北海道防衛作戦 赤き嵐を吹きとめよ

みにみ

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開戦

留萌水際防衛戦

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1945年8月24日、午前5時
留萌の海岸は、夜明け前の薄暗い霧に包まれていた
第七師団、通称「北鎮師団」の約2万人の兵力は
ソ連軍の侵攻情報を受け、留萌防衛線に急行していた。
山本健太郎大佐は、前線指揮所の高台から双眼鏡で海を睨んだ
霧の向こうで、ソ連の輸送船が黒い影となって揺れる
エンジンの低いうなり声と、波を切る音が近づいてくる。

「大佐、敵の上陸開始を確認! 第87歩兵軍団、T-34戦車と歩兵です!」通信兵が叫んだ。

山本は無線に指示を飛ばした
「対戦車砲を配置! 九七式戦車は海岸線の掩体壕から出撃! 歩兵は塹壕で待機!」

海岸沿いの防衛線では、第七師団の兵士たちが対戦車砲を据え
九七式中戦車が土砂の掩体壕から動き出した
九七式は47mm砲を備えるが、ソ連のT-34-85の85mm砲に比べ威力は劣る
それでも、2万人の北鎮師団は地形を活かし、敵を足止めする覚悟だった。

ソ連軍の第一波が上陸用舟艇で押し寄せた。
T-34戦車が砂浜に降り立ち、履帯が砂を巻き上げながら前進

「Ураааааааа!!!!!!!!」
歩兵が叫び声を上げ、銃剣を構えて突進してきた。

第七師団の機関銃が火を噴き、ソ連兵が次々と倒れたが、敵の数は圧倒的だった。

戦闘は、留萌の砂浜と周辺の丘陵地帯で展開した
第七師団は約2000人の歩兵、10両の九七式戦車、10基の対戦車砲を投入
対するソ連軍第87歩兵軍団は、約1万人の歩兵、30両のT-34-85、航空支援を伴う圧倒的戦力だった。

戦闘開始時、第七師団の対戦車砲は海岸線の掩体に配置され
T-34の側面を狙った。45mm砲弾はT-34の側面装甲を貫通し
2両を撃破。だが、T-34の85mm砲は長射程で、掩体壕を次々と破壊
九七式戦車は機動力を活かし、ソ連歩兵を攻撃
47mm砲は歩兵に有効だったが、T-34の正面装甲を貫くのは困難だった。

ソ連のYak-9戦闘機が飛来し、機銃掃射と爆撃で第七師団の陣地を攻撃
防空能力の乏しい北鎮師団は、航空攻撃に耐えるしかなかった
戦闘の終盤、第七師団は約150人の死傷者を出し
九七式戦車3両と対戦車砲4基を失った
ソ連軍は歩兵約80人とT-34-85の2両を失ったが、留萌の制圧に成功。

「後退は許さん! 留萌を守れ!」山本は叫んだが

ソ連軍の第二波が上陸。T-34がさらに10両以上加わり
歩兵が機関銃を乱射しながら前進。第七師団は対戦車砲で4両目のT-34を撃破したが
弾薬が尽き始め、数的劣勢が明らかだった。

「大佐、敵の航空支援が接近中! 後退を推奨します!」
小林中佐が叫んだ。

山本は歯を食いしばった。
「撤退だ。旭川で防衛線を再構築する。負傷者を回収しろ!」

第七師団は組織的な後退を開始。九七式戦車が殿(しんがり)を務め
ソ連の追撃を食い止めたが、数十人の兵士が砂浜に倒れた。留萌の防衛線は、2時間で崩壊した。

撤退時、山本は負傷兵の回収を優先。トラックと馬車で兵士を運び
旭川への退路を確保した。ソ連軍は追撃を控え、留萌の占領を固めた。


同じ8月24日、札幌の街は避難民で溢れていた
佐藤美和は、病院から避難民キャンプへ物資を運ぶ任務に就いていた
彼女の白衣は泥と汗で汚れ、背負ったリュックには包帯と消毒液が詰まっていた。

キャンプは札幌郊外の空き地に設営され
数百人の避難民がテントや毛布で身を寄せ合っていた
美和は食料と医薬品を配り、子供たちの額に手を当てて熱を確かめた
「大丈夫、すぐに良くなるよ。」彼女の優しい声に、子供たちは弱々しく微笑んだ。

「美和さん、留萌が攻撃されたって本当ですか?」
老女が震える声で尋ねた。

美和は心臓が締め付けられる思いだった。
「噂は聞きますが、詳しくはわかりません。北鎮師団が守ってくれるはずです。」

正午を過ぎ、空が不気味に静かになった瞬間、遠くで爆音が響いた
美和が空を見上げると、ソ連のIl-2攻撃機が低空で飛来
札幌の目立つ建物である病院に向け、爆弾を投下した
赤レンガの病院が炎と煙に包まれ、窓ガラスが砕け散る
避難民の悲鳴が響き、美和は地面に叩きつけられた。

「皆、伏せて!」美和は叫び
近くの子供を抱きかかえてテントの陰に隠れた。爆撃は数分で止んだが
病院は半壊し、黒煙が空を覆った。美和はキャンプに戻り
負傷者の手当てを始めた。腕に破片が刺さった男性
恐怖で泣き叫ぶ少女。彼女の手は血で染まり、涙がこぼれた。

「美和さん、病院が…」キャンプの管理者が駆け寄った。

「行きます。負傷者を運んでください!」
美和はリュックを背負い直し、炎の中へ向かった
病院の廊下は瓦礫で埋まり、同僚の看護師が倒れていた
彼女は脈を確認し、生きていることを確認すると、担架で運び出した。


留萌の海岸で、ソ連軍第87歩兵軍団は勝利の旗を掲げた。
イワン・ペトロフ中将は、T-34戦車の横で戦況を確認した。
砂浜は血と破壊の痕で覆われ、倒れた日本兵とソ連兵の遺体が散乱していた。

「中将、留萌を制圧しました。敵は旭川方面へ後退。
 日本軍の抵抗は予想以上でした。」
副官のアレクセーエフ大佐が報告した。

ペトロフは眉をひそめた。
「北鎮師団の2万人の兵力か。戦車と対戦車砲の配置も巧妙だった。」

彼は地図を広げ、進軍計画を確認した
留萌を拠点に音威子府を経て札幌へ進む予定だった。
「航空支援を強化しろ。敵のゲリラ戦に備えろ。」

戦場を歩き、負傷したソ連兵に声をかけた。
「同志、よく戦った。ソ連の栄光は我々のものだ。」
だが、若い兵士の死に顔を見ると、東部戦線の記憶がよみがえった
降伏した国への侵攻に、倫理的な疑問が胸を刺す。

「中将、次の命令は?」アレクセーエフが尋ねた。

「留萌を固め、補給線を確保しろ。明朝、進軍を再開する。」
ペトロフは海を見た。霧が晴れ、北海道の荒々しい海岸線が姿を現した。


東京の連合国占領軍司令部では
留萌侵攻の緊急報告が飛び交っていた
ジェームズ・ミラー中尉は、無線室で最新の情報を確認した。
「ソ連軍が留萌に上陸。第七師団が抵抗中だが、後退した模様。」

彼は上司のハリス大佐に報告した。
「大佐、ソ連の侵攻が始まりました
 北鎮師団の2万人が抵抗していますが、持ちこたえられるかは不明です。」

ハリスは顔をしかめた。
「トルーマン大統領はソ連との衝突を避けたいが
 このままでは共産圏が拡大する。情報収集を急げ。」

ミラーは地図を広げ、留萌の位置を確認した。
北海道がソ連の手に落ちれば、アジアの戦後秩序が崩れる
彼は拳を握り、「第七師団、頼むぞ。」と呟いた
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