思うくらい、嫌なことがあったのに。
 今は、少しだけ……あったかいです」

ミオの目から、一筋の涙が溢れる。 完璧なタイミング。完璧な水量。

蓮はそれを見て、確信した。

(この女は、確実に僕に落ちる。いや、もう落ちている。
 ……成約(クロージング)までの日数は、当初の予定を大幅に短縮できそうだ。
 来週には、ダイヤモンドの契約書にサインさせているだろう)

ミオもまた、心の中で勝利を宣言していた。

(この男、完全に私の虜だわ。……あ、そろそろ終電の心配をするフリして
 連絡先を交換させなきゃ。この『お高い男』から誘わせるのが定石よね。
 ……ふふ、次会う時は、もう一段階グレードの高い『不幸』を
 トッピングしてあげる。楽しみにしてなさい、私のATM!)

「ミオ、よかったら、連絡先を教えてくれないか? 
 君が……その、無事に家に帰れたか心配なんだ。
 ……もしよければ、また近いうちに会いたい」

「……はい、私も。蓮さんと、もっとお話ししたいです」

二人はスマホを取り出した。 蓮は慣れた手つきでQRコードを表示させようとし――。 
ミオは、フリック入力ができないぎこちない手つきで、一文字ずつパスコードを打ち込んだ。

この時、二人はまだ気づいていなかった。

相手もまた、自分と同じ深淵(詐欺師)の住人であることに。
 そして、この「最高のカモ」との出会いが、自分たちの人生という名の盤面を
根底からひっくり返す序章に過ぎないということに。

新宿の夜は更けていく。 二人の詐欺師は、互いの「嘘」を
真実だと信じ込ませた達成感に浸りながら、偽りの愛を語り合い始めた。
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