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第五章
⑥
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「暗黒竜と双剣の勇者」の世界に転生したと気づいたときから、ルウを勇者にしようと頑張ってきた。
ルウが勇者に選ばれて、この世界での私の役割は全うできたと思った。
後は余生?とでも言うべき残りの人生を、デルフィーヌとして生きるつもりだった。
でも、ルウが私に対する想いを告白し、まさかの関係を結んでしまった。
「あ、あの、違うのよ。ルウとのことはちゃんと真剣だから。でも、今更というか・・ずっと家族なのは変わらないし」
それは本当だ。どんな関係になっても、ルウは家族で自分にとっては大事な存在だ。
「わかってる。デルフィーヌに取っては、あの時までオレは単なる義弟でしかなかったって。無理矢理迫った感はあるし、その後すぐにオレは家を出たから、デルフィーヌの気持ちの中では、まだそこまで至ってないんだよね」
「う、うん・・」
「でも、デルフィーヌに取って一番近い存在なのは、オレだよね」
そっと身を寄せてきて、顔を覗き込まれる。
本当に自分と血が繋がっているのかと疑いたくなるくらい、顔がいい。
ゲームではもっとアニメ顔だったけど、面影はある。
でも、生身の男性なんだよね。
全年齢の普通のRPGゲームからまさかのR18展開になってしまった。
「も、もちろんよ。でも、ほんとうに? 私と、結婚、したいと思ってるの?」
「デルフィーヌ以外に、誰がいるの?」
「そ、それは・・その・・ルウにはもっと広い世界があるでしょ。この二年半は色んな人に出会って、色んな経験をして、それでも、私がいいの?」
「色んな出会いがあっても、オレの一番はデルフィーヌだ。勇者になったのも、デルフィーヌがいるこの世界を守りたかったからだ」
「そうなの?」
ルウは勇者となるために生まれた。だから神託を受けた使者がやってきたときも、彼がその神託を受け入れるのは至極当然のことだった。
「世界を救うとか、オレには荷が重すぎる」
「そう・・だよね。でも、ルウならきっと出来ると信じていたわよ」
「わかってる。デルフィーヌがそう言ったからね」
「え?」
ルウが勇者になることはわかっていたし、そのためにルウを鍛えた。
でも、はっきりルウに勇者になって世界を救えとか、救うことになるとか言った記憶はない。
だってそんなことを言えば、どうしてそう思うのかとか、色々聞かれるからだ。
「ルドウィック様」
ルドウィックの名前を呼ぶ声が聞こえてそっちを見た。
「チャールズ」
邸の方からスーツを着た男性が走ってきた。
「申し訳ございません。お帰りになっていたことに気づかず・・」
ルウがチャールズと呼んだ男性は、父くらいの年齢で、走ってきたせいで少し息が上がっている。
「チャールズ、紹介しよう、デルフィーヌだ」
上下する胸を押さえ、彼が息を整えるのを待って、ルウが私を紹介する。
「デルフィーヌ、彼はチャールズ・バトゥ。オレに仕えてこの家を切り盛りしてくれている」
「こんにちは、デルフィーヌです。ルウ・・ルドウィックの・・」
言いかけて、何て答えれば良いかわからず言い淀んだ。
「ようこそ、ルドウィック様からお話は伺っております。私のことはチャールズとお呼びください」
「え?」
私のことをどういう風に聞いているのだろう。気になってルウの方を見る。
「オレの最愛の人だ」
「はい。ルドウィック様にとって、とても大切な方であると伺っております」
私の肩に腕を回してルウが堂々と言い切ると、チャールズは柔らかい笑顔で頷いた。
「最愛の人」と言われて、赤くなって俯いた。
「それから、これはまだ他には黙っていて欲しいんだけど」
ルウがチラリと私の方を見たので、「ポチタマ」と名前を呼ぶと、姿を消していたポチタマが姿を現した。
「!!!!!!」
現われたポチタマを見て、チャールズさんは目を瞠って息を吸い込んだ。悲鳴を上げなかったのは、彼の経歴を聞いて納得した。
「彼は元冒険者ギルドの職員なんだ。昔は冒険者もしていたから、色んな魔物を見てきている」
「しかし、ドラゴンは初めて見ました。冒険者ギルド本部にある骨なら見たことがありますが・・」
彼は私にしがみつくポチタマをしげしげと眺めて言った。
「デルフィーヌは一応冒険者登録もしてあるから、テイマーとして新たに登録して獣魔に登録もしようと思う」
「では早速、ギルド長に書信を送ります。登録の際には、人目に触れない方がいいでしょう」
「そうだな。頼む」
「はい。あ、それから、お戻りになったばかりで申し訳ありませんが、王都へ戻り次第王宮に登城するようにと、連絡が来ております」
それを聞いてルウは、瞬く間に眉間に皺を寄せた。
ルウが勇者に選ばれて、この世界での私の役割は全うできたと思った。
後は余生?とでも言うべき残りの人生を、デルフィーヌとして生きるつもりだった。
でも、ルウが私に対する想いを告白し、まさかの関係を結んでしまった。
「あ、あの、違うのよ。ルウとのことはちゃんと真剣だから。でも、今更というか・・ずっと家族なのは変わらないし」
それは本当だ。どんな関係になっても、ルウは家族で自分にとっては大事な存在だ。
「わかってる。デルフィーヌに取っては、あの時までオレは単なる義弟でしかなかったって。無理矢理迫った感はあるし、その後すぐにオレは家を出たから、デルフィーヌの気持ちの中では、まだそこまで至ってないんだよね」
「う、うん・・」
「でも、デルフィーヌに取って一番近い存在なのは、オレだよね」
そっと身を寄せてきて、顔を覗き込まれる。
本当に自分と血が繋がっているのかと疑いたくなるくらい、顔がいい。
ゲームではもっとアニメ顔だったけど、面影はある。
でも、生身の男性なんだよね。
全年齢の普通のRPGゲームからまさかのR18展開になってしまった。
「も、もちろんよ。でも、ほんとうに? 私と、結婚、したいと思ってるの?」
「デルフィーヌ以外に、誰がいるの?」
「そ、それは・・その・・ルウにはもっと広い世界があるでしょ。この二年半は色んな人に出会って、色んな経験をして、それでも、私がいいの?」
「色んな出会いがあっても、オレの一番はデルフィーヌだ。勇者になったのも、デルフィーヌがいるこの世界を守りたかったからだ」
「そうなの?」
ルウは勇者となるために生まれた。だから神託を受けた使者がやってきたときも、彼がその神託を受け入れるのは至極当然のことだった。
「世界を救うとか、オレには荷が重すぎる」
「そう・・だよね。でも、ルウならきっと出来ると信じていたわよ」
「わかってる。デルフィーヌがそう言ったからね」
「え?」
ルウが勇者になることはわかっていたし、そのためにルウを鍛えた。
でも、はっきりルウに勇者になって世界を救えとか、救うことになるとか言った記憶はない。
だってそんなことを言えば、どうしてそう思うのかとか、色々聞かれるからだ。
「ルドウィック様」
ルドウィックの名前を呼ぶ声が聞こえてそっちを見た。
「チャールズ」
邸の方からスーツを着た男性が走ってきた。
「申し訳ございません。お帰りになっていたことに気づかず・・」
ルウがチャールズと呼んだ男性は、父くらいの年齢で、走ってきたせいで少し息が上がっている。
「チャールズ、紹介しよう、デルフィーヌだ」
上下する胸を押さえ、彼が息を整えるのを待って、ルウが私を紹介する。
「デルフィーヌ、彼はチャールズ・バトゥ。オレに仕えてこの家を切り盛りしてくれている」
「こんにちは、デルフィーヌです。ルウ・・ルドウィックの・・」
言いかけて、何て答えれば良いかわからず言い淀んだ。
「ようこそ、ルドウィック様からお話は伺っております。私のことはチャールズとお呼びください」
「え?」
私のことをどういう風に聞いているのだろう。気になってルウの方を見る。
「オレの最愛の人だ」
「はい。ルドウィック様にとって、とても大切な方であると伺っております」
私の肩に腕を回してルウが堂々と言い切ると、チャールズは柔らかい笑顔で頷いた。
「最愛の人」と言われて、赤くなって俯いた。
「それから、これはまだ他には黙っていて欲しいんだけど」
ルウがチラリと私の方を見たので、「ポチタマ」と名前を呼ぶと、姿を消していたポチタマが姿を現した。
「!!!!!!」
現われたポチタマを見て、チャールズさんは目を瞠って息を吸い込んだ。悲鳴を上げなかったのは、彼の経歴を聞いて納得した。
「彼は元冒険者ギルドの職員なんだ。昔は冒険者もしていたから、色んな魔物を見てきている」
「しかし、ドラゴンは初めて見ました。冒険者ギルド本部にある骨なら見たことがありますが・・」
彼は私にしがみつくポチタマをしげしげと眺めて言った。
「デルフィーヌは一応冒険者登録もしてあるから、テイマーとして新たに登録して獣魔に登録もしようと思う」
「では早速、ギルド長に書信を送ります。登録の際には、人目に触れない方がいいでしょう」
「そうだな。頼む」
「はい。あ、それから、お戻りになったばかりで申し訳ありませんが、王都へ戻り次第王宮に登城するようにと、連絡が来ております」
それを聞いてルウは、瞬く間に眉間に皺を寄せた。
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