北海道防衛作戦 赤き嵐を吹きとめよ

みにみ

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開戦

旭川防衛線

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1945年8月25日、旭川の街は戦いの準備で息づいていた
第七師団、通称「北鎮師団」の約2万人の兵士は
留萌での敗北から一夜にして旭川に撤退し、新たな防衛線を構築していた
山本健太郎大佐は、市庁舎を改装した指揮所で広げられた北海道の地図を睨んだ
石狩川と忠別川が街を貫き、周囲を大雪山系の山々が囲む旭川は、自然の要塞だった。

「黒田少佐、防衛線の状況を報告せよ。」山本は参謀長に命じた。

黒田が前に進み、敬礼した。
「大佐、主要な橋に爆薬を仕掛け
 対戦車砲と機関銃陣地を配置しました。石狩川沿いの防衛線は
 九七式戦車20両と歩兵2000人で固めています
 東の嵐山に野砲を配備し、進軍路を砲撃可能です。」

山本は頷いた。
「民間人の動向は?」

「避難を拒否した住民が多く、志願して防衛に参加しています
 民兵として訓練し、斥候や補給支援に動員しています。」

「彼らの勇気は貴重だ。だが、無謀な行動は避けさせろ。」

山本は地図に目を戻し、留萌から旭川への進軍路を指でなぞった
ソ連軍は国道12号と239号を進むと予想され
補給線はこれらの道路に依存していた。
「田中大尉、佐藤中尉、ゲリラ戦の準備はどうだ?」

田中が答えた。
「大佐、国道12号沿いの森林地帯に3個中隊を配置
 対戦車地雷と狙撃陣地を設け、補給車団を襲撃します。地元民兵が地形を案内します。」

佐藤が続けた。
「239号では、橋の爆破と待ち伏せを計画
 民間人がソ連の動きを報告し、夜間襲撃を支援します。」

「よし。迅速に動け。敵の補給を断ち、進軍を遅らせろ。」

夕暮れ、旭川の街は戦いの前触れに静まり返った
石狩川の流れが街を二分し、橋の上には兵士が警戒に立つ
民家はバリケードで強化され、窓には機関銃が据えられた
山本は防衛線を視察し、兵士たちに声をかけた。
「諸君、故郷は我々が守る。決して屈するな。」


夜、国道12号の森林地帯で、田中大尉の第3中隊が待ち伏せを準備していた
松の香りが漂う中、兵士たちは木々の陰に身を潜め、対戦車地雷を道路に埋めた
田中は双眼鏡で道を監視し、緊張で汗ばむ手で無線を握った。

「全員、位置につけ。敵の車団が接近中だ。」

遠くでエンジンの唸りが聞こえ、ソ連の補給車団が現れた
ZIS-5トラック10台と歩兵護衛、T-34戦車2両が先頭を進む
田中は息を潜め、タイミングを計った。

「地雷、起爆!」

道路が爆発し、先頭のT-34が履帯を吹き飛ばされて停止
炎と煙が上がり、ソ連兵が混乱に叫ぶ
田中の部隊は九九式軽機関銃で一斉射撃を開始
トラックの運転手が倒れ、荷台の弾薬が爆発。歩兵は反撃したが
暗闇の森に隠れた日本兵を捉えられない。

「狙撃手、将校を狙え!」
田中が命じ、九九式狙撃銃が火を噴いた
ソ連の指揮官が胸を押さえて倒れ、部隊はさらに混乱
田中の爆破班が手榴弾を投げ、燃料トラックが炎上。黒煙が夜空を覆った。

「撤退! 集合地点へ!」
田中は叫び、部隊は森の奥へ消えた
襲撃は10分で終わり、ソ連車団は3台のトラックと数十人の兵士を失った
田中の部隊は2人の負傷者を出しつつ、補給路を寸断した。

同様の襲撃が239号でも展開。佐藤中尉の部隊は橋を爆破し
ソ連の補給トラックを川に転落させた。民兵が夜間にソ連の哨戒を襲い
武器を奪取。旭川の住民は、食料や情報を提供し、ゲリラ戦を支えた。


留萌のソ連軍司令部で、イワン・ペトロフ中将は苛立ちを隠せなかった
机には襲撃された車団の報告書が山積み。補給の遅延が、旭川への進軍を阻んでいた。

「同志大佐、補給線の状況は?」
ペトロフは副官のアレクセーエフに尋ねた。

「中将、過去3日で5つの車団が襲撃され
 弾薬と燃料の20%を失いました。日本軍のゲリラ戦と住民の抵抗が予想以上です。」

ペトロフは眉をひそめた。
「住民だと? 降伏した国の民がこれほど抵抗するとは。」

「はい。民兵が斥候や襲撃に参加し
 情報網を形成しています。夜間には民家から狙撃される事件も。」

ペトロフは地図を叩いた。
「許さん。補給線の護衛を倍増し、偵察機でゲリラを追え。」

さらに、部下の略奪行為が問題を悪化させていた
アレクセーエフが報告した
「一部の部隊が民家から食料や貴重品を奪っています
 住民の反感を買い、抵抗が激化しています。」

ペトロフの顔が赤らんだ。
「我々は赤軍だ、匪賊ではない! 
 略奪者は即刻処罰しろ。見せしめに公開処刑も辞さない。」

その夜、ペトロフは略奪の現場を視察。農家の倉庫で、
若いソ連兵が米袋を奪おうとしていた
ペトロフは自ら拳銃を抜き、兵士を拘束。
「同志、ソ連の名誉を汚したな。」兵士は震え、連行された。

翌朝、略奪者2人が部隊の前で処刑された。
ペトロフは冷たく宣言した。
「規律を乱す者は許さぬ。我々の任務は占領であり、破壊ではない。」

しかし、住民の抵抗は止まなかった。
夜、ソ連の哨戒所が火炎瓶で襲われ、補給トラックが爆破された。
ペトロフは窓から暗い森を見た。
「この地は我々に牙を剥く…だが、必ず制する。」

旭川では、防衛線が完成に近づいていた。
石狩川の橋は爆破準備が整い、対戦車障害物が道路を塞ぐ。
九七式戦車は掩体壕に隠れ、T-34を待ち構えた
嵐山の野砲は射程を調整し、進軍路を睨む。

山本は前線を巡視し、機関銃陣地の兵士に声をかけた。
「諸君、敵は近い。だが、我々には故郷がある。死守しろ。」

兵士は敬礼し、「はい、大佐!」と答えた。
民兵も加わり、老若男女が銃を握る。
ある少年が山本に近づいた。
「大佐様、僕も戦います。旭川を守りたい!」

山本は少年の肩に手を置いた。
「君の心は強い。だが、生きて未来を築け。それが我々の勝利だ。」

夜、旭川は静寂に包まれた。
星空の下、兵士と民間人は息を潜め、ソ連軍の足音を待った。
山本は指揮所で報告書を読み、敵の襲撃を予測した。
「黒田、夜間警戒を強化しろ。敵は闇に紛れてくる。」

「了解しました。」

山本は地図を見上げ、決意を新たにした。「旭川は我々の砦だ。決して渡さぬ。」
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