215 / 266
番外編 公開模擬試合
8
しおりを挟む
「さあ、皆さん召し上がってください」
広々と敷き詰めた厚手の敷物の上に気合いを入れて作ったお弁当を広げる。
「これは何だ?」
火の魔石で温めた焼いたパテを挟んだバンズを見てルイスレーンが訊ねる。
「それはハンバーガーというものです」
「どうやって食べる?」
バーガーを手に取り、上から下から横からと眺めるルイスレーンに、バーガーを掴んだ風にして説明する。
「これはこう、挟んだままかぶり付くのです。こうやって大口を開けてパンと肉、野菜を一度に」
目一杯大きな口で噛む仕草をすると、ぱちくりと瞬きをして「何だって?」と訊き返された。
「だから、こうやってあ~んって口を開けて……」
「ふ……ははは」
もう一度食べる真似をすると、いきなりルイスレーンが笑いだし、周りにいた人たちがびっくりした。
「どうしたんですか?」
「いや……すまない……そなたの仕草があまりに可愛らしくて……くくく……そうか、そうやって食べるのだな」
「……え、か、からかったんですか?」
考えてみれば大口を開けて食べることなどこれまでなかった。真っ赤になった私を尻目にルイスレーンがかぶりつく。
「うん、うまい……肉は味があって野菜は歯応えがある。ソースは少し辛味が効いているな」
「良かった……」
目を輝かせてムシャムシャと食べてくれるのを見て、嬉しい気持ちになる。
「あ、ソースが……」
口の端にバーガーのソースが付いているのを見つけて親指で拭うと、その手を掴まれペロリと舐められた。
「うまい……」
「もう……ルイスレーンったら……」
「あの、奥様……」
遠慮がちにスティーブに声をかけられ、はっとして振り向くと、困った顔の人たちがこちらを向いていた。
「あ………ご、ごめんなさい……」
美味しいと言われてすっかり舞い上がり、大勢の人たちに囲まれているのを忘れていた。
「み、皆さんも……たくさん食べてください」
赤くなって俯いて言う。
「は、はい……」
そう言われても皆、なかなか手を付けようとしない。
「これは何だ?」
一人であっと言う間にバーガーを食べきったルイスレーンがピンチョスを手に取る。
「あ、それはローストビーフと野菜を串に刺したものなんですが……」
ぱくりとひと口で頬張る。
「これは……ワインが欲しくなるな」
「スティーブ、そこにあるワインを取って」
慌ててワインを注ぎルイスレーンに渡す。
美味しそうに食べていくルイスレーンを見て、周りからごくりと唾を飲み込む音が聞こえる。
「お前たちも食べなさい。どうせ私一人では食べきれない量だ」
「それでは……」
ルイスレーンに言われ、アッシュハルクさんとギオーヴさんが顔を見合せ、バーガーを手に取る。
「では私はこれを」
スティーブがピタパンに手を伸ばす。
「ん…これは」
「美味しい」
「ほんとに……こっちは鶏肉ですか?」
ピタパンにはサラダチキンと野菜を入れて、焼いたチキンとゆで卵を挟んだものと二種類作った。
「では、我々も……」
恐る恐る皆が手を出していき、ひとくち食べて顔を見合せた後は、無言で食べ進める。
さすが体力勝負の兵士さんたちだけあって、肉を使った食べ物が一番人気だった。
女性には軽く摘まんで食べられるピンチョスが人気で、短時間の間に用意した料理はあっと言う間に無くなった。
ご馳走さまでしたと皆が引き上げ、私とルイスレーン、ギオーヴさんとスティーブ、それからカインだけになる。
ルイスレーンはカリカリに焼いたチーズを食べながら、ワインを片手にとてもリラックスしている。
「今日はありがとう」
地面に突いている私の手に手を重ねながら、ルイスレーンが耳元で囁く。
「こんなに楽しかったことはない」
「私こそ……色々なルイスレーンのことを知ることが出来て楽しかった。それに……ありがとうございます。矢射ち……あんなことをしてもらえるとは思いませんでした。随分……練習されたのですね……」
つうっと彼の指に出来たタコに触れる。
「ずっと書類仕事ばかりで少々なまっていたからな……ちょうど良い機会だった」
「私の……せいですよね。ずっと看病してくれていたから……」
「それは違う……君のせいとか誰のせいでもない。私が傍に居たかった。それだけだ。私が好きなことを自分の気が済むまでやっただけだ」
「でも……」
「私が、君のためにすることに気を遣ったり、気に病む必要はない。むしろいつも何をしたら喜ぶか君のために何ができるか、そればかり考えている。全ては君を思ってすることだ。当たり前のことと受け入れて欲しい。だが、もしそれが重荷だったり嫌なら正直に言ってくれ。態度を改めるから」
いつの間にか皆が私たちから距離を置いて離れていた。こうやって皆が気遣ってくれることに幸せを実感する。
それは全て目の前にいるこの人が与えてくれる。
「私……ちっとも嫌ではありません……愛する人にこんなに思ってもらえて……私のことを心配してくれる人がたくさんいて……とっても幸せです」
ワインを入れていた杯を傍らに置き、その手でルイスレーンが私の頬に触れる。
「なら、素直にその気持ちを皆に……私に表して、いつも笑っていてくれ」
広々と敷き詰めた厚手の敷物の上に気合いを入れて作ったお弁当を広げる。
「これは何だ?」
火の魔石で温めた焼いたパテを挟んだバンズを見てルイスレーンが訊ねる。
「それはハンバーガーというものです」
「どうやって食べる?」
バーガーを手に取り、上から下から横からと眺めるルイスレーンに、バーガーを掴んだ風にして説明する。
「これはこう、挟んだままかぶり付くのです。こうやって大口を開けてパンと肉、野菜を一度に」
目一杯大きな口で噛む仕草をすると、ぱちくりと瞬きをして「何だって?」と訊き返された。
「だから、こうやってあ~んって口を開けて……」
「ふ……ははは」
もう一度食べる真似をすると、いきなりルイスレーンが笑いだし、周りにいた人たちがびっくりした。
「どうしたんですか?」
「いや……すまない……そなたの仕草があまりに可愛らしくて……くくく……そうか、そうやって食べるのだな」
「……え、か、からかったんですか?」
考えてみれば大口を開けて食べることなどこれまでなかった。真っ赤になった私を尻目にルイスレーンがかぶりつく。
「うん、うまい……肉は味があって野菜は歯応えがある。ソースは少し辛味が効いているな」
「良かった……」
目を輝かせてムシャムシャと食べてくれるのを見て、嬉しい気持ちになる。
「あ、ソースが……」
口の端にバーガーのソースが付いているのを見つけて親指で拭うと、その手を掴まれペロリと舐められた。
「うまい……」
「もう……ルイスレーンったら……」
「あの、奥様……」
遠慮がちにスティーブに声をかけられ、はっとして振り向くと、困った顔の人たちがこちらを向いていた。
「あ………ご、ごめんなさい……」
美味しいと言われてすっかり舞い上がり、大勢の人たちに囲まれているのを忘れていた。
「み、皆さんも……たくさん食べてください」
赤くなって俯いて言う。
「は、はい……」
そう言われても皆、なかなか手を付けようとしない。
「これは何だ?」
一人であっと言う間にバーガーを食べきったルイスレーンがピンチョスを手に取る。
「あ、それはローストビーフと野菜を串に刺したものなんですが……」
ぱくりとひと口で頬張る。
「これは……ワインが欲しくなるな」
「スティーブ、そこにあるワインを取って」
慌ててワインを注ぎルイスレーンに渡す。
美味しそうに食べていくルイスレーンを見て、周りからごくりと唾を飲み込む音が聞こえる。
「お前たちも食べなさい。どうせ私一人では食べきれない量だ」
「それでは……」
ルイスレーンに言われ、アッシュハルクさんとギオーヴさんが顔を見合せ、バーガーを手に取る。
「では私はこれを」
スティーブがピタパンに手を伸ばす。
「ん…これは」
「美味しい」
「ほんとに……こっちは鶏肉ですか?」
ピタパンにはサラダチキンと野菜を入れて、焼いたチキンとゆで卵を挟んだものと二種類作った。
「では、我々も……」
恐る恐る皆が手を出していき、ひとくち食べて顔を見合せた後は、無言で食べ進める。
さすが体力勝負の兵士さんたちだけあって、肉を使った食べ物が一番人気だった。
女性には軽く摘まんで食べられるピンチョスが人気で、短時間の間に用意した料理はあっと言う間に無くなった。
ご馳走さまでしたと皆が引き上げ、私とルイスレーン、ギオーヴさんとスティーブ、それからカインだけになる。
ルイスレーンはカリカリに焼いたチーズを食べながら、ワインを片手にとてもリラックスしている。
「今日はありがとう」
地面に突いている私の手に手を重ねながら、ルイスレーンが耳元で囁く。
「こんなに楽しかったことはない」
「私こそ……色々なルイスレーンのことを知ることが出来て楽しかった。それに……ありがとうございます。矢射ち……あんなことをしてもらえるとは思いませんでした。随分……練習されたのですね……」
つうっと彼の指に出来たタコに触れる。
「ずっと書類仕事ばかりで少々なまっていたからな……ちょうど良い機会だった」
「私の……せいですよね。ずっと看病してくれていたから……」
「それは違う……君のせいとか誰のせいでもない。私が傍に居たかった。それだけだ。私が好きなことを自分の気が済むまでやっただけだ」
「でも……」
「私が、君のためにすることに気を遣ったり、気に病む必要はない。むしろいつも何をしたら喜ぶか君のために何ができるか、そればかり考えている。全ては君を思ってすることだ。当たり前のことと受け入れて欲しい。だが、もしそれが重荷だったり嫌なら正直に言ってくれ。態度を改めるから」
いつの間にか皆が私たちから距離を置いて離れていた。こうやって皆が気遣ってくれることに幸せを実感する。
それは全て目の前にいるこの人が与えてくれる。
「私……ちっとも嫌ではありません……愛する人にこんなに思ってもらえて……私のことを心配してくれる人がたくさんいて……とっても幸せです」
ワインを入れていた杯を傍らに置き、その手でルイスレーンが私の頬に触れる。
「なら、素直にその気持ちを皆に……私に表して、いつも笑っていてくれ」
44
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる