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反攻への石積み
GHQの影
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1945年11月・GHQ東京本部
東京・第一生命ビルの最上階にあるGHQの司令部。
ここは、日本占領政策を指揮する米軍の中枢だった。
部屋の中央には、大きな木製のデスクが置かれている。
その奥には、壁一面のガラス窓があり、眼下には敗戦後の東京の街並みが広がっていた。
デスクの向かいに座る男が、厳しい表情で書類に目を落とす。
ウィリアム・フェルプス大佐 ——GHQの経済管理部に所属し、
日本の復興支援を統括する立場にあるが、その実態は 反トールマン派の中心人物 の一人であった。
彼は、報告書の一部を指でなぞる。
「白鷺丸……?」
「はい、大佐」
報告を上げたのは、GHQ情報部に所属する少佐だった。
「この船は復興資材を運ぶ名目で航行していましたが、
昨夜の東京湾での動きが不自然でした。港湾監視員の証言では、
到着後すぐに複数の小型船が接近し、積荷を移していたようです」
「それは合法的な荷役作業だったのか?」
少佐は表情を曇らせた。
「……それが、公式な記録には残っていません。
しかし、何者かがGHQ内の輸送管理記録に介入し、
書類上は ‘復興用の建設資材’ として処理されています」
フェルプスは軽く舌打ちした。
「なるほど……」
すでにGHQ内のどこかに、日本軍残党と通じる者がいる。
「監視対象を増やせ。次に白鷺丸が動くとき、徹底的に調べる」
「承知しました、大佐」
まさか、GHQのトップがつながっているとはフェルプスはこの時思いもしなかった
同日・横浜港の倉庫
密輸した物資は、すでに港の倉庫に収められ、慎重に各地へ運ばれ始めていた。
その場に立っていたのは、小沢治三郎と豊田。
「無事に運び込めたようだな」
小沢が低く言うと、豊田が頷いた。
「これで戦力の基盤は整い始めた。あとは、どれだけ早く兵器を組み立てられるかだ」
小沢は倉庫の奥を見つめた。
そこには、密かに集められた兵器部品や航空機のエンジンが並んでいる。
「問題はGHQの目だ」
豊田は表情を曇らせた。
「やつらは確実に動いてくる……
特に、GHQ内の ‘反トールマン派’ の動きが気になる」
「確かに、奴らはトールマンの独裁に反発しているが、
それが我々にとって吉と出るか凶と出るかは分からん」
小沢は静かに言った。
「いずれにせよ、次の密輸作戦までにさらに慎重に動く必要がある」
数日後・横浜港
夜の港に、一人の男が紛れ込んでいた。
彼の名は リチャード・グレゴリー少尉 。
GHQの情報部に所属する密偵であり、フェルプス大佐から直々に白鷺丸の監視を命じられていた。
彼は倉庫の陰に身を潜め、双眼鏡で監視を続けていた。
すると、数名の男たちが倉庫から何かを運び出す姿が見えた。
「……なるほど、何かを隠しているのは間違いないな」
グレゴリーは慎重に後を追い、あるトラックに積み込まれる様子を観察した。
その荷が向かったのは、横浜から少し離れた 廃工場 だった。
グレゴリーはポケットからカメラを取り出し、数枚の写真を撮った。
「これで証拠は揃った……大佐に報告するか」
彼は静かにその場を離れ、GHQの本部へ向かった。
GHQ東京本部
グレゴリー少尉の報告を受けたフェルプス大佐は、写真をじっくりと確認した。
「……これは間違いなく軍事物資だ」
彼はしばらく考えた後、部下たちに指示を出した。
「日本側は慎重に動いている。だが、
次に彼らが輸送を行う際、我々が動けば証拠を押さえられる」
「では、次の白鷺丸の動きを待ちますか?」
フェルプスはゆっくりと頷いた。
「そうだ。しかし、トールマンにはまだ報告するな。
これは我々 ‘反トールマン派’ にとっても重要な機会だ」
彼の目が鋭く光った。
「日本の軍事再興を利用できるか、それとも阻止するか……慎重に動く必要がある」
こうして、GHQ内部でも日本の動きに対する駆け引きが始まったのだった。
東京・第一生命ビルの最上階にあるGHQの司令部。
ここは、日本占領政策を指揮する米軍の中枢だった。
部屋の中央には、大きな木製のデスクが置かれている。
その奥には、壁一面のガラス窓があり、眼下には敗戦後の東京の街並みが広がっていた。
デスクの向かいに座る男が、厳しい表情で書類に目を落とす。
ウィリアム・フェルプス大佐 ——GHQの経済管理部に所属し、
日本の復興支援を統括する立場にあるが、その実態は 反トールマン派の中心人物 の一人であった。
彼は、報告書の一部を指でなぞる。
「白鷺丸……?」
「はい、大佐」
報告を上げたのは、GHQ情報部に所属する少佐だった。
「この船は復興資材を運ぶ名目で航行していましたが、
昨夜の東京湾での動きが不自然でした。港湾監視員の証言では、
到着後すぐに複数の小型船が接近し、積荷を移していたようです」
「それは合法的な荷役作業だったのか?」
少佐は表情を曇らせた。
「……それが、公式な記録には残っていません。
しかし、何者かがGHQ内の輸送管理記録に介入し、
書類上は ‘復興用の建設資材’ として処理されています」
フェルプスは軽く舌打ちした。
「なるほど……」
すでにGHQ内のどこかに、日本軍残党と通じる者がいる。
「監視対象を増やせ。次に白鷺丸が動くとき、徹底的に調べる」
「承知しました、大佐」
まさか、GHQのトップがつながっているとはフェルプスはこの時思いもしなかった
同日・横浜港の倉庫
密輸した物資は、すでに港の倉庫に収められ、慎重に各地へ運ばれ始めていた。
その場に立っていたのは、小沢治三郎と豊田。
「無事に運び込めたようだな」
小沢が低く言うと、豊田が頷いた。
「これで戦力の基盤は整い始めた。あとは、どれだけ早く兵器を組み立てられるかだ」
小沢は倉庫の奥を見つめた。
そこには、密かに集められた兵器部品や航空機のエンジンが並んでいる。
「問題はGHQの目だ」
豊田は表情を曇らせた。
「やつらは確実に動いてくる……
特に、GHQ内の ‘反トールマン派’ の動きが気になる」
「確かに、奴らはトールマンの独裁に反発しているが、
それが我々にとって吉と出るか凶と出るかは分からん」
小沢は静かに言った。
「いずれにせよ、次の密輸作戦までにさらに慎重に動く必要がある」
数日後・横浜港
夜の港に、一人の男が紛れ込んでいた。
彼の名は リチャード・グレゴリー少尉 。
GHQの情報部に所属する密偵であり、フェルプス大佐から直々に白鷺丸の監視を命じられていた。
彼は倉庫の陰に身を潜め、双眼鏡で監視を続けていた。
すると、数名の男たちが倉庫から何かを運び出す姿が見えた。
「……なるほど、何かを隠しているのは間違いないな」
グレゴリーは慎重に後を追い、あるトラックに積み込まれる様子を観察した。
その荷が向かったのは、横浜から少し離れた 廃工場 だった。
グレゴリーはポケットからカメラを取り出し、数枚の写真を撮った。
「これで証拠は揃った……大佐に報告するか」
彼は静かにその場を離れ、GHQの本部へ向かった。
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グレゴリー少尉の報告を受けたフェルプス大佐は、写真をじっくりと確認した。
「……これは間違いなく軍事物資だ」
彼はしばらく考えた後、部下たちに指示を出した。
「日本側は慎重に動いている。だが、
次に彼らが輸送を行う際、我々が動けば証拠を押さえられる」
「では、次の白鷺丸の動きを待ちますか?」
フェルプスはゆっくりと頷いた。
「そうだ。しかし、トールマンにはまだ報告するな。
これは我々 ‘反トールマン派’ にとっても重要な機会だ」
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作家 蔵屋日唱
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