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誰かが小声で話す声と、パタンと扉が閉まるような音が聞こえて目が覚めた。
「おはよう」
頭を動かすと、すぐ傍で声がして頭を上げると目の前にジーン様の顔があった。
「……!」
上半身裸のジーン様が肩肘を突いて琥珀色の瞳で見つめ返している。
眠気が一気に吹き飛ぶ。夕べ何があったのか思い出して自分の体を見ると、既に薄い夜着を着ている。
「私……いつの間に……もしかしてジーンが?」
見渡すとそこはジーン様の部屋ではなく、私に与えられた部屋だった。
「私の部屋の寝台は…少しリネンが汚れたからね。後でこちらへ移動してきた」
「よ……」
なぜ汚れたのかわかって、顔が赤くなった。
そんな私の頬に優しくジーン様の手が触れる。
「夕べ何を話して、何があったか覚えている?」
その問いに伏し目がちに頷くと、頭頂部にジーン様の唇が寄せられ、軽く抱き締められた。
「君に謝らないといけないことがある」
深刻な声音でそう言われ、体に緊張が走った。
「そう堅くならないで。夕べは素晴らしかった」
私が緊張したのを、悪い方に取ったと察したジーン様が優しく背中を撫でた。
「気づいていたかもしれないが、昨日は君に嫉妬して欲しくて、わざとティアナと仲がいいところを見せつけたんだ」
その告白を聞いて反射的に顔を上げる。私の顔を見て、私が初めて気づいたことをジーンは察したようだ。
「わざと?」
「気づいていなかったのか」
「その……仲がいいんだなとは……それに……やっぱりジーンは……ティアナさんのことが……好きなのだとは思いました」
「気にはしてくれていたと、思っていいのか?」
「すいません」
何とも残念そうなため息で呟かれて、なぜか罪悪感に苛まれた。
「謝らなくていい……女性としての自分の魅力について君がどれほど否定的なのか、推し量っていたつもりだったが、私が思っていた以上だっただけだ」
「魅力なんて……」
「あるよ」
そんなものはないと言いかけた唇に、ジーン様が指を当てて止める。
「少なくとも、私には見えている。他の男どもに見えていなかっただけだ。見えすぎても困るが……そういう私も気づいたのは最近だがね。近すぎて見えなかった。五年間討伐で離れていた時間は無駄ではなかった」
言って唇に当てていた指の代わりに唇が重なる。
「他の男の物になっていなくて良かった。もう少しで大事なものを失うところだったよ」
ジーン様の言葉は、まるで私に恋い焦がれているように聞こえる。
「ティアナに私がかつて求婚した事実は変わらないし、その事実を消すことも出来ないし隠すつもりもない。でもそれは過去のことで、彼女に対しては従姉妹である肉親の情しかない。ティアナもティアナで、彼女が何を言ってもやってもサーフィス卿が怒りも咎めもしなくて、彼女はそれが不満だったらしい。その話を到着した日に彼女から聞いた。それから、君と私の間に流れる微妙な空気のことも指摘されたよ。第三者から見ると、何をやっているんだと言いたくなるらしい」
「微妙な空気?」
「互いに気になっているのに、よそよそしい。もじもじとしてじれったいってね」
ティアナさんからそんな風に見られていたのかと知って、他の人にも少なからず同じように見えていたのかも知れないと思ったら、恥ずかしくなった。
「それでティアナが、サーフィス卿が来るまでここに滞在することを認めてもらう代わりに、ひと芝居打とうと言ってきた。初めはそんなことは不要だと断ったが、晩餐で君が私とティアナの話を黙って聞いていたことや、軟膏を渡した時の様子を見て、もしかしたらと……試すようなことをしてすまなかった」
謝るジーン様に私は首を振った。
「それだけでなく、ヴェイラートたちを誘き出すためとは言え、君に嫌な言葉を聞かせてしまった」
「その件は…昨日も説明していただきましたし、色々影で言われることには慣れています」
女らしくないとか、大木のようだとか揶揄されたことはある。傷つかないわけではないが、全てを気にしていては何もできない。
「慣れる必要はないが、私との婚約で余計に注目を集めたことは確かだから、私にも責任の一端はある」
「そんなこと……こうしてジーンの腕の中に居られることの幸せに比べれば些細なことです」
自分を責めようとするジーン様を励ますつもりで言ったが、それを聞いて彼の表情が強張った。
「ジーン……?」
よく見れば口元が震えている。
「………まいった……君からそんな風に言ってもらえるとは思っていなかった」
そんなことでと思ってしまうが、本当に私が言ったことで嬉しそうなジーン様を見て、私も嬉しくなった。
「あの、さっき扉が閉まった音が……」
「ああ、メーガンとリラが来たから呼ぶまで来るなと言って、先に私の部屋を掃除するように伝えた」
「え!」
ジーン様に抱かれて眠っていたのを見られたと知って慌てた。
「おはよう」
頭を動かすと、すぐ傍で声がして頭を上げると目の前にジーン様の顔があった。
「……!」
上半身裸のジーン様が肩肘を突いて琥珀色の瞳で見つめ返している。
眠気が一気に吹き飛ぶ。夕べ何があったのか思い出して自分の体を見ると、既に薄い夜着を着ている。
「私……いつの間に……もしかしてジーンが?」
見渡すとそこはジーン様の部屋ではなく、私に与えられた部屋だった。
「私の部屋の寝台は…少しリネンが汚れたからね。後でこちらへ移動してきた」
「よ……」
なぜ汚れたのかわかって、顔が赤くなった。
そんな私の頬に優しくジーン様の手が触れる。
「夕べ何を話して、何があったか覚えている?」
その問いに伏し目がちに頷くと、頭頂部にジーン様の唇が寄せられ、軽く抱き締められた。
「君に謝らないといけないことがある」
深刻な声音でそう言われ、体に緊張が走った。
「そう堅くならないで。夕べは素晴らしかった」
私が緊張したのを、悪い方に取ったと察したジーン様が優しく背中を撫でた。
「気づいていたかもしれないが、昨日は君に嫉妬して欲しくて、わざとティアナと仲がいいところを見せつけたんだ」
その告白を聞いて反射的に顔を上げる。私の顔を見て、私が初めて気づいたことをジーンは察したようだ。
「わざと?」
「気づいていなかったのか」
「その……仲がいいんだなとは……それに……やっぱりジーンは……ティアナさんのことが……好きなのだとは思いました」
「気にはしてくれていたと、思っていいのか?」
「すいません」
何とも残念そうなため息で呟かれて、なぜか罪悪感に苛まれた。
「謝らなくていい……女性としての自分の魅力について君がどれほど否定的なのか、推し量っていたつもりだったが、私が思っていた以上だっただけだ」
「魅力なんて……」
「あるよ」
そんなものはないと言いかけた唇に、ジーン様が指を当てて止める。
「少なくとも、私には見えている。他の男どもに見えていなかっただけだ。見えすぎても困るが……そういう私も気づいたのは最近だがね。近すぎて見えなかった。五年間討伐で離れていた時間は無駄ではなかった」
言って唇に当てていた指の代わりに唇が重なる。
「他の男の物になっていなくて良かった。もう少しで大事なものを失うところだったよ」
ジーン様の言葉は、まるで私に恋い焦がれているように聞こえる。
「ティアナに私がかつて求婚した事実は変わらないし、その事実を消すことも出来ないし隠すつもりもない。でもそれは過去のことで、彼女に対しては従姉妹である肉親の情しかない。ティアナもティアナで、彼女が何を言ってもやってもサーフィス卿が怒りも咎めもしなくて、彼女はそれが不満だったらしい。その話を到着した日に彼女から聞いた。それから、君と私の間に流れる微妙な空気のことも指摘されたよ。第三者から見ると、何をやっているんだと言いたくなるらしい」
「微妙な空気?」
「互いに気になっているのに、よそよそしい。もじもじとしてじれったいってね」
ティアナさんからそんな風に見られていたのかと知って、他の人にも少なからず同じように見えていたのかも知れないと思ったら、恥ずかしくなった。
「それでティアナが、サーフィス卿が来るまでここに滞在することを認めてもらう代わりに、ひと芝居打とうと言ってきた。初めはそんなことは不要だと断ったが、晩餐で君が私とティアナの話を黙って聞いていたことや、軟膏を渡した時の様子を見て、もしかしたらと……試すようなことをしてすまなかった」
謝るジーン様に私は首を振った。
「それだけでなく、ヴェイラートたちを誘き出すためとは言え、君に嫌な言葉を聞かせてしまった」
「その件は…昨日も説明していただきましたし、色々影で言われることには慣れています」
女らしくないとか、大木のようだとか揶揄されたことはある。傷つかないわけではないが、全てを気にしていては何もできない。
「慣れる必要はないが、私との婚約で余計に注目を集めたことは確かだから、私にも責任の一端はある」
「そんなこと……こうしてジーンの腕の中に居られることの幸せに比べれば些細なことです」
自分を責めようとするジーン様を励ますつもりで言ったが、それを聞いて彼の表情が強張った。
「ジーン……?」
よく見れば口元が震えている。
「………まいった……君からそんな風に言ってもらえるとは思っていなかった」
そんなことでと思ってしまうが、本当に私が言ったことで嬉しそうなジーン様を見て、私も嬉しくなった。
「あの、さっき扉が閉まった音が……」
「ああ、メーガンとリラが来たから呼ぶまで来るなと言って、先に私の部屋を掃除するように伝えた」
「え!」
ジーン様に抱かれて眠っていたのを見られたと知って慌てた。
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