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ジーン様を見上げた時とは明らかに違う。警戒するような視線が私を見つめる。
「ジーン、こちらはどなた?」
頭の先から爪先まで胡散臭げに私を見てから、可愛らしく首を傾げる。
「紹介しよう。彼女はセレニア・ドリフォルト。私の婚約者だ。セレニア、彼女がティアナ・デイリー。私の母方の従姉妹だ。もうすぐサーフィス伯爵夫人になる」
「こんにちは、セレニアと申します」
「婚約者?ジーン……いつの間に……新年に首都で会った時は何もおっしゃっていなかったわ」
彼女は軽く会釈しただけで私の挨拶を無視して、ジーン様に拗ねて言った。
「そうだが、既に陛下からは許しをもらっている。一年後には挙式だ」
「え、陛下から……」
ジーン様と私の婚約が寝耳に水なのは当然だが、一瞬で彼女の顔が険しくなった。
「君の方が先に式を挙げることになるだろうがな」
「そ、そうね」
だが、すぐにそれは消えて再びジーン様に笑顔を向けた。
「そんな人が居たなんて、なぜ教えてくれなかったの。水くさいわ」
「討伐が無事に終わってほっとしたら、結婚したいと考えるようになった。その時彼女が傍にいて、気づいたら心を奪われていた。決めたのは首都から戻ってからだから、君が知らないのも当然だ」
「あら、ホントに最近なのね。そんなに急に決めて大丈夫なの」
ティアナさんは私が相手でジーン様が後悔しないかとでも言いたげに訊ねる。
「結婚したいと気づいてすぐにお相手が見つかるなんて、できすぎじゃない?」
「こればかりは時間を掛けたからいいとかではない。私にはセレニアが必要で、傍にいてとても安心できる人だ。彼女も同じだと思ったから結婚を決めた。そうだね」
必要で安心できる存在と言ってくれるのは嬉しい。互いに尊重しあい尊敬できる。
それに、この前のジーン様の言葉が本当なら、ちゃんと女性として見てくれている。
ジーン様の口から愛しているという言葉が聞けなくても、ここで満足しなければいけない。
ティアナさんはそんな私とジーン様を見比べて、ジーン様の腕に自分の手を乗せた。
「ねえ、そんなことより喉が渇いたわ。中に入ってお茶にしましょう」
ティアナさんは私がいないもののようにジーン様だけを連れて邸に入ろうとする。
「お茶なら、セレニアの所で栽培しているお茶をご馳走しよう。それに、セレニアが淹れてくれたものは他の誰が淹れるものより美味しいんだ。君も是非頂くといい。お願いできるか?」
私を無視するティアナさんと私の間に立ち、ジーン様は私に花を持たせようとそう声を掛けてくれた。
「ええ、すぐに支度を……」
「あら、じゃあ私はジーンと先に居間へ行っているからよろしくね。さあ、案内して、馬車に揺られてばかりで疲れたの。早くゆっくりしたいわ」
「ティアナ、慌てるな。セレニア、申し訳ない。よろしく頼む」
「はい………ジーン」
無理矢理私から引き離そうとするようにジーン様を引っ張るティアナさんが、私がジーンと言った瞬間、ジーン様から見えない角度で睨み付けてきた。
「もうジーンって呼んでいるのね」
「彼女は照れていたが私がそう呼んで欲しいとお願いした」
「そう……あなたが言ったの……」
彼女はそれ以上は言わなかったが、私が婚約間もないにも関わらず、既にジーン様を「ジーン」と呼んでいることが気に入らないと顔に書いてあった。
「早く行きましょう」
ジーン様を急かして彼女はジーン様と先に邸へと入っていった。
私はそんな二人の背中を見ながら、先ほどのティアナさんの視線の意味を考えた。
婚約者がいて結婚が目前だという彼女がここへ来た目的が何にせよ、私という存在が気分を害しているのは明らかだ。
私がいなければ彼女はどうするつもりだったのだろう。
陛下やジーン様の杞憂が思い過ごしであってくれればと思う。
かつてジーン様が結婚まで考えた相手は、私とはまるで違う種類の女性だった。
愛らしく女性的でそして欲望に積極的。
女性ならあんな風に甘えるべきなのだろうか。
私はまだ差し伸べられた手に手を伸ばすだけで精一杯で、自分から差し伸べることはできない。
遠乗りでジーン様と素敵な時間を過ごせたと浮かれていたのに、不意に心に吹いた冷たい風を感じながら、私はお茶の用意をするために厨房へ向かった。
「ジーン、こちらはどなた?」
頭の先から爪先まで胡散臭げに私を見てから、可愛らしく首を傾げる。
「紹介しよう。彼女はセレニア・ドリフォルト。私の婚約者だ。セレニア、彼女がティアナ・デイリー。私の母方の従姉妹だ。もうすぐサーフィス伯爵夫人になる」
「こんにちは、セレニアと申します」
「婚約者?ジーン……いつの間に……新年に首都で会った時は何もおっしゃっていなかったわ」
彼女は軽く会釈しただけで私の挨拶を無視して、ジーン様に拗ねて言った。
「そうだが、既に陛下からは許しをもらっている。一年後には挙式だ」
「え、陛下から……」
ジーン様と私の婚約が寝耳に水なのは当然だが、一瞬で彼女の顔が険しくなった。
「君の方が先に式を挙げることになるだろうがな」
「そ、そうね」
だが、すぐにそれは消えて再びジーン様に笑顔を向けた。
「そんな人が居たなんて、なぜ教えてくれなかったの。水くさいわ」
「討伐が無事に終わってほっとしたら、結婚したいと考えるようになった。その時彼女が傍にいて、気づいたら心を奪われていた。決めたのは首都から戻ってからだから、君が知らないのも当然だ」
「あら、ホントに最近なのね。そんなに急に決めて大丈夫なの」
ティアナさんは私が相手でジーン様が後悔しないかとでも言いたげに訊ねる。
「結婚したいと気づいてすぐにお相手が見つかるなんて、できすぎじゃない?」
「こればかりは時間を掛けたからいいとかではない。私にはセレニアが必要で、傍にいてとても安心できる人だ。彼女も同じだと思ったから結婚を決めた。そうだね」
必要で安心できる存在と言ってくれるのは嬉しい。互いに尊重しあい尊敬できる。
それに、この前のジーン様の言葉が本当なら、ちゃんと女性として見てくれている。
ジーン様の口から愛しているという言葉が聞けなくても、ここで満足しなければいけない。
ティアナさんはそんな私とジーン様を見比べて、ジーン様の腕に自分の手を乗せた。
「ねえ、そんなことより喉が渇いたわ。中に入ってお茶にしましょう」
ティアナさんは私がいないもののようにジーン様だけを連れて邸に入ろうとする。
「お茶なら、セレニアの所で栽培しているお茶をご馳走しよう。それに、セレニアが淹れてくれたものは他の誰が淹れるものより美味しいんだ。君も是非頂くといい。お願いできるか?」
私を無視するティアナさんと私の間に立ち、ジーン様は私に花を持たせようとそう声を掛けてくれた。
「ええ、すぐに支度を……」
「あら、じゃあ私はジーンと先に居間へ行っているからよろしくね。さあ、案内して、馬車に揺られてばかりで疲れたの。早くゆっくりしたいわ」
「ティアナ、慌てるな。セレニア、申し訳ない。よろしく頼む」
「はい………ジーン」
無理矢理私から引き離そうとするようにジーン様を引っ張るティアナさんが、私がジーンと言った瞬間、ジーン様から見えない角度で睨み付けてきた。
「もうジーンって呼んでいるのね」
「彼女は照れていたが私がそう呼んで欲しいとお願いした」
「そう……あなたが言ったの……」
彼女はそれ以上は言わなかったが、私が婚約間もないにも関わらず、既にジーン様を「ジーン」と呼んでいることが気に入らないと顔に書いてあった。
「早く行きましょう」
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私はそんな二人の背中を見ながら、先ほどのティアナさんの視線の意味を考えた。
婚約者がいて結婚が目前だという彼女がここへ来た目的が何にせよ、私という存在が気分を害しているのは明らかだ。
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私はまだ差し伸べられた手に手を伸ばすだけで精一杯で、自分から差し伸べることはできない。
遠乗りでジーン様と素敵な時間を過ごせたと浮かれていたのに、不意に心に吹いた冷たい風を感じながら、私はお茶の用意をするために厨房へ向かった。
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