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第一章 悪魔の科学者
第五話 もう一人の魔獣召喚士
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ウィルの案内で村の中央にある広場にフラム達がやって来た時には、黒山の人だかりが出来ていた。
とても分け入って行けそうもないので、広場に隣接している宿屋にウィルの伝手を使って二階に上がり、広場を望める窓から見下ろした。
「僕を連れて来て良かったでしょう」
責任を感じて少し落ち込んだ様子だったウィルが見せた笑みに、フラムとフリードも少しホッとした。
見下ろした広場に出来ている人だかりは、ドーナツ状になっており、輪の中央には恰幅のいい鼻の下に髭を蓄えた男と、その隣に鎖で繋いだギュームを連れた男が立っている。
ギュームを連れているのが魔獣召喚士だとすると、その隣に居るのがウィルの父親でありバルバゴの村長だと察しがつく。
「みなに集まって貰ったのは他でもない、盗賊団の事だ。村人は一人として殺されてはおらんが、今まで二度も来て沢山の金目の物や食料を持って行かれてしまった。このまま度々来られては、村は終わりだ。しかしもう安心してくれ。ここに居られる魔獣召喚士のラルヴァさんが、盗賊団を退治して下さるからな」
「皆さん、安心して下さい。私が来たからにはもう大丈夫です。必ずや盗賊団を退治して見せましょう」
周りを囲む村人達の割れんばかりの拍手が巻き起こる。
「なあフラム、あの魔獣召喚士どう思う?」
「馴れ馴れしく人の名前を呼ばないでよね」
「おいおい、さっきの事まだ怒ってるのか? たかが━━」
フラムの肘鉄がフリードの鳩尾にクリーンヒットし、フリードは顔をしかめて腹を押さえる。
「たかがですって? あんたにはたかがでも、私には……私には…………」
「まさか、お前あれが━━」
今度は足を踏まれ、フリードは飛び上がる。
「本当にデリカシーもない奴でヤンス」
フラムの肩に乗るパルが溜息を吐く。
「これ以上言ったら、切り刻んでバラバラにしてやる」
冗談とも言えないフラムの怒りに満ちた顔に、フリードは少し後退る。
「分かった、分かった。もう言わないから。それよりどうなんだ、あのうさん臭い魔獣召喚士は? 盗賊団がどれ程のもんかは分からないが、俺の見立てだと盗賊団を退治するどころか追い払うことも出来そうになさそうなんだが」
「それって本当? どうなの、お姉ちゃん」
フラムの怒りはまだ治まってないようだったが、ウィルに聞かれては、一旦矛を収めるしかない。
「そうね。普通の人ならあのギュームは獰猛な魔獣に見えるかもしれないけど、魔獣召喚士にしたら召喚する魔獣としては初歩も初歩の魔獣よ。これ見よがしにギュームを連れてる所からして他に召喚出来る魔獣も知れてるだろうし、だとしたらフリードが言った通り、魔獣を連れた盗賊団をどうこうするなんて、とても無理でしょうね」
「そんな……」
ウィルはがっくりと肩を落とすも、意を決した顔をフラム達に向け、
「お姉ちゃん達、ちょっとここで待ってて」
と言い残し、階段を駆け下りて行った。
フラムとフリードが窓から見下ろす中、宿屋から出たウィルは、群がる人の壁に分け入ろうとするが、跳ね返される。
朝からウィルの姿がないと知っている村人がウィルに気付き、通してやってくれと何とか人垣を割って入り、村長と魔獣召喚士が居る人だかりの中央に躍り出た。
「ウィル!」
直ぐに気付いた村長が慌てて駆け寄って来た。
「一体何処に行って居たんだ? 儂も母さんも心配していたんだぞ。早く家に帰りなさい」
「家にはちゃんと寄って来たよ。ここに来ることもちゃんとお母さんに言ってある」
「そうか、それならいいんだが」
「それより、そこに居る魔獣召喚士より頼りになる魔獣召喚士と剣士の二人を僕が連れて来たんだ」
「お前が? それも二人も」
「うん、あそこにいる二人だよ」
ウィルが指し示す先を追って、宿屋の二階にある窓から広場を見下ろしているフラムとフリードに、その場に居る全て視線が集まる。
「聞き捨てならないな、今の言葉」
ウィルの直ぐ後ろに、ラルヴァが立っていた。
「坊っちゃん、あんな小汚い連中が俺より頼りになるっておっしゃるんですかい?」
「そうさ。だってお姉ちゃんは、あんたが連れてる━━」
ラルヴァの大きな高笑いが、ウィルの言葉を遮る。
村人達の視線がラルヴァに集まる。
「村長━━いや、皆さん。あそこに居る魔獣召喚士らしき小娘の肩にとまっている小さな魔獣と、私が連れているこの魔獣とでは、どちらが強いか一目瞭然でしょう。それに、盗賊団が魔獣を連れているなら、剣士なんか幾ら居ても頼りになんてなる訳がない。違いますか?」
最初は思案に暮れていた村人達も、徐々にラルヴァに賛同する声が増えて行き、全ての村人の目がラルヴァに向けられていた。
「口だけは達者な奴だな。好き勝手な事を言ってくれやがる」
「そうでヤンス。オイラだって腹が空いてなかったら、あいつが連れてるギュームなんか相手にならないでヤンス」
「でも、見た目じゃあ完全に迫力負けしてるわね」
「フラム、それはないでヤンスよ」
「まあまあ、実力じゃあ確かにあんたの方が上よ。ただ、こうなったら私達が何を言っても無駄でしょうね」
フリードも渋い顔で頷くしかなかった。
少しして、沈んだ面持ちのウィルが戻って来た。
「ゴメンなさい。お父さんだけでも分かってもらえたらと思ったんだけど、ダメだった」
「別にいいのよ。こんな事ざらにある事だから」
「でもどうする? 俺は諦めないぜ。どうせ盗賊団が来たら、あいつはボロを出すだろうからな」
「私だって諦めないわよ。あんな奴に任せてたら、魔獣召喚士の名折れだもの」
「本当に?」
沈んでいたウィルの顔に、希望の笑みが戻る。
「ええ、この宿に泊まるから、何かあったら呼びに来て」
「ありがとう」
「おいおい、俺も居るんだぜ」
「フリードさんも、ありがとう」
「何かついでに聞こえる気もするけど、まあいっか」
「それよりフラム、ここに泊まるって決まったなら、早くメシにするでヤンス。お腹が減って死にそうでヤンスよ」
「全くあんたは、だから頼りないって言われるのよ」
「頼りなくてもいいでヤンス。メシ~」
とても分け入って行けそうもないので、広場に隣接している宿屋にウィルの伝手を使って二階に上がり、広場を望める窓から見下ろした。
「僕を連れて来て良かったでしょう」
責任を感じて少し落ち込んだ様子だったウィルが見せた笑みに、フラムとフリードも少しホッとした。
見下ろした広場に出来ている人だかりは、ドーナツ状になっており、輪の中央には恰幅のいい鼻の下に髭を蓄えた男と、その隣に鎖で繋いだギュームを連れた男が立っている。
ギュームを連れているのが魔獣召喚士だとすると、その隣に居るのがウィルの父親でありバルバゴの村長だと察しがつく。
「みなに集まって貰ったのは他でもない、盗賊団の事だ。村人は一人として殺されてはおらんが、今まで二度も来て沢山の金目の物や食料を持って行かれてしまった。このまま度々来られては、村は終わりだ。しかしもう安心してくれ。ここに居られる魔獣召喚士のラルヴァさんが、盗賊団を退治して下さるからな」
「皆さん、安心して下さい。私が来たからにはもう大丈夫です。必ずや盗賊団を退治して見せましょう」
周りを囲む村人達の割れんばかりの拍手が巻き起こる。
「なあフラム、あの魔獣召喚士どう思う?」
「馴れ馴れしく人の名前を呼ばないでよね」
「おいおい、さっきの事まだ怒ってるのか? たかが━━」
フラムの肘鉄がフリードの鳩尾にクリーンヒットし、フリードは顔をしかめて腹を押さえる。
「たかがですって? あんたにはたかがでも、私には……私には…………」
「まさか、お前あれが━━」
今度は足を踏まれ、フリードは飛び上がる。
「本当にデリカシーもない奴でヤンス」
フラムの肩に乗るパルが溜息を吐く。
「これ以上言ったら、切り刻んでバラバラにしてやる」
冗談とも言えないフラムの怒りに満ちた顔に、フリードは少し後退る。
「分かった、分かった。もう言わないから。それよりどうなんだ、あのうさん臭い魔獣召喚士は? 盗賊団がどれ程のもんかは分からないが、俺の見立てだと盗賊団を退治するどころか追い払うことも出来そうになさそうなんだが」
「それって本当? どうなの、お姉ちゃん」
フラムの怒りはまだ治まってないようだったが、ウィルに聞かれては、一旦矛を収めるしかない。
「そうね。普通の人ならあのギュームは獰猛な魔獣に見えるかもしれないけど、魔獣召喚士にしたら召喚する魔獣としては初歩も初歩の魔獣よ。これ見よがしにギュームを連れてる所からして他に召喚出来る魔獣も知れてるだろうし、だとしたらフリードが言った通り、魔獣を連れた盗賊団をどうこうするなんて、とても無理でしょうね」
「そんな……」
ウィルはがっくりと肩を落とすも、意を決した顔をフラム達に向け、
「お姉ちゃん達、ちょっとここで待ってて」
と言い残し、階段を駆け下りて行った。
フラムとフリードが窓から見下ろす中、宿屋から出たウィルは、群がる人の壁に分け入ろうとするが、跳ね返される。
朝からウィルの姿がないと知っている村人がウィルに気付き、通してやってくれと何とか人垣を割って入り、村長と魔獣召喚士が居る人だかりの中央に躍り出た。
「ウィル!」
直ぐに気付いた村長が慌てて駆け寄って来た。
「一体何処に行って居たんだ? 儂も母さんも心配していたんだぞ。早く家に帰りなさい」
「家にはちゃんと寄って来たよ。ここに来ることもちゃんとお母さんに言ってある」
「そうか、それならいいんだが」
「それより、そこに居る魔獣召喚士より頼りになる魔獣召喚士と剣士の二人を僕が連れて来たんだ」
「お前が? それも二人も」
「うん、あそこにいる二人だよ」
ウィルが指し示す先を追って、宿屋の二階にある窓から広場を見下ろしているフラムとフリードに、その場に居る全て視線が集まる。
「聞き捨てならないな、今の言葉」
ウィルの直ぐ後ろに、ラルヴァが立っていた。
「坊っちゃん、あんな小汚い連中が俺より頼りになるっておっしゃるんですかい?」
「そうさ。だってお姉ちゃんは、あんたが連れてる━━」
ラルヴァの大きな高笑いが、ウィルの言葉を遮る。
村人達の視線がラルヴァに集まる。
「村長━━いや、皆さん。あそこに居る魔獣召喚士らしき小娘の肩にとまっている小さな魔獣と、私が連れているこの魔獣とでは、どちらが強いか一目瞭然でしょう。それに、盗賊団が魔獣を連れているなら、剣士なんか幾ら居ても頼りになんてなる訳がない。違いますか?」
最初は思案に暮れていた村人達も、徐々にラルヴァに賛同する声が増えて行き、全ての村人の目がラルヴァに向けられていた。
「口だけは達者な奴だな。好き勝手な事を言ってくれやがる」
「そうでヤンス。オイラだって腹が空いてなかったら、あいつが連れてるギュームなんか相手にならないでヤンス」
「でも、見た目じゃあ完全に迫力負けしてるわね」
「フラム、それはないでヤンスよ」
「まあまあ、実力じゃあ確かにあんたの方が上よ。ただ、こうなったら私達が何を言っても無駄でしょうね」
フリードも渋い顔で頷くしかなかった。
少しして、沈んだ面持ちのウィルが戻って来た。
「ゴメンなさい。お父さんだけでも分かってもらえたらと思ったんだけど、ダメだった」
「別にいいのよ。こんな事ざらにある事だから」
「でもどうする? 俺は諦めないぜ。どうせ盗賊団が来たら、あいつはボロを出すだろうからな」
「私だって諦めないわよ。あんな奴に任せてたら、魔獣召喚士の名折れだもの」
「本当に?」
沈んでいたウィルの顔に、希望の笑みが戻る。
「ええ、この宿に泊まるから、何かあったら呼びに来て」
「ありがとう」
「おいおい、俺も居るんだぜ」
「フリードさんも、ありがとう」
「何かついでに聞こえる気もするけど、まあいっか」
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